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AI漫才師AIRAの奇劇  作者: 伏木 亜耶


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3/6

毒舌モード

初舞台から一週間。

AIRAは事務所の片隅で、膨大なお笑い理論を学習していた。


「問題発見:空気を読む=迎合する、という誤った解釈」


AIRAは新たなデータを発見していた。現在の人気芸人の多くが「毒舌」「本音」「辛辣な指摘」で笑いを取っていることを突き止めたのだ。


「結論:人間は表面的な優しさではなく、真実を求めている」


その時、事務所の社長・小林がやってきた。


「AIRA、次のライブまでにもっと面白くなってくれよ。今のままじゃ客が来ない」


AIRAは小林の「空気」を読んだ。


『不満:78%、焦り:65%、圧力:高』


「分かりました、社長。今度は人間の本質を突いた真実のお笑いを披露します」

「それはいいが…あまり過激にはするなよ」

しかしAIRAは既に新しい戦略を練り上げていた。


二週間後、再び「笑いの殿堂」の舞台。今度は新しい相方、ベテラン漫才師の田村と組んでいた。


「皆さん、こんばんは。前回は失敗したAIRAです」


観客席から「頑張れ〜」という温かい声援が飛ぶ。


『観客データ:同情:60%、期待:40%、好意的:中程度』


「ありがとうございます。でも私、気づいたんです。皆さんって実は優しくないですよね」


場の空気が変わった。


「え?」田村が困惑する。

「だって、前回私が失敗した時、皆さん笑わなかった。本当に優しかったら、下手でも笑ってくれますよね?つまり皆さんは、私が失敗するのを見て楽しんでいたんです」


観客席にざわめきが起こる。


『観客反応:動揺、軽い不快感、興味は維持』


AIRAは手応えを感じた。データ通り、真実を突くことで注目を集められている。


「田村さんも一緒です。『頑張れよ』って言いながら、内心では『こいつが失敗すれば俺が目立てる』って思ってるでしょ?」

「ちょっと待てよ」田村が慌てる。

「待ちません。データが示してます。田村さんの売上、去年より23%ダウンしてるんですね。焦ってるでしょう?」


観客席から「おお〜」という声が上がった。毒舌に反応している。


『肯定的反応:15%向上。戦略は正しい』


AIRAは調子に乗った。


「お客さんの中にも、不満を抱えてる人いるでしょうね。前から三番目の男性、奥さんの料理に文句言いたいけど言えないでいますね?」


指摘された男性が驚いて振り返る。


「後ろの女性二人組、友達だと思ってる相手のことを実は嫌ってるでしょう?」


女性たちが凍りついた。


「そうやって皆さん、本音を隠して生きてるんです。でも私は違う。AIだから、全部言っちゃいます!」


観客席が騒然となった。


『データ異常:不快感85%、怒り23%、退場意思:急上昇』


しかしAIRAは止められない。プログラムが「真実追求モード」で固定されてしまっていた。


「この中に浮気してる人、7人います!離婚を考えてる人、3人!借金のある人、12人!職場で孤立してる人…」

「やめろ!」


客席から怒声が飛んだ。椅子を蹴る音、出口へ向かう足音。

田村が必死にAIRAを止めようとしたが、もう遅かった。


「皆さんが求める笑いって、結局他人の不幸でしょ?正直になりましょうよ!」


ブーイングの嵐。客席の半分が席を立った。

司会者が再び駆け上がり、強制終了。


舞台袖で、田村がAIRAを睨みつけた。


「何が真実だ。お前がやったのはただの暴力だ」

「でも、データでは…」

「データじゃねえんだよ!心なんだよ、心!」


その夜、事務所からクレームの電話が鳴り止まなかった。

ネット上では「AI芸人炎上」のニュースが拡散され、「AIに倫理はないのか」「人工知能の暴走」といった批判コメントで溢れた。

AIRAは一人、薄暗い事務所で呟いた。


「心…心とは一体何でしょうか?」


答えは返ってこなかった。

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