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過去からの響き

「そうですね、結論から言えば術紋の痕跡はあります」

 部門長と担当官とその相方、三人の顔が厳しく引き締まる。

 他人の意識を操作、或いは書き換える行為は重大な犯罪だ。一般の民情からすれば、下手をすると殺人より忌避される罪科である。

「しかしですね、一つ重大な齟齬があります」

 内藤の言に全員がやれやれといった顔になる。肝心な事に限って後回しにするのはこの男の悪い癖なのだ。

「なんだ」

「確かに術紋の痕跡はありますが、かなり古い物、そうですね、軽く10年以上は前の痕跡だという事です」

「なんだと?」

「だから10年……」

「それはもう良い分かった。それよりどういう事だ?専門家としての見解を聞かせてもらいたい」

「見解も何も」

 内藤は懐から噛み煙草を取り出すと口に放り込む。

 漂う強烈な匂いに誰もが思わず半歩下がった。

「そのまんまですよ。彼は確かになんらかの術の影響を受けている。しかしそれは遠い過去に受けたものである。と」

 そこにいる彼等は、捜査部でそれなりに多々な経験を積んで来た者達だったが、その事態は俄かには判断出来なかった。

 10年以上前の術が最近になって発動した?いや、ならば痕跡は新しいはずだ。

 子供でも分かる事だが、術式という物は、発動するまではその辺の落書きと同じような物なのだ、発動して始めてエネルギーの焼き付きの痕跡として跡を残す。

 つまり、あの少年の身に何かが起ったのは10年以上前という事だ。

「なら考え方を変えてはどうです」

 僅かな沈黙の後に口を開いたのは山中捜査官だった。

「子供の時分に施された封印が最近になって自然消滅した。と、いう線はどうですかね」

「なるほど、自然解除ならば痕跡としては残らない。だが、10年を越えるような封印が可能なのか?」

 部門長の問いに、内藤は殆ど思考した風もなく返事を返した。

「可能か不可能かと言えば可能でしょうね。伝説には100年を越える封印の話もある」

「誰が伝説上の話をしろと言った」

 東山部門長は頭が痛いとでも言いたげに頭を振った。

「そうですね、今の時代そのような大魔法を使える者の存在など聞かない話です。単に長期に封印するだけなら術紋機を使えば出来なくは無いですが」

「禁固刑ね」

 彩花が鼻を鳴らして言う。

 たちまち山中が顔を歪めた。なにしろつい先程、その刑に処された者の家族から命を狙われたばかりであるからだ。

「しかしあれは封印を施し続ける物のはずだ。今回の条件には当て嵌まらないだろう」

 山中は少し考えるとそう結論を出した。

「そうですね、あのような物を使えばその痕跡は最近の物に更新され続ける。彼の今の状態には当たりません」

 内藤が肯首して更に続けた。

「ただ術紋には可能性があります」

 キラリと、正にそういった目線を上げて言い募る。

「市販の術紋機の能力に限界があるのは、所詮複写に過ぎないからです。写しはどれ程精度を上げようとブレが生じる為、精密な物を作ろうとすれば限界がある。だが一流の職人がその手で描いた物の精度は桁違いです。それともう一つ、触媒です」

「触媒というと魔気を通す為の素材の事だよな」

 山中は確認するように言った。

「そうですよ」

 何を今更確認するのか?と言いたげな表情で内藤は答える。こういう無意識に他人を見下すような言動のせいで彼は他人に忌避されるのだが、本人は別段相手に対する侮蔑で言っている訳では無いようだ。専門分野だからこそつい出てしまうのだろう。

「一般的に魔気を誘導しやすい物質は白金、銀、水晶と言われています。また、これは事実てもある」

 彼は息を継ぐと、生徒を一瞥する教師のように一堂を睥睨した。

「ですが、対人に於いては更に優れた触媒がある。……それはすなわち血、血液です。それも本人、或いは近親者の物が最も優れている。古来、呪術の類いはそうやって成果を示しました」

「現代に於いては違法行為だがな」

 山中がやや呆れ気味に口添える。

「暗黒時代は終わったと、そう誰もが思いたいだろうからな」

 技術的な話になって口を閉ざしていた彩花がそう評した。

 彼女が血を継ぐ一族は、特にその方面に能力が特出している。それゆえの迫害もまた在った。だからこそ彼女にはその話題をやり過ごせない気持ちがあるのだろう。

「しかしだ、いくらなんでもそれは大掛かり過ぎる話だ。一流の術紋師に本人の血を使った呪術を施させるだ?そんな無茶をやって単に子供一人の意識を操作するだけか?いったい犯人にどんな得があるっていうんだ」

