128 女の戦い?
どうぞよろしくお願いします。
ざっと人の群れが割れてステファン王子殿下がこちらに歩いてくる。
「ペスカとマリアは後ろのグループだったのだな!」
「はい、まだ13歳ですし」
「また、騎士団の方へ遊びに来い!
王城に来る日は決まったか?」
ヨシュアが苦笑した。
「今、学校の方がイベントを控えていて忙しんだ。だから夏になると思う」
「あ、寮のお茶会だろ! 神寮のに見学に行く予定だ」
騎士団の方また見に来るんだね。こりゃ、盛り上がるな。
その時、青いドレスの令嬢が私の右腕をまるで友人のように抱きつくように絡みついてきた。
「ペスカ! こんなところに!
ステファン王子! 私もペスカと友達なんです!」
は?
私は右腕をしゅっと抜くと後退りした。
ヨシュアが私の様子を見て、手を伸ばして私を引き寄せてくれた。
「どうした?」
「さっき名前を聞かれたけど、お名前を教えて下さらなかった方なので、びっくりして」
マリアも私に寄り添うように頷いてくれる。
青いドレスの令嬢は顔を赤くして、私とマリアを睨んできた。
アリエスさんとキャロラインさんが来てくれたが、キャロラインさんがはっとして叫んだ。
「エレイン様!」
「キャロライン……、この子達、なんなの?
私がせっかく声を掛けてあげてるのに!!」
「申し訳ありません。マリアとペスカはいつも学校にいるので貴族の事情に詳しくなくて。
バランシェ伯爵令嬢のエレイン様よ」
伯爵令嬢か!
ステファン王子狙いなのかな?
キャロラインさんがマリアの姉と認識して、無理なこと言わないといいけど。
なんだか一方的な女の戦いみたいな感じがする。エレイン嬢の方が強そうというか、偉そう。
キャロラインさんもステファン王子狙いだっけ?
キャロラインさんは軽く会釈して「それでは失礼します」と呟き、エレイン嬢から視線を外し、アーサー王子殿下を見てそちらに立ち去ろうとした。
エレイン嬢と張り合うのはやめよと思ったのかな?
エレイン嬢がムッというかカッの方が近いかな。
腰のあたりから扇子を取り出した。金属製の細いもの。
私達は今回持ってないけれど、暑くなってくると持ち歩く令嬢が増える。
後ろを向いているキャロラインさんの髪飾り、つまり私の義母であるシエナ様の髪飾りを下から跳ね上げるように、握りしめた扇子で叩いてきた。
「やめて!!」
私は叫んだ。
わざとだ、キャロラインさんに当たらないようにわざと髪飾りを狙って!!
櫛のように髪に刺さっている髪飾りはキャロラインさんの髪から外れ、打ち上げられたみたいになる。
私は人を避けながら夢中で走り、落下地点へ飛び込むようにキャッチした。
身体が震える。良かった、落とさなくて……。
身体がふらふら揺れてすぐそばの人にぶつかってしまうと抱きかかえられた。
「見事なキャッチだったな」
ア、アーサー第1王子殿下……。
私は手の中の髪飾りを見る。
真珠のひとつに大きな傷ができていて……。
私は……、泣き出してしまった。
アーサー王子殿下がギョッとしているが、そんなことより……。
「ごめんなさい……、お母様、お父様……」
溢れてくる涙を止めることができなかった。
読んで下さり、ありがとうございます。
エアコン、14日に取りつけに来てくれる予定!
ちょっと涼しいので何とか生き延びられそうです。
壊れたのは寝室のエアコンでして……。居間のエアコンは生きているので家族で集合して過ごしてます。涼しいのに精神的に暑苦しい。