表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

私の人生と長い夢 (1)

大学に入って少し経った頃、原因不明の病気にかかり、二年ほど目が覚めなかったという。

しかし、確かに「生きていた」ため、見捨てられはしなかった。


目覚めた時には、厄介者扱いだけど。

22歳の新人会社員。まだ社会には適応できていない。


小さい会社だからなのか、人手不足なのか、大体毎日が残業で帰りが遅くなる。


「はぁ...明日は早く帰りたいなぁ...」


時計すらも見たくない。

いや、見れなかったのだろうか。


信号は緑色をしているのに、横を振り向くと、なぜか真っ白な光を放つ鉄の塊が私に向かってきているのだから。






***




夢の中での私は、どこかの国の公爵令嬢だった。名前は、セシリア・イラリー。歳は幼く、6歳程度。

冷静で何事にも動じない少女。いつも手に持っているのは何冊かの参考書だ。


彼女(わたし)はこの歳で、魔法を使いこなせるまでになっていたので、第一王子の婚約者候補から正式な婚約者に決まり、将来を期待されていた。しかも、王子にもかなり気に入られている。



『ねーえ、リアー!なんの本よんでるのー?』


あの時の私は、付いてくる第一王子が鬱陶しくて、素っ気ない態度をとってたっけ。


『...魔法発生原理の推測。』


『へ、へー...もちろん意味はわかるよ!ただ、〝げんり〟が...ちょっとわからないだけで!』


『それを意味が分からないって言うのよ』


『リアものしりー!』


両親は私の意思を尊重してくれる人たちだけど、それはあくまで〝家族〟だからだ。

彼が赤の他人である私を褒める意味が分からなかった。

私は公爵令嬢で、彼はこの国の王子。これくらいの年齢の婚約者なら、最低限な会話でいいはずなのに。



『なんで、話しかけるの。』


気になって訊いたことがある。


答えない彼を見て、訂正しようとしたけど、彼は答えた。



『...やっぱり、__『リアがだいすきだから!!』


満面の笑みで。

それに少し胸が高鳴ったのはきっと、新しい人の感情を知れたという知識向上の喜びだ。



...そう思い込まないと、意識しているポーカーフェイスが呆気なく崩れてしまうから。






随分前には、弟も生まれている。

2歳違いの姉弟(きょうだい)だ。私と同じ、濃いめである水色の瞳をもっている。髪色や瞳の色は父譲りだ。


自分の容姿といったら、彼が頭の中をちらつく。



『ねえ、ねえ、リア!僕たちのかみ色とか目の色って似てると思わないっ?』


『それ、外で言ってないよね?...ここだけの話しにしてね。』


あらぬ誤解を生むに決まってる。


『?うん!』


ていうか...


『...全然似てないわ。』


『え!?...リアにはそう見えるんだ...』


私達の容姿は12色で答えると同じ色になるが、かすかな...いやかなり色の特徴が違う。



『...あなたの瞳や髪色のほうが、ずっと澄んでいてきれいよ。』


『...!...えへへ、ありがとぉ、...』


...〝きれい〟だけ受け取ったわね。


『きれい...きれいかぁ...ふふっ』



そんなふにゃっとした笑顔を見ると、将来この国を支えていけるか心配になる。


...まあ、私がいるから大丈夫だけど。



そう、信じていたのに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