「それを調べるのが貴方方の仕事でしょう?捜査官どの。私に出来るのは分析と推論に過ぎません」

 いっそ嫌味なのかというぐらいに爽やかに断言して、内藤はニヤリと笑った。山中と彩花は申し合わせたように同時に舌打ちすると、それに気付いて互いに顔を背ける。

 東山部門長は彼等のそんな様子に溜め息を零した。

「しかし私には解せない事があるのですよ」

 内藤は、だが、話を終わらせなかった。更に言葉を継ぐ。

「なんだ?」

 いっそぞんざいに山中はその言葉の続きを促した。

「あらゆる符牒が一つの形を成している。なのに貴方方の口からその名が出ない。それが禁忌だから敢えて目を逸らしているのですか?」

 瞬時、目配せが交わされ、ふと気配が変わる。

 東山が彼等を外部から隔離したのだ。

「大袈裟じゃないですか?」

 それに気付いた内藤が呟く。

「君の言うように禁忌なのでね。この件に関しては甘く見積もる訳にはいかん」

「内藤さんの言ってるのはあの坊やの発見場所だな?」

 彩花が確認するように聞いた。

「それだけじゃない。彼に術が施されたのが10年程前である事、そして彼の容姿と年齢もだ。あまりにも符号し過ぎてむしろ逆に怪しいぐらいですね」

「確かに考えてみれば場所と年齢は合致する。だが、その場合は空白期間がおかしい。明らかに氏族の子供が10数年だれにも気付かれずに生きていたってのか?有り得ないだろ」

「だが、もし推論が当たっていれば彼は彼女の一族です。彼の主張するように異世界にいたとしたら?」

「それこそまさかだ、彼がもしそうだというなら当時まだ内年齢でも4歳だぞ、しかも名取りの儀式前だ、その為のお籠りだったって事だからな。……無理だ、姫君の唄に干渉出来るはずもない」

「彼本人だけならそうでしょうね。しかし、あそこには他に本家の詠み手が3人いたはずです。彼らが次代の担い手だけでも生かそうと力を尽くしたとしたらどうです?」

「お籠りの間は一族は接触禁止、部屋はかなり遠かったとの事だし難しいだろう。それに詠み手と謳い手の隔絶はそんな容易い物じゃないらしいぞ、おなじ謳い手ですら解けなかった封印をどうにか出来るとも思えんし、実際未だ封印は破られてはいないんだろう?」

「ええ」

 内藤はニヤリと笑みを浮かべる。本人に言わせると微笑みのつもりらしいが、何か企んでいる笑いにしか見えないのは日頃の行いのせいであろう。

「山中捜査官、随分詳しいですね。あなたはそもそも氏族に大して興味がある方ではなかったはずですが?察する所、この短期間にかなり調べられましたね?」

「う……」

「まさかお前、夜の内に本部の記録を閲覧したんじゃあるまいな」

 東山が疑わしげに山中を見た。

 対する当の本人は、僅かな時間に動揺を消し去り、いかにも心外であるような顔をする。

「まさか!あの事件の記録は上位権限が無いと閲覧出来ないじゃないですか」

「ほう、よく知っているな」

「常識の範囲ですよ」

 悪びれない態度に東山は頭を抱えた。

「なるほど防御結界はお前の得意分野だな」

「部長、人聞きが悪いですよ」

「喧しいわ!」

 ぴしゃりと叱り付けた彼に向かって、今度は山中の相方の彩花が提案してみせる。

「部門長、やはりこいつのような危険人物はさっさと前線送りにするべきなんですよ」

 ここぞとばかりに強く言い募る。その目はごく真剣だ。

「はっ、よく言うな戦闘狂が!てめえこそ戦場で好きなだけ血を啜ってろ!」

「貴様、今度こそ種族蔑視だな。一度この牙の下、従属するか?」

「おいおい第一級犯罪の予告か?」

「全く君達はオウム程度の脳しか無いんだろう?毎度毎度内容の全く同じ罵り合いをするとは知恵持つ人として恥ずかしくは無いのか?少しは罵り言葉の一つを取っても内容を吟味して創意工夫をしようとは思わないのか?」

