172 ペスカの希望
どうぞよろしくお願いします。
「もし、パーティのその、フレイとカフカとやらが間に合わなかったら……。
ペスカはダンジョンでどうなっていたか、なのだぞ!
そいつらは人殺しではないか!」
「でも、今回、私は死んでません! 彼らも助かった!」
「それは、ペスカが結界を掛けてやったからだろう!」
「そうです、私が守った。
助かったのものを罰するのですか!
それも、必要以上に重い罰を!
被害者……は私でも、ヨシュアでも、ギルドの職員でも、あの街の駆け出しの冒険者だとしても、平等に扱われるべきだ。
私が助かったから言えることだとはわかっています。
でも、そこを、国を国民を治める立場の人ならよくわかっていないといけないんじゃないでしょうか!?」
「……わかった。
ペスカの言いたいことは……」
私はほっと息を吐いた。
ステファン王子が笑った。
「ペスカは王妃の……、母上のようなことを言うな」
「そうですね」
アベル王子も笑った。
アーサー王子だけがむすっとしている。
ロマネス王弟(もう自分の頭の中では殿下省略していいよね。もう王子達のはとっくに省略してたけど)がそんなアーサー王子を見て言った。
「……何気に、ペスカがアーサーの副官をしてくれた方がきちんと見張って意見してくれていいかもしれないぞ」
パトリシア先輩が慌てたように「ロマネス!」と言った。
アーサー王子はさらにむすっとした顔をして、私を見た。
「ペスカの言いたいことはわかった。
特別扱いは……、特に王族の者は気をつけなければならないということだな」
「わかって頂けて良かったです。
私も少し感情的に言い返してしまい、すみませんでした」
「いや、私の言葉に、あのように言い返してくれる者は、なかなかいないから……。
ペスカとはもっと話がしたいと思う。
魔法省にはいつ頃、遊びに来るつもりだ?」
パトリシア先輩とアンジェリカ先輩が再び緊張する気配を感じた。
「……はい、先輩や同級生で、魔法省に興味がある子がいっぱいいますので、あ、下級生にもいるかな。
みんなで社会見学に伺いますね!」
ロマネス王弟が声を上げ笑った。
「さすがペスカ!!
その社会見学、ぜひ、私も一緒に行きたいな。
いいだろう、アーサー!」
アーサー王子が苦笑いしながら答えた。
「そうですね。
ロマネス叔父様は社会見学が必要な年齢でしょうから……」
あら、上手い嫌味だけど、でも……。
ステファン王子が笑う。
「なら、私も社会見学参加したいな」
アベル王子も手を挙げた。
「私も行きたい!」
私はうれしくなり、にっこり微笑んだ。
「そうですね!
みんなで行きましょう!
秋はどうでしょう!?
学校のみんなにも話しておきます!」
「それは楽しみだな!
社会見学が必要な年齢で本当に良かったよ!」
ロマネス王弟が晴れやかな表情で言った。
パトリシア先輩もアンジェリカ先輩も笑っている。
ヨシュアは私をぼーっと見ている。
どうした?
「ヨシュア!? 一緒に計画立ててくれるよね?」
ヨシュアははっとして頷いた。
「ああ、ペスカの希望とあらば、喜んで!」
その時、メイドが入ってきてアーサー王子に何か知らせた。
アーサー王子は「お通しして」と言っている。
「ハウアー男爵がペスカのことを迎えに来たよ。
ペスカ、今日は忙しいところ、すぐに城に来てくれてありがとう。
それでは、また。
魔法省に来る時、事前に知らせてくれよ。
大人数なら、こちらにも用意が必要だからね」
「アーサー王子殿下、髪飾りのこと、本当にどうもありがとうございました。
はい、事前に相談致します。どうぞよろしくお願いします」
読んで下さり、ありがとうございます。
ロマネス王弟(ロマーナ先輩)はアーサー王子、ステファン王子、アベル王子よりも年下になります。
叔父さんなのに年下です。