176 アイテム売却について(後)
どうぞよろしくお願いします。
「魔神の加護?」
「ね、女神の加護は持ってるから、もうひとつ増えてもいいかなと……」
ちょっとマリアが言葉を濁す。
うん、フレイが魔神が守護神だから、とかそんな話が出たんだろう。
でも、赤い石はオーバを思わせるし、シンプルで普段使いもできるデザインだった。
「うん、デザインも好きな感じだったし、うれしい、ありがとう」
私がそう言うと、短剣と首飾りをカフカが出してきて渡された。
「ペスカに渡しとく。フレイに渡して」
「カフカ、ありがとう! 確かに!」
エースがヨシュアを見た。
「で、ヨシュアには最初の長剣を」
「えっ! 僕は騎士でもないし!!」
カフカが笑った。
「いや、一緒に戦ってくれた時、長剣使ってたろ」
「あれは用心のために持っていて、実際使うなんて思ってなかったし」
「でも、ちゃんと使えてた。使えるならいい道具を持っていて損はない」
ヨシュアはうれしそうだけど、まだ遠慮がちに呟いた。
「いいのかな……。うん、みんな、ありがとう」
カフカが長剣を出すとヨシュアに渡す。
「光の力がある剣だった。神と女神の結界と同じような力があるそうだ。
だから、アンデット系モンスターと戦う時に威力を発揮するかもね」
へー、ヨシュアにぴったりじゃない!?
私はそう思って微笑んだ。
「ありがとう。こんな素晴らしいものを貰っちゃって……。
で、カフカとケビンは?」
ヨシュアが心配そうに言った。
カフカが「俺はもうひとつの短剣にした。これもけっこう珍しくて。ヒートアックス覚えてる?」と言った。
私が答える。
「リーダーが使った赤い刃の?」
「うん、あれに近いかな。刃を熱したり炎を出したりできる感じ。
これの良いところは魔法武器という以外に、調理に使える」
「あ、切るだけでお肉焼ける!?」
私は思いついて叫んだ。
そりゃ、便利だわ。
「ふふふっ、そういう使い方もできる。
で、刃を横にして焼き付けなんかもできるから、プディングに砂糖をまぶしてブリュレするとか……」
「何それ! すごくいいじゃん!」
「だろ!? 他に使い方思いついたら教えてやる。ペスカも思いついたら教えてくれ」
みんな、私とカフカが大興奮して話しているのをぽかんと見ていた。
その空気感に気がついた私とカフカは気まずそうに顔を見合わせ、苦笑いした。
エースが言った。
「ま、それがいいとカフカが言ったんで……。
で、ケビンは街の武器屋に欲しい武器があって、それと同じ値段の物を選んで交換したいとなったんだ。
値段的にちょうどいいのがブレスレットのひとつにあって、それを武器屋で交換してもらった」
「じゃーん!」
ケビンが左手を見せる。なんか金属製の鎧の手? 手甲みたいな物を嵌めていた。
「これで俺の拳は最強だぜ!!」
「そうなの?」
どんな武器なのかわからない私は首を傾げた。
「ああ、関節部分にナックル、ここが手甲になっていて防具にもなるし、こうすれば……」
ジャキン! と爪が出てきた。
あー。男子ってこういうの好きそう!
私は笑ってしまった。
「で残った指輪7個、首飾り3つ、ブレスレットひとつ、王冠ひとつをギルドに買取りをお願いした。
その金額を9等分して……」
エースの言葉にカフカが封筒を取り出しみんなに配る。
フレイの分も私にくれた。
「中ちゃんと確認して」
エースの言葉に確認してびっくり!
いや、金額は聞かされたけど、半信半疑だった。
学校から支給される金額だと3年分ぐらいあるよ!
フレイのも確認。同じだけ入ってる。すごいな、これ×9人分!
「王冠がさ、高価すぎて、ギルドじゃ引き取れないってなったんだけど、他の商会にも声かけてくれて、売れたんだ。ほんとラッキーだった」
カフカが説明してくれ、エースが笑う。
「大変な思いもしたけどな。ちょうどレアをたくさん引き当てたというか。
難度異常になってレアが出るあたりの階層を俺達で数日間独占できたってのもあるし、今回は本当にこういう金額になった」
お小遣い稼ぎどこじゃない。
生活費、しかも数年レベルだわ。
レアアイテムを回収できるとすごいんだな。
これは、マンシー達の魔が差してしまった気持ちがわかるような気がした。
読んで下さり、ありがとうございます。