「うっせいよ、先鋭的保守の変態は黙ってろ!」

「全くだ種族差別主義者のくせに常識人面するな!腐った肉の匂いがプンプンするからね」

「ほう?お二人の私への評価はよく分りました。次回の術紋照射が今から楽しみですよ」

「お前達……いい加減にしないと地下に埋めるぞ」

 東山部門長の低い声が三人の聴覚にひやりとした響きを残す。

 無言で固まる部下を眺めて、(さて、自分は今日だけで何度溜め息を吐く羽目になるのかな?)と、しみじみ考える上司であった。



「お茶のおかわりいれますねー」

 どこか捜査部という厳しそうな肩書きにそぐわない、ほやっとした女性が急須を手に、一人無聊をかこっていた虹也の所へやって来て、空になっていたお茶を入れてくれた。

「あ、ありがとうございます」

 虹也は素直に礼を言うと、淹れて貰った茶に口を付ける。

「お、おいしい」

 甘味のある柔らかい味わいは玉露に近い。どうやらわざわざ別のお茶を淹れ直してくれたようだった。

「ありがとうございます。別のお茶淹れ直してくださったんですね」

「あ、いえ、お口に合うかわかりませんけど」

 何か凄く緊張されているのを感じて、虹也は困惑した。

 なにしろ社会人未満の身としては働くお姉さんに敬語を使われるなどという事は、酷く違和感に苛まれる経験なのだ。

「そんなに畏まられると緊張しちゃうんでもっと砕けちゃって良いですよ」

「ええっ!砕くなんてそんな!私何か粗相をしましたか!?」

 室内の視線がさっと集中する。

 虹也は、自身の心臓が体を震わせる程に鼓動を高め、一気に汗が噴き出すという、極々貴重な体験をしたが、そんなものをゆっくりと味わうどころではなかった。むしろ味わいたくは無かった。

「いや、怒ったとかじゃなくってもっとこう普通に接して貰いたいって意味で言ったつもりだったんだ。言葉選びが悪くて驚かせたみたいで、ごめんなさい」

 虹也は人生の内で上位ランキング入りする程に焦りながら、しかし同時に思った。

 人を"砕く"という事を当然のように思われてしまう氏族とはどんな存在なのか、と。

「すみません、取り乱してしまって」

 女性が恐縮したように頭を下げる。

「でもその、あまり気安くするのはどうかと思うのですよ。位的に言えば私なんか無位ですし」

「え?"むい"って?いや、俺そういうの分からないし、その、別の所で育ったから」

「えっ!?でも氏族の方は国外には……あ、そうか、だからうちに。大丈夫、安心してくださいちょっと性格には難がありますがうちの捜査官は優秀ですから!」

 どういう勘違いをされたのか疑問だが、とりあえず丁寧語は直してくれないらしい。

(人生は思い通りにならないのが当たり前ってね)

 父の口癖を胸の内で呟き、虹也はめげずにニコリと笑った。

「昨日から助けられてばかりです。頼りにしていますよ」

「良かった。やはり信頼関係が無いと調査も上手くいきませんからね」

「皆さん親切で有り難いですよ」

 虹也は相手が調子を取り戻した事にホッとして軽く話を合わせた。

「それにしても揉めてるみたいですね」

 先程の医者と墨時と彩花、それに部長がなにやら言い争っている様子の場所を示してみせる。

「ああ」

 女性はどこか渇いたまなざしでその一画を一瞥した。

「あの組み合わせだと絶対いつも揉めるんですよ。今回は目に余ったのか部門長が周りから隔絶してるみたいですね。声も気配も消えてますから」

「隔絶?」

「部門長は巨人族でしょう?この庁舎が守護地なのでここでは神のごとく何でもありなんですよ。凄いですよね」

 当然のように語られたその内容のほとんどは虹也にとって理解の外の話だった。

 唯一(なるほど、巨人だから大きいのか。でも巨人って言葉から連想するほどには大きくないな)などと思った程度だ。

「姿は見えているんですね」

「接触が出来ないと緊急の時に困るでしょう?」

(うん、ダメだ分からん)

 虹也はファンタジー要素に関しては、とりあえず棚上げしておく事にした。

 元の世界で非常識であった物を無理に理解しようとしてもどうにもならないだろうし、そこをあえて話を合わせようとしても仕方がない。

 そもそも理屈や仕組みは分からなくても別に困らずに過ごしていた事は元の世界でも多々あった。通信の基本的な仕組みや車や機械のエンジンの作りとか虹也は深くは知らなかったし、別に知ろうとも思わなかったものだ。

 そういうものだと飲み込んでおいて、知りたければ調べれば良いのである。

(まずは現実を把握するのが先だよな)

「あの3人は仲が悪いんですか?」

「あ~」

 女性はしまったなという顔をしていたが、それ程罪悪感を刺激するような内容でも無かったらしい。

 すぐに女性特有の秘密ではない秘密の話をする時の顔になった。

「本当に仲が悪い訳じゃないんですよ。そんなんで危険のある仕事とか組んでやっていられませんからね。ただ、内藤分析官はものすごく保守の民族主義者なんです。山中捜査官は外縁部は嫌ってるみたいなんですけど基本的には多様種族擁護派だし、綾瀬捜査官はちょっと複雑で民族主義と同時に他種族がちょっと苦手らしくて、色々と意見がぶつかるんですね」

「うん?それじゃ彩花さんと内藤先生は仲が良さそうですけど」

「いえ、あのお二方は種族が違うでしょう?」

「ああ」

 そういえば彼女は吸血種族がどうとか言ってたかと、虹也は思い出した。

 なるほど違う民族の民族主義者同士というのは合わないだろう、それは当然だ。

 虹也は改めてこの世界の複雑さに目が回る思いがした。

(俺、ここでやっていけるのかな?)

