9 いざ、お茶会へ!
どうぞよろしくお願いします。
「いざ! 参りますよ!」
アンジェリカ先輩は気合十分。いつもよりキラキラしている。
パトリシア先輩も少し緊張して、マリアも……。
ああ、制服がピシッとしているんだ。ブラシをかけたりしわ伸ばしをしたのかも。
3人とも髪型もいつもより手をかけた感じだ。
「もっとピシッとなさい!」
私とヨシュアはそう言われてしまうけど……。
確かにいつもと全然同じ。
イラつくアンジェリカ先輩に捕まる。
「髪を結いましょう」
ずいっと顔で迫られ、否とも言えず。
「ぺスカはこちらで何とかします。
パトリシアはそっちを!」
そっちと言われたヨシュアもパトリシア先輩に捕まってる。
「きれいな髪じゃない……。まあ確かに下ろしているのも素敵だけどね」
アンジェリカ先輩が言いながら編み込み部分がある上品な感じに結い上げてくれる。
「すごーい!」
マリアと私は感動の眼差しで寮長を見た。
「ふふふっ、家ではね。妹達の髪をよくやっていたから」
アンジェリカ先輩はうれしそうに笑った。
「かわいい髪型。ありがとうございます。
自分じゃできないから、うれしいです!」
「まあ、たまにはやってあげてもよくってよ」
パトリシア先輩が「どうでしょうか?」と声を掛けてきたので、ヨシュアを見た私達は吹き出す。
「笑わないでくれよー」
情けない表情で笑うヨシュアの髪は七三にきっちり撫でつけられていた。
「……まあ見慣れていないだけで……」と私。
「見慣れていないから、変に見えるだけで……。変じゃないってことよね?」とマリア。
「いや、いつもと違うから変に見えるなら、学校の全員が見たら変ってことだろ!?」
ヨシュアの訴えに私とマリアでもう少し崩した感じにして、まあ、いつもよりはおしゃれにしてみようと頑張りましたぐらいにできた。
制服にブラシもかけられた……。
5人で女神寮を出る時「頑張ってね!」「頼んだわよ!」と寮のみんなに見送られる。
お茶会の話を聞いた寮のみんなは、私達が頑張って女神寮でのお茶会を復活させれば、気になる人に招待状を出して呼ぶことができる! と期待してくれてるみたい……。
なんでこんなことになった……。
11歳の2年生ズには荷が重すぎるっすよ。
そういえば、他の寮に入るの初めてだ。
「私、他の寮に入るの初めてです」
私の言葉にマリアも頷く。
「僕は男友達が他の寮ってことが多いからどっちにも行ったことがあるけどね」
ヨシュアの言葉に「そうなの?」と返事する。
他の寮の同性の友人か。
私にはいないな。
魔神寮が見えてきた。
わっ! なんか飾り付けが素敵。
白いリボンと花を飾っている。
受付で招待状を出すと招待者が呼び出されるのね。
「魔神寮寮長ザカリーです。
アンジェリカ寮長、パトリシア副寮長、来て頂きありがとうございます。
本日は楽しんでいって下さい」
寮長だから5年生、15歳だよな。
私達からするともう立派な大人の男性に見える……。
自分が15歳の時、あんなに立派でしっかりしていたか……。
うう、否である。
この世界に負けた気がする……。
「よっ、来たな!
あ、一応おしゃれしてきてくれたんだ」
フレイがいらんことまで言う。
一応? 一応じゃねえわ!
アンジェリカ先輩がしてくれたんだわ!
そんな言葉をぐっと飲みこみ「お招きありがとうございます」と礼をした。
アンジェリカ先輩に言われたんだ。
客の態度も先生に見られているって。
読んで下さり、ありがとうございます。