82 A級試験(中)
どうぞよろしくお願いします。
A級治癒試験の内容は、手元にある10本の萎れた花を元通り元気にすること。
一度にでも、1本ずつでもいい。手を触れても、触れなくてもいい。
ただ、1分以内にと制限付き。
だから、1本ずつやっていては無理。
全部か5本ずつか、というところか。
前に2本ずつ10秒ずつでクリアしたという先輩がいたと聞いたことがあるけれど、自分の得意なやり方で作戦を立てとかないと……。
治癒魔法はあまり声には出さないけれど、集中するのに声を出す人もいる。
神か女神は『治癒』『ヒール』ということが多い。
魔神の方は『ケアル』という魔法になるんだよね。
カイト先輩とシーナは2回目の受験だからか、ほぼ無詠唱で一気にクリア。
ユミエラは5本ずつ、落ち着いてやってクリア。
ジュノーは確実にということで3本ずつにして、慌てて最後の1本。制限時間に滑り込みセーフ!
さあ、次はキルシェだけ……。
私は見ていられなくなって、その場を離れようとしたがマリアに腕をつかまれた。
「だめだよ、ちゃんといないと」
「でも……」
「キルシェの不正がはっきりした時、そこにペスカがいなかったら……。
ペスカが自分のことを嵌めたと思うだろうね」
「う……、わざとじゃないけど……、予想してて止めなかったのは……」
「ちゃんと最後まで見届けて!
なんでそんなことをしたのかって言わないと!
ペスカの悪いところだよ、逃げようとするの」
「逃げる?」
「そうでしょ。フレイからもヨシュアからも……、ケビンもそうかな?
ペスカがはっきりさせなくて逃げてるから、振り回されてるんだよ!?」
えっ?
私が振り回してる!?
「逃げてないし、振り回してもいない……」
マリアはため息をついた。
「とりあえずキルシェのことはちゃんと見届けて終わらせなさい!」
う……。そうだよね。でも、智恵理だったら……。
前世で好きな男の子が事故死するきっかけになった許せない女が、今世でも邪魔者で。
なんとかしなきゃと焦って不正に手を出しちゃって……、なんて……、私がとんでもない悪の黒幕みたいじゃない!?
いや、私はそう思って動いてないんだけど、智恵理から、キルシェから見たらそうなっちゃってる……。
キルシェの治癒試験が始まった。
胸元に左手を当て、右手を花の上にかざす。
胸元から光が右手を伝い花の上に微かな光が降り注ぐのが見えた。
「できました!」
キルシェの声が響いた。
20秒しか経っていない。一気に10本で20秒。
すごい成績だ。しかも、手も触れずにだから。
キルシェが私を見た。
『どう?』
表情からそう言っているのがわかる。
私は頷いた。
これが彼女の実力ならば、私は約束通りフレイのヒーラーを……。
ん、別に……。
キルシェがどうあれ、ヒーラーをやめることはできるんだ。
そうだよ。
私がヒーラーだと他の人と恋できないなら、私がやめれば、フレイには他に女の子が近づけるわけじゃん。
そうだよ、智恵理だけじゃない。
一護を解放してあげないといけないんだ……。
読んで下さり、ありがとうございました。
また、ペスカが……。




