141 オーバに初乗り
どうぞよろしくお願いします。
次の日の放課後、竜舎に行く。運動場には誰もいない。
竜舎にはお父様とジョイがいて、私の顔を見るなり笑った。
「何ですか?」
「いや、お守り見せてもらったよ。
あのメダルのチョイスはフレイが自分でしたんだって?
願掛けというか、いじらしいというか……」
あ、みんながフレイに優しくしたり気を遣ったりするというのは……、そういうこと!?
私がなかなか返事をしないというか、保留にし続けているから……。
かわいそうというか、いじらしいと思っているのか!?
「ああ、私もあのメダルの組み合わせを見て、笑っちゃいました」
「笑ったか……。まあ、フレイは喜んでいたからいいだろうが。
フレイの気持ちはそれだけ強いということだ。
それはわかっているね」
「はい。
15歳を過ぎて、お互い無事でいることができたら、その時はきちんとフレイに、フレイのことを大切に思っている私のこの気持ちを打ち明けることにします」
「ああ、ペスカの気持ちが決まっているなら、もう何も言わないが……。
そういえば、今日がペスカの誕生日だってな」
「そうです。昨日がフレイの誕生日だったから」
「一日違いで追いかけてきたってやつだな」
私はちょっと困って微笑んだ。追いかけてきたわけじゃないのですが……。
「……フレイとオーバは練習場だ。
練習場内ならと許可を出した。私もすぐに出るが、ベルトと紐の金具をしっかり確認するのを忘れないように」
お父様がベルトを渡してくれた。
「はい! ありがとうございます!!」
私はカバンを置いてベルトをすると竜舎を飛び出し、運動場に向かう。さっき姿が見えなかったのは空を飛んでいたんだろう。
私が柵の所でキョロキョロしていると、オーバが戻ってきた。
ホバリングのようにして一点着地!
すごい、腕、かなり上がってる。
「ペスカ!」
フレイが紐を外してこちらに来るのが見えた。
「すごいね! 着地の練習しているんだ。
あ、そうか、辺境伯爵の城、その着陸方法じゃないと着けないか!」
「やっぱりそうなんだ。
この前から練習するように言われてさ。
ペスカはジョイに乗ったことがあるからわかるよね?」
「うん、わかるけど。久しぶりだからひとつひとつ確認してくれる?」
私は柵の中に入った。
オーバを撫でて「今日は乗せてね。よろしく」と声を掛ける。
オーバは、『任せろ!』という感じで身体全体を震わせた。
大丈夫か! 落ち着いてくれよ~。
そう思いながら、オーバを撫でる。
「ペスカ! 何してんの?」
ハーブの声に振り返ると、ハーブとケビンとヨシュアがいた。
「オーバに乗せてもらうの!」
3人が『えっ?』と言う顔をした。
フレイが笑っている。
お父様とジョイも出てきた。
もう飛ぶ準備は竜舎の中で身に付けてきたようだ。
私とフレイは真剣な顔になり、オーバの背中に乗ると、声を掛け合いながらお互いに座る位置を確認した。ベルトから紐を引き出し、オーバのベルトの金具に繋ぐ。
「行くぞ、オーバ!」
私は座り、さらにベルトに手を伸ばしつかまる。
フレイが私の後ろに座り、オーバの胸当てから伸びる手綱のようなところを持った。
「行くよ、ペスカ!」
「はい!」
オーバが走り出す。すっごく揺れる。
ふふ、びっくりしながらもうれしくなる。
オーバ、頑張ってるのが伝わってきたから。
ふわっと浮いて、上空へ。
下を見るとヨシュア達が手を翳してこちらを見上げている。
お父様とジョイも続けて空へ。
「大丈夫そうだな!
このまま、私についてこい!」
お父様の言葉にフレイが頷き、学校の上を一周した。
図書館前にはマリアとエースがいて、私は手を振った!
ふたりも気がついて振り返してくれる。
「すごい! 楽しい!」
私は満面の笑みでフレイを振り返る。
「誕生日おめでとう! ペスカ!」
「ありがとう! フレイ!」
読んで下さり、ありがとうございます。