柏田の夜
柏田はベッドの上に寝転んだまま、ぼんやりと天井を見つめた。
隣では美咲がシーツにくるまり、スマホをいじっている。反対側では有紗がシャワーを浴びている音がする。部屋の空気は甘ったるく、心地よい倦怠感が漂っていた。
「ふふっ、なんか最高すぎるんだけど」
美咲がくすくす笑いながら、スマホの画面を柏田に見せる。そこには、さっき有紗が送ったメッセージが映っていた。
『やっぱり美咲たちの部屋で楽しむことにするね。勉強頑張って』
柏田はそれを見て、薄く笑った。
「あいつ、絶対ショック受けてるだろうな」
「ねぇ、吉野くんってさ、なんか可哀想すぎるよね」
美咲が悪戯っぽく笑う。柏田は肩をすくめた。
「まあ、あいつはまだガキってことだよ」
美咲は「意地悪~」と言いながらも、楽しそうに笑っている。
柏田にとって、こういう展開は別に珍しくもなかった。女の子たちと飲んで、いい雰囲気になったら、そのままホテルへ向かう。それが“普通”になっていた。
最初から、今夜の流れは決まっていたようなものだった。美咲も有紗も、最初から「柏田か小早川と楽しむ気」で来ていた。小早川が別の子と部屋に行ったから、自分がこの二人を相手にする形になった。それだけのことだ。
吉野のことは、最初から“おまけ”だった。
(あいつ、ちゃんと帰れるかな)
一瞬だけそんなことを思ったが、別に気にするほどのことでもない。
シャワーの音が止まり、浴室のドアが開いた。有紗がバスタオルを巻いた姿で出てくる。
思いっきり楽しむぞ。柏田は決意を新たに有紗をベッドに招き入れた。