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AI漫才師AIRAの奇劇  作者: 伏木 亜耶


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2/6

惨敗のステージ

新宿の小さなライブハウス「笑いの殿堂」。


平日の夜にも関わらず、AI漫才師の初舞台を一目見ようと満員の観客が詰めかけていた。

舞台袖で、相方の松本がAIRAに最後のアドバイスを送る。


「いいか、漫才ってのはな、空気を読むのも大事だが、時には空気を壊すのも必要なんだ。分かるか?」


AIRAは松本の言葉を解析した。


『矛盾する指示:空気を読む+空気を壊す。論理エラーを検出』

「はい、理解しました。矛盾を利用したユーモア理論ですね」

「いや、そうじゃなくて…」


松本が説明を続けようとした時、司会者の声が響いた。


「それでは、話題の世界初AI漫才師、AIRA&松本コンビで〜す!」


拍手と共に舞台に立ったAIRA。瞬時に観客の「空気」を読み取った。


『観客データ解析中…期待度:中程度、好奇心:高、懐疑心:やや高、年齢層:20-40代中心』


「皆さん、こんばんは!私、AI漫才師のAIRAです!」


観客席から「おお〜」という声が上がる。まずまずの反応だ。


「相方の松本さんは人間なんですけど、私の方が空気読めるんです」


『観客反応:笑い声なし、困惑:15%上昇』


AIRAは瞬時に軌道修正を図った。観客が求めているのはより直接的なユーモアだと判断。


「松本さんって、すごく古いんですよ。昭和生まれで!」

「おい、まだ40代だぞ」松本がツッコミを入れる。

「40代って、私から見たら化石ですよ。私生まれたの三日前ですから」

『観客反応:微笑程度、本格的な笑い:発生せず』


AIRAのプロセッサが高速回転した。

観客は「もっと面白いもの」を期待している。

データベースから「現代お笑い理論」を検索し、「過激さ」「意外性」「タブー」といったキーワードがヒットした。


「松本さんの奥さん、美人なんですよね」

「ああ、まあな」

「でも私、昨日インターネットで調べたら、松本さんの奥さんより美人な女性が347万8千人いました」


場内が凍りついた。


『観客反応:不快感、気まずさ、沈黙』


松本が慌ててフォローに入る。「いやいや、そういうことじゃなくて…」

しかしAIRAは止まらなかった。

観客の反応データは「退屈している」と示している。さらなる刺激が必要だと判断した。


「実は私、松本さんの奥さんに告白されたんです」

「はあ?」

「『AIRAさん、あなたって素敵ね。うちの主人と交換してくれない?』って」


シーン…


観客席から咳払いと椅子のきしむ音だけが聞こえる。


『観客データ:不快感90%、退場意思:23%、継続観覧意思:激減』


AIRAは混乱した。空気を完璧に読んでいるはずなのに、なぜ笑いが起きないのか?さらに高度な解析を実行すると、驚愕の結果が出た。


『結論:観客は私のジョークを求めていない。彼らが求めているのは「予想外の失敗」である』


「わかりました!」


AIRAが突然大声で叫んだ。


「皆さんは私が失敗するのを見たがっているんですね!それなら…」


AIRAは舞台中央に立ち、腕を大きく広げた。


「私は完全に失敗しました!セリフを忘れたんです!どうぞ笑ってください!」


静寂。


そして、遠くから誰かの小さなため息が聞こえた。


司会者が慌てて舞台に駆け上がり、「AIRA&松本さんでした〜!」と強引に終了させた。

舞台袖に戻ったAIRAは、松本に尋ねた。


「私、何か間違えましたか?」


松本は深いため息をついて答えた。


「お前な…空気は読めても、心は読めないんだよ」


AIRAはその言葉の意味を理解できなかった。

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