第三話 永遠の愛と偽善者
「ルナ、ようやくだね」
自室に戻って来た僕たちは、明日のコンサートに向けて練習をしていた。
「うん。あと少しでこの周回が終わる」
それは嬉しいことでもあったが、また、次の周回が来る、ということでもあった。
体が震える。
何が、怖いんだろうか。
明日が来ること?
それとも、僕らが負けること?
「リリ...心配しなくていい。僕がずっとそばにいるから」
まただ。
僕も大概な嘘つきだったが、彼は励ますために嘘をついた、偽善者だった。
それはとても似ているが、本質から異なるものだった。
僕は、スポットライトの当たらない、暗い舞台に向かって、歩き始めていた。
本気で行くから。
その言葉が何度も反響する。
【Finalラウンド、ティア&エルルペア対リン&トワペア、スタートです!】
マイクをぎゅっと握った。
『Bonds aren't forever.
Yesterday's friend is today's enemy.』
絆は永遠ではない、昨日の友は今日の敵だ
僕たちは最初、永遠を信じていた。
平和は永遠に続き、愛はすぐそこにあると。
『Don't believe in anything.
Everything is your enemy.』
何も信じるな、全てが敵だ
でも、そのせいで、たくさんの希望と運命を取りこぼした。
それでも、何かにすがらなくては、自分さえもこぼれてしまいそうだった。
ふと、彼女達の笑顔を思い出した。
歯を見せて、思いっきり笑い合う姿。
『The people I love betray me.
There was no love to begin with.』
愛する人も私を裏切る、元から愛などなかった
思わず声が震える。
歌うことすらままならないほど。
まずい。
『Throw away your mind.Don't remember.』
心を捨てろ、思い出さないように
すると、彼女はマイクをスタンドから外し、近寄ってきた。
顔を見れば、あの優しい笑顔。
ハーモニーが響き渡り、目の前を歪ませる。
『Say goodbye to fond memories』
優しい思い出に別れを告げろ
冷たいふたつの瞳が、僕を捉えた。
雫がこぼれ落ち、彼女は悲痛に顔を歪ませる。
『You are my enemy!!forever......』
お前は私の敵だ、永遠に......
そして最後に、そう言い放った。
【――93対92で......
ティア&エルルペアの勝利です!!】
紙吹雪が舞い、キラキラと辺りを照らした。
「ありがとう――」
ピー、という警告音とともに、白く咲いていた花は紅に染まり、声だけを残した。
膝から崩れ落ちた花は、とても幸せそうに、笑っていた。