171 王族としての
どうぞよろしくお願いします。
アンジェリカ先輩が箱を預かろうとしてくれたのを止めて「こちらでしまっておきます」と収納魔法に入れた。
「収納魔法! ペスカできるのか!」
アーサー王子やアベル王子、パトリシア先輩なんかも驚いている。
私はヨシュアを見て言った。
「今回、ダンジョンに行く準備の時に教えてもらって、チャレンジしたら、私もヨシュアもできたんです」
「すごいな!」
ステファン王子が言ってくれる。
確かに珍しい魔法みたいね。
元々の体質というか生まれつきのものがないと無理だと聞いた。
努力では身につかない魔法なんだって。だから、マジックバッグが重宝されるんだろう。
「アベルはできるんだよな。
ジョシュアもできるようになったんだ。
珍しいのに兄弟の半分ができるなんてすごいよな」
ステファン王子がアーサー王子に言う。
ということは、アーサー王子とステファン王子はできないんだ。
苦虫を嚙み潰したような表情を一瞬浮かべるアーサー王子。
しかし、すぐにひっこめた。
魔法使いとしての、第1王子としてのプライドかな?
まあ、ステファン王子は騎士でそういうことあっけらかんとしてそうだけど、アーサー王子は違うかもな。
「そうそう、どんなトラブルだったんだ?
竜騎士団のフレイからの報告は上がってきてたんだけど、実際の所の話を詳しく聞きたいなと思って」
ステファン王子の言葉にアーサー王子がまた反応する。
「フレイって、あの竜騎士の?
あいつがそばにいたのに、ペスカが危険な目に?」
いやいや、フレイだけを悪役にするのやめて下さい。
「こちらの誰が悪いとかではなくて!
レアアイテムが絡んで暴走した大人のパーティに巻き込まれてしまった感じかな。ね?」
私はヨシュアに苦笑して話しかけた。
「ああ、そうなんだ。
こっちが夏休み中の学生だと、軽く、利用してやろうと思われてしまったみたいで……」
そして、ヨシュアが説明を始めた。
◇ ◇ ◇
ヨシュアの説明と、私の説明と……。
聞き終わって、みんなしーんとしてしまう。
えっ?
『たいへんだったなぁ、がっはっは』でいい話ですよ!?
「大変だったね」
アベル王子が私の所に来て手を握って言ってくれた。
「もし、君達が学校の優秀な生徒達じゃなくて、駆け出しの少年少女のパーティーだったらと思うと、恐ろしいよ。
本当に良かった」
アベル王子の言いたいことは伝わってきた。
彼は私ではなく、14歳の普通の女の子だったらと考えてくれたんだ。
なんか、それはすごくうれしかった。
そして、それは王族としては忘れてはいけない視点のような気がした。
なんとなくだけどね。
「ありがとうございます。
はい、ギルド職員の皆さんも、すごく頑張ってダンジョンとそこに入るパーティの管理をしてくれています。もう少し人手があると、ギルドのパーティが中でも活動することができて、いいのかもしれません」
「そうだな。今度ギルド長の集まりがある時に話してみる」
「よろしくお願いします」
アベル王子は頷いて自分の席に戻った。
「その、4人組はどうなったんだ?」
アーサー王子が険しい表情で言い、私とヨシュアは顔を見合わせた。
「さあ、捕まって調べられてるとは思いますが、その後のことはまだ聞いていないです」
「厳罰にするように言おう」
「いえいえ! 法で決められた罰で!
相手が私達だったからって、普通より厳罰になる意味がわかりません。
個人的な感情で罪や罰を重くしないで下さい」
どうぞよろしくお願いします。