136 魔神寮のお茶会
どうぞよろしくお願いします。
3年生が演習から戻ってきて、魔神寮のお茶会があった。
やっぱり洗練されてる。
寮長のローラ先輩と副寮長のエースが仕切っているだけあって、いつもよりきっちり、細かい配慮まで行き届いているって感じ。
接客マナーが徹底されていて、キルシェも頑張っていた。
キルシェも途中から話に加わり、6月のヒーラー試験を受けると聞いた。
C級からだ。チェックは厳しいはず。
ユミエラが良く練習を見てくれてるそうで、教えてくれる。
「キルシェならC級は大丈夫よ。
このまま頑張れば9月にB級に挑戦できると思う」
ユミエラにそう言われ、うれしそうなキルシェだった。
頑張ってるね。私もうれしい。
「キルシェはヒーラーを目指すの?」
ユミエラは魔法使いとヒーラーの二刀流だ。
だいたいの魔法使いは攻撃魔法がメインでヒーラー魔法は自分のできるレベルまでという人が多い。
魔法使いとしてどんな仕事に関わっていくかで求められているものも違うだろうし。
剣ができるなら決められたジョブが魔法使いでも魔法騎士になれる可能性はある。
それぞれの個性や資質のバランスかな。
剣が使えて騎士団に入れれば魔法騎士。それ以外は大きく魔法使いとしてくくられちゃうことになるけど。
ユミエラみたいな二刀流なら、探索のチーム活動なんかに重宝されるだろうし、都市部の騎士団所属ヒーラーなんてのもいいかもしれない。
騎士と共闘できるヒーラーは歓迎されるだろう。
「とりあえず、ユミエラ先輩みたいな、オールマイティーな魔法使いになりたいです!」
ユミエラが「まー!! なんてかわいいこと言ってー!」とキルシェの頭をなでなでしている。
「頑張ってね、キルシェ!」
私が励ますと「C級に受かったら……、またゆっくり話を聞いてもらってもいいですか?」と言われる。
「いいよ!」
微笑んで返事したら、フレイの機嫌がすっごく悪くなった。
「キルシェはいいのに……、なんで!?」
実は、魔神寮に来る時、フレイと待ち合わせして歩いて来たんだけど、夏前の休みでまたどこかへ出かけようって誘われたのだ。
女神寮のお茶会のことやスノウに会いに行きたいとか、兄へのお祝いを買いに行かなくちゃとか、5年の授業単位のレポート、フレイの誕生日もあるしな……といろいろ考えて、断っていたのだ。
「いやー、忙しくて?
でも、頑張ったキルシェのためなら、時間作りたいし」
マリアが苦笑いして言う。
「ペスカ……、その言い方だとフレイのためには時間が作れない? 作らない? みたいに……」
「あ、そうか!
オーバとジョイにも会いに行きたかったんだ!
このまま竜舎に寄って帰っていい?」
マリアとエースが顔を見合わせて苦笑する。
「……わかったわ。フレイとペスカで竜舎に行きなさい」
「なんで? みんなで行こうよ」
魔神寮を出る時にローラ先輩がかわいい花束をくれて「魔神寮の雰囲気がとても良くなったのはペスカのおかげでもあるのよ。また遊びに来てね!」と言ってくれた。
キルシェとユミエラとエースはまだお茶会当番があるそう。
マリアがヨシュアとケビンとハーブに「行くわよ!」と言う。
「え、どこに?」とヨシュア。
「俺もオーバに会いたいんだけど」とケビン。
ハーブはマリアに頷いて見せた。
「ほら、夏休みのダンジョンの話でもしよう! 計画しっかり立てないと!」
ハーブがそう言ってみんなは竜舎とは反対の方へ歩き出した。
みんな、なんでそんなにフレイに気を遣うんだ?
「竜舎に行くんだろ!」
フレイはまだ機嫌が悪い。
うーん、でもさ、お祝いを買いに行くのに付き合うとか、嫌でしょ!?
何にするかまだ思いついてないし……。
竜舎でお父様にも相談してみよう。
もし、いいのが決まれば、フレイと買いに行ってもいいかもしれない。
読んで下さり、ありがとうございます。