不法侵入していました (2)
※前回の最後に付け足しをさせて頂いたので、そちらからご覧ください。
声を発した人物は...夢の中の私に、とてもよく似ていた。
あ、でも目の色は違う。
そんなことを考えると同時に赤髪さんが私に向けた剣を下ろす。
「ミリア、これは君が気にするようなことではない。」
ミリア?名前まで可愛い...。
というか...今、金髪さんこれって言いました!?
「で、でも...それなら、王宮に知らない人が居るってことですか...?」
「王宮!?」
嘘でしょ...!?本当にここ王宮だったの?
いや、そもそも王宮とは!?
まさか、今映画の撮影中か何か?でも、こんな地味な容姿をしている自分がスカウトされるはずないし...、そもそも記憶がない!!
そんなことを考えていると、皆さんからの視線に気づく。
...大きい声、出し過ぎたかな...。
「殿下、やはりこの方はこちらの方で保護された方がよろしいかと。」
青髪さん、優しい...!!
この人は...どこかで見たことがあるような...。
「何を言ってる!!こんな怪しい奴、今この場で切った方がいいだろう!こんな奴、今まで見たことがない!敵国のスパイかもしれないんだぞ!!」
きゃー!!
赤髪騎士さん怖すぎる...!!
スパイじゃないです!というか、そんな私器用じゃない...!!
「王宮の中で迷ってしまった隣国の来賓の方かもしれないですか。」
青髪さん...!
もう嘘でも良いから、赤髪さんを説得してーー!!
「...そういう早とちりなところ、直した方がいいと思いますよ、レクター様。」
あ、青髪さん?
さっきの雰囲気はどこに...
待って、なんかだんだん雰囲気が不穏に......。
「...何だと?」
何このピリッとした空気...!
気まずい!!
「み、皆さん、落ち着いて...」
「アメリア嬢...」
アメリア?
あ、ミリアってニックネームなのか...。
ってそんな事より!
「あ、あの!本当に私、ここが...お、王宮っていうこと知らなかったんです...!どうか今回だけは許して頂けないでしょうか...!!」
こうなったら、もう命乞いしかない。
全力で頭を下げる。ついでに立つタイミングも忘れて座りっぱなしなので、土下座状態に似ている。
その時、誰かの靴が動いた。
今見える視線だと(ほぼ床)...この靴は、...メガネさん、?
「ということで、一旦この話は保留に「ふざけるな!!!騎士としての尊厳を侮辱され__罪人を神聖なる王宮に入らせる訳にはいかない!」
そう言って、剣を構える赤髪さん。
いや、今バッチリ“尊厳を侮辱された”とか言いそうになりましたよね!?
それ青髪騎士さんが悪いじゃないですか!?
私に一体、何の罪が...!
「...!!」
赤髪さんが剣を振り翳す。
「レクター!!」
し、しぬ...!?
待って、嘘でしょ!?私まだ、貯金貯めてる最中どころか、今月のお給料もらってない!
外食も最近全然行っていないし、やりたいことやってない...!!
だって...__まだ、彼に会えていない。
ぎゅっと目を瞑ったその時...__
「へ、?な、何これ...!?」
か、体が光ってる..??
「...!?おい、どうなっているんだ...!!」
いや、こっちが訊きたいよ!!
自分の胸の辺りに何かが溜まっているような感覚。
“それ”を何とか抑えているけど、どんどん溢れ出てくる。
このままだと...爆発する...!!
「......へ、?」
白い光が私を囲っている。
霧...にしては、少し濃い...。
なんかもう意味分からない...!!
「な、なんだこれは...!!」
「この魔力は...。」
わっ、急に霧(?)が晴れてきた...!?
すぐに赤髪さんが見える。
「なっ、貴様...!何をした!」
こっちのセリフだって!!
「お前...やはり、敵国のスパイだろう!」
「......はぁ...。」
お隣を見てみなさいよ。ため息ついてるよ?
「だから、さっきから知らないって言ってるじゃないですか...!」
「黙れ!」
今度こそは許しはしないという顔で剣を持ち構える、その人。
(もしかしたら、さっきのがもう一回...!)
振りかざされる剣が自分の真上にきた時に願った。
けれど、その剣は振りかざさることはなかった。
「いい加減にしてください、レクター様。」