1 助けに来てくれた!
なんとなくヨーロッパ中世風で魔法がありの世界。
そこに転生したぺスカ(聖女)とフレイ(竜騎士)のお話です。
どうぞよろしくお願いします。
「お前、俺のことずっと避けてただろ!」
私は信じられない気持ちでいっぱいになりながら、私を片手で抱きしめるように捕まえているフレイの胸の辺りを両手で押しながら、フレイの顔を凝視していた。
避けたくて避けてたわけじゃない。
ずっとずっと好きだった。
この世界に転生してフレイが一護じゃないかと気づいた時から。
一護の時から大好きだった。
だから、今生では関わらないようにしないといけない。
私と関わったら……、また、一護が、フレイが命を落とすことになるかもしれないと不安で心配で……。
「放して……」
私は呟いたが、フレイはニヤリと笑った。
「ここで放していいのか?」
私は下を見た。
血の気が引く。
そうだった……。
ここは教会の、この王都で一番高い塔の上のさらに屋根の上だった……。
フレイが抱えてくれてるから、安定しているけど、ひとりだったら……。
「あ……」
私はフレイに縋りつくみたいに身体を寄せてしまう。
フレイが満足そうな顔をしたのがちょっと癪に障るけど、たぶん私の顔は顔面蒼白だろう。
「わかったか、この状況」
私はこくこく頷いた。
「……愛してるよ、ぺスカ」
チュッという音とともに頭に温かい感触がして……。
えっ?
フレイ、私の頭にキスした!?
びっくりして「ええっ?」と言ってしまう。
「ぺスカのこと、本当に愛してなきゃ、こんなところまで来ないよ!」
少しムッとした声が頭の上から降ってくる。
「ええっ?
私と……、フレイ、そんなに……」
そう、今生は私がフレイと深く関わるのを避けてたから……。
同郷で、同じ学校で、友人のひとりだけど……、そこまで親しくは……ならないようにしてた。
「オーバ! こっちだ!」
フレイが大きな声で呼んでるのは、朝焼けの空の中を悠々と飛んできた赤いフレイムドラゴン。
竜騎士であるフレイのドラゴンだ。
「きれい……」
私は呟いてしまった。
この光景、私は一生忘れないだろう。
そうだ、フレイは竜騎士になって王都の騎士団にいたはず。
「私を逃がしたら、逆賊になっちゃうよ!?」
「国を出ちまえば、そんなの無かったことになる。
なんだ、ぺスカはこの国にそんなにいたいのか?」
「まさか! 逃げたかったけど……、フレイ……」
フレイが笑った。
「ぺスカが幸せになれればいい。
でも、ここにいたら幸せになれない。
なら、俺が幸せにする」
フレイが私を抱えたまま跳躍する。
空中にふわっと浮いて、落ちる!! と思ったら、ドラゴンの背の上にいて、朝の風を切って飛んでいた。
読んで下さり、ありがとうございます。
さて、このラストより少し前の幸せそうな1話を目指して、この世界にぺスカが転生してきた話が始まります。
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