127 王子と令嬢
どうぞよろしくお願いします。
「はい」
私がそう返事すると少し間があり、その青いドレスで茶色の髪の令嬢は少しムッとしたように言った。
「だから?」
ん? 何を聞かれているんだ?
マリアが会釈してから言った。
「はい、私達は学校で、学校では違う名を名乗られていますが第4王子殿下と同級の友人です」
「あなた、名は?」
「マリア・モリソンです」
「モリソン……商会の? 確か男爵家?」
「はい、モリソン男爵家でモリソン商会の三女マリアです」
「そう、で、あなたは?」
私が名乗ろうとしたら、マリアが目で制してきて紹介してくれた。
「ペスカです。ペスカ・ハウアー男爵令嬢です。
私達は学校の4年生で、13歳です」
「そう、ふたりとも男爵令嬢なのね……」
少しほっとしたというか、興味がなくなったというか、その令嬢はついっと反対を向くとすたすた行ってしまった。
名前を聞いたのに、名乗らないとは!?
マリアもちょっと驚いていた。
「高位貴族だと名乗らなくていい、とか?」
私の問いかけに「うーん、普通はないけどね。男爵家ならいいやと思われたのかしら……」と、マリアはちょっと肩を竦めるようにして答えてくれた。
まあ、名前がわからないから、誰とかわかんないし、なんも言えないな。
最終的にこの前パーティーがあった大広間に出た。
最初のグループもそこにいておしゃべりしている感じだ。
これは合流せよ! ということか。
こっちのグループの令嬢達が浮足立って第2王子の方へ向かって行った。
さっきの青ドレスの令嬢もその中にいる。
私とマリアはそんな令嬢達から離れ、ゆっくりと大広間の真ん中へ歩みを進めた。
「わー! こうして飾りとか立食のテーブルとかないと、本当に広い!!」
私は天井を見上げてくるっと回った。
「ふふっ、あのパーティー、楽しかったわね。
途中で抜け出してエースやフレイに会いに行ったり……」
「うん、そうだね。楽しかった!
ローストビーフとかもおいしかったし!」
そこへヨシュアとアベル王子殿下が来た。
ヨシュアが紹介してくれる。
「マリアとペスカだね。
ジョシュアと同級生ということは13歳?」
「今年の誕生日が来れば14歳になります」
マリアがにこやかに返事をしている。
「学校生だとロマネスとも親しい?」
「はい、ロマネス王弟殿下とパトリシア侯爵令嬢は先輩になります」
「そうか、学校、楽しそうだな。
私はジョブ持ちでなかったから……」
王子の中でひとりだけジョブ持ちでなかったこと、やっぱり気にしてしまうよね。
でも、王子だからって特別扱いされないのが学校だから。
「ロマネスが、今度、王城に招こうと言っていたのは君達だろう。
会えるのを楽しみにしているよ」
アベル王子殿下はそう言って周囲を見回す。
第1王子と第2王子に群がる令嬢達を見て苦笑した。
「まあ、私も兄達はなんて王子王子しているのかと思うよ」
「でも、僕達の方が気は楽だと思わないか?」
ヨシュアが微笑んで言った。
「ペスカ!」
突然、人の群れの方から私を呼ぶ声。
ステファン王子の声かな?
読んで下さり、ありがとうございます。