67 スノウの行き先
どうぞよろしくお願いします。
私達は王都の大通りをカペー商会に向かって歩いている。
「良かったわ。うまくいって!」
マリアが笑う。私は質問する。
「モリソン商会って、マリアの家の?」
「ええ、うちの仕事は生地とかボタンとかそういうものを買い付けたり、お店や工場と一緒に企画して作ったりする仕事なの。
だから、王都の服飾系のお店のことはまあまあわかるつもり。
カペー商会も昔はうちと関係があったみたいなんだけど、今の代で人件費をケチり始めて付き合いがなくなったと聞いたわ」
だから、私が初めて服を買いたいと相談した時、リーズナブルだけどセンスのいいお店を紹介してくれたり……、まるで店員のように服を探してくれたんだ。
自分が王都に詳しいとか、実家の仕事の伝手があるとか、私が負い目に感じないように、気にしないように、何も言わずに……。
マリア……。
「何?」
「ううん、マリア、ありがとう。
私も、スノウも、マリアに助けられた……」
「でも、今回の件はスノウが自分の技術をきちんと磨き続けて学び続けていたから、引き寄せた運だと思うな」
「ありがとう、マリア」
私、マリアと友達になれて、本当に良かった。
こんな人に対して気持ちのいい気遣いのできる親友、なかなかいないよね。
それに周りを見る目も確か……。
「また、あんた達なの!」
カペー商会の裏口を訪ねるとさっきの女の人が出てきて、うんざりした顔で言われた。
「スノウをお願いします。
それから、スノウは仕事先が決まりましたので、ここで引き取らせて頂きます。
契約関係の書類も忘れずに持たせて下さい」
マリアが毅然とした態度で言う。
「はっ、どんな店だか!
お針子としてじゃなく、店員としてかしらね!」
嫌味を言いながらもスノウを呼びに行ってくれた。
しばらくすると、大きめの荷物を持って不安そうなスノウが出てきた。
「ほら、さっきのお友達が仕事先を見つけてきてくれたそうよ!
お針子としての仕事はもうあきらめるんだね!」
女の人は最後まで嫌味を言ってくる。
泣きそうになるスノウを私は抱きしめて「大丈夫、お針子としての仕事だよ」と囁いた。
「ま、後でスノウが泣きついて来たくなった時に知らないと困るから、どこの店かぐらいは教えておいてもらおうか?」
うーん、泣きつくわけない! どうしたって、このお店でもう働かせたくないっ!
マリアは女の人を無視してスノウに言った。
「ちゃんと雇用契約終了の書類も貰ってきた?」
「はい、ここに」
スノウから受取り確認するマリア。
「OK! 大丈夫ね。
もうこの店に戻ることはないけれど……。
スノウの次の職場はアメリア・ヴァローナ女史の工房よ」
女の人がびっくりし過ぎて、狼狽えている。
「え? ヴァローナ女史? なんで?」
「そりゃ、スノウの腕が確かだからです!
それに、スノウをお針子として育ててくれることも約束して下さった」
「ちょ、ちょっと待ってスノウ、賃金、元に、いえ倍出すように言う……」
女の人が慌てて店の中に走って行くが、マリアは「行きましょ!」とスノウを促す。
「本当に、ヴァローナ女史が!?」
スノウが信じられないように言った。
「あなたのハンカチを見てね。刺繍が得意なお針子をちょうど探してたのよ」
すごい、マリア!!
読んで下さり、ありがとうございます。
マリアもね、両親の商会で雇うというのが一番簡単なんですけど、それはスノウにも失礼だと思って自分の知識総動員で事に当たってくれました。
頼りになる親友です。




