199 兄さんの結婚披露宴(後)
どうぞよろしくお願いします。
「こちらこそどうぞよろしく!
ペスカちゃんみたいなかわいい妹、うれしいわ。
それにフレイくんは竜騎士なんだって!」
「はい、ここまでペスカを乗せてきました」
「まー、素敵! 絵本の竜騎士とお姫様みたいね!」
……私はお姫様って感じじゃないけどな。
「ペスカちゃん、手袋ありがとう。
とても素敵よね。役場でもたくさんの人に素敵だって褒められたの。
きっと花嫁が白い手袋するの人気になるかもね!」
アメリが近くでじっと考え込んでいるのに気がついた。
なるほど、アメリはいろいろな人のおしゃべりを聞いて、売れる商品予測を立てているんだ。
すごい能力じゃない!?
玄関のドアがノックされ、近所の方々が挨拶に来てくれる。
私はテーブルの皿を片付け、台所に出しておいたお菓子を並べる。王都で買ってきた物ね。
そして、クインに頼んでお茶を入れ、振舞う。
ライオネルの御両親も顔を出してくれ、私は昨日、荷馬車を出してもらったことのお礼を伝えた。
ライオネルはよそ行きの服装でスノウからもらったタイをしていた。フレイの所へ行ってしまう。
「いやー、ペスカちゃんがこんなに素敵なお嬢さんになるとは!」
ライオネルのお母さんが言って私の手を取った。
「もし、ここら辺の教区へ仕事が決まったら、ライオネルの嫁になることを考えてくれないかしら!」
急にその話の途中から周囲がしーんとして『嫁になることを考えてくれないかしら!』だけ妙に部屋の中に響いた。
ライオネルが「母さん! 俺に断りなく、出会う女の子に嫁にならないかチャレンジはやめろって!」と言うと、みんながどっと笑った。
ライオネルが来て「ごめんな」と謝ってくれる。
「ペスカ、これ、スノウに渡してくれ。頼む」
ライオネルは手紙と何か細長い小さな箱を差し出してきた。
「わかった。お届けするね」
私は受け取って、その場から別の部屋に行った。
みんなが見ているところで収納魔法は使いたくなかったのでね。
そこでしまっているとフレイが来た。
「チャレンジャーって、そのままライオネルの親のことだったな」
「そうだね」
「でも、羨ましいよ」
「えー、困るって言ってたじゃない」
「それは全然見当違いの子に声かけてる時だよ。
本当に好きなペスカにああやって援護してくれたら……」
「ライオネルの場合は援護になっていないけどね」
兄が来た。
「おいおい、どうした」
「兄さん、いいところに! アイリさんと兄さんにプレゼントがあるの。
どこに置いといたらいい?」
「結婚の?」
「それは手袋で。
これは普段使いできる物を選んだから、みんなに披露するってもんじゃなく、お土産だな。
これからの生活でアイリさんと使って欲しい」
「ありがとう、じゃあ、今受取るよ」
私は袋を取り出して兄に渡した。
「中を見てもいい?」
「どうぞ!」
兄は中からベストとショールを取り出した。
「いいな、きれいな色だな。
使いやすそうだし……、ショールも軽くて暖かそうだ。ありがとうな」
「フレイも一緒に選んでくれたの」
「へー、ふたりで選んでくれたのか?」
「うん」
「もう……、ふたり付き合っちゃえよ!」
兄さんが言って、フレイが苦笑する。
「卒業したら考えるってことになってる」
私はそれだけ言うと、その部屋を出た。
うーん、なんか……。やっぱり私の方がフレイを振り回してフレイの方がいじらしい……ってなってる気がする。
あーあ。
読んで下さり、ありがとうございます。