72 元通り
どうぞよろしくお願いします。
「いやよ! だって! 私はフレイの婚約者で!」
キルシェの悲痛な声が響く。
「見ろ! フレイを!
ペスカとやらと手を握り合っているじゃないか! キルシェに対しての裏切りだろ!」
キルシェはその言葉で私達の手の位置を確認して、カッと赤くなった。
怒りだ。
「その手を離せ!」
フレイが私を守ろうと動こうとしたのがわかったけれど、私はそのまま手を押さえ続けた。
ここでフレイが何かしちゃったほうが問題になっちゃう!!
私に飛び掛かってきたキルシェの身体が止まり、動きも止まっている。
身体だけ止めた? でも、倒れていない?
空間静止、魔法?
私は学校長を見た。
村長が恐る恐るキルシェに触れると、キルシェの身体は父親の腕の中へ崩れるように倒れ込んだ。
学校長が静かに言った。
「フレイが怒りに飲まれてあなた方に暴力を振るったりしないように、ペスカが押さえてくれていたんですよ」
文官が場を仕切り直すように書類を取り出して村長に見せる。
「では、こちらの契約破棄の書類にサインして頂き、借金のリストと総額を確認して下さい。
もう、この金額の金は用意してあります。
この場ですべておしまいにしてなかったことにしましょう」
村長は何やらぶつぶつ言いながら、キルシェをソファに寝かせると、書類を受け取り、学校長の机まで進み出て、ペンを借りてサインした。
文官が確認。
ミクラ団長が大きめの封筒を村長に手渡した。
村長はソファまで戻り、封筒のお金を数え……。頷いた。
「確かに……。
フレイ、これで約束と契約はなかったことにしてやるが、キルシェの方から婚約破棄したんだからな!」
文官が微笑んだ。
「さあ、周囲はどう受け取りますかな?」
「ナーベイ家をダン村から追い出してやる!!」
「さあ、そううまく行きますでしょうか?
今回、村の会計と帳簿を確認していて、不思議なことに気がつきましてね……」
「な、なんだ?」
「あなた方村長の家族の王都への交通費や滞在している家の賃料が村から支給という形になっているのは、どういうことでしょう?」
「そ、それはダン村のために、王都で特産品の売り込み、とか、活動を……」
「そのわりには成果は出ていないようですが。
今頃、ダン村で問題になっていると思いますよ。
他にもいろいろ……、見つかりましてね……」
文官さん……、笑顔が怖すぎる……。
村長は学校長の部屋を飛び出して行ってしまった。
キルシェを残して。
1年生の先生がキルシェの所へ行き「さあ、寮に戻りますよ」と言って立ち上がらせた。
なんだか呆然としている。
キルシェはこちらを見ることもなく、部屋を出て行った。
「さてフレイ、君は竜騎士団にこれだけの借金をしたというわけだ」
ミクラ団長の言葉に文官が書類をフレイに差し出す。
私はフレイの手をやっと放した。
フレイが書類を確認して頷く。
「わかりました。
できるだけすぐ返しますが、一度に全額は……、すみません」
「それはわかっている。とりあえず半分はすぐに返せるな?」
「はい」
「残りは少しずつでも給料から天引きでもいい。
そこは文官と相談して決めなさい。
まあ、借金は少しできたが、これで君は自由の身だ!!」
「はいっ! ありがとうございます!」
フレイが頭を深々と下げ、私もぺこりと頭を下げた。
3年生の先生が来て「ペスカ、フレイ、これで元通りだ。もう普通に過ごして大丈夫だよ」と言ってくれた。
読んで下さり、ありがとうございます。
では、ちょっと実家へ行ってきまーす!