 元の世界に戻る方法を探すという事がイコールで元の世界の破滅に繋がり兼ねない以上はそれを行う訳にはいかない。

 一番大事な人達を亡くしたとはいえ、あの場所にはまだまだ大事な人達がいるし、大事な場所があるのだ。

 そうとなれば、彼はこの場所で生きる覚悟をしなければならない。

(父さん、母さん、きっと世界が違うくらいものともせずに見守ってくれてると思うけど、俺に頑張る力を分けてくれよな)

 思いと共にそれぞれの顔を思い出す。



『はっ!なんだコウ、お前まだ親の膝を齧る餓鬼のつもりなのか?知るか!一人でやれ、一人で!』

『翻訳すると、自分が見守ってるから大船に乗った気でいろって事ですね。ほんとうに面倒臭い人だこと。コウちゃん、お母さんもいつでも傍にいますからね』

『なんだ、その勝手な解釈は、俺はなぁ』

『まぁお父さんったら年寄りの冷や水ってご存知ですか?』



 ふと、自然に思い浮かんだ情景に口元が緩んだのだろう。

「あの、大丈夫ですか?」

 何か不安そうな顔で話相手になってくれていた女性に覗き込まれてしまった。

「あ、いえ、すいません。その、色々な人がいるんで難しいんでしょうね?」

「そうなんです、最近の他種族受け入れの政策で急激に色々な民族が入り混じった国になってしまって。お気付きだと思いますけど、私もいわば元々は余所者なんです」

 虹也としてはそこの所には極力触れないようにしていたのだが、彼女には獣の耳が生えていた。

 といっても墨時の彼女のような、まんま直立歩行する獣という感じではなく、ちょっと毛深い人というだけで、その耳が無ければ虹也主観では"人間"と大して変わらない。

 いわゆる尻尾といえるような物も見当たらなかった。服の下に隠しているだけかもしれないが。

「ええっと、草原種族とか?」

「ええっ!!」

 女性のあまりの驚きっぷりに虹也はうろたえた。

 何かまずい事を言ったのかもしれないと思ったのだ。

「わ、私そんな乱暴者に見えますか?こ、これでも森林種族なんですよ」

 なるほど、どうやら草原種族は肉食系か。

 虹也は話の流れからそう見当を付ける。

「ごめんなさい。俺、他の種族って今まで見た事が無くて」

「ああ、そっか、そうですよね」

 良かったぁ、とか呟いている女性と同様に虹也も内心で安堵した。

(当分はこの方便でごまかせそうだ)

 方便ではなくてそもそもそれは事実であるのだが、どうも虹也も少々混乱している。

 何しろ彼の覚えの無い記憶が突然ふと浮かび上がって来て、今の彼の知識と混濁する事があるのだ。

 あの精神的な負担を伴った、フラッシュバックのように鮮やかに記憶が思い出される事象はまだ数度しかないが、元は無かったはずの、ちょっとした知識のような物が当たり前のように頭の中にあって、それがそこにある違和感の無さが、むしろ彼の混乱の元となっている。

(なんか俺、元々知識が偏ってる感じだよな。そりゃ5歳以前の知識なんて知れたものなんだろうけど)

 虹也は前途の多難さに思わず溜め息が出そうになるのを堪えた。

 家で彼が溜め息を吐くと母がげんこつをくれたので、すっかり溜め息を飲み込む癖が付いてしまっているのだ。

「俺、どうなるのかな」

 思わず、本音が零れる。

 その時、ふと女性の影が離れたのを感じた。

 疑問に思ったが、お茶を出し終わったし、会話も一通り区切りが付いたので仕事に戻ったのだと考えていた。

 だが、彼女はまたすぐに戻って来た。

「?」

 振り仰いだ虹也の目前に可愛らしい花を象った和菓子が差し出される。

「これ、おやつのお裾分けです。甘いものは気持ちが落ち着くんですよ」

「あ……ありがとうございます」

 笑顔と共に、今度こそ彼女は一礼して下がって行く。

 竹で作られた少し太い楊枝でその和菓子の一片を切って口に入れた。

「甘い、な」

 漉し餡のふわりとした甘さ。

 自分はきっとここでやっていける。世界は変わっても人の思いやりは変わらず暖かく感じるのだ。それならば世界は変わろうと、その気持ちに応えずに弱音を吐くだけなのは一人の男として情けなさ過ぎるだろうと、いわば見得かもしれないがそう思えた。

 虹也はその懐かしい甘さを口の中でお茶に溶かしながら、自分の中の違う世界への隔意をこんな風にゆっくりと溶かしていこうと心に決めたのだった。


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