期待と絶望
時間が経つにつれ、吉野の緊張は別のものに変わりつつあった。
(遅いな……)
スマホの画面を見る。もう10分以上が経っている。有紗がコンドームを取りに行ってから、まだ戻ってこない。
(何かあったのか……?)
いや、そんなわけはない。ただ、向こうの部屋で少し話し込んでいるだけかもしれない。吉野は自分にそう言い聞かせ、何度もスマホの画面を点けたり消したりした。
それでも、時間は過ぎていく。
(まさか……)
嫌な予感が、じわじわと胸の奥から広がっていく。
そして、ついにスマホが鳴った。
『やっぱり美咲たちの部屋で楽しむことにするね。勉強頑張って』
目を疑った。意味を理解するのに数秒かかった。
(は……?)
脳内が一気に真っ白になり、そのあと怒涛のように感情が押し寄せてきた。
(どういうことだよ……!?)
指が震えた。もう一度、何かの間違いではないかと画面を確認する。しかし、文章は変わらない。
『勉強頑張って』
まるで励ましの言葉のように締めくくられたメッセージが、残酷すぎた。
(いや、ちょっと待てよ……)
部屋の外に出ようかと思った。しかし、何をしに行く?「俺も入れてくれ」とでも言うのか? そんなことが許されるはずがない。
ふと、隣の部屋の方に意識を向ける。
向こうでは、柏田が、美咲と有紗を独り占めしているのか?
想像してしまった。楽しげな笑い声。もつれ合う影。自分だけが締め出され、ただ虚しく時間を潰すしかない、この状況。
「クソッ……」
吉野はスマホをベッドの上に放り投げた。悔しさで胸が締めつけられる。
さっきまで昂っていた気持ちは、行き場をなくして宙に浮いていた。ラブホテルの部屋には、吉野一人。
むなしい静寂だけが、彼を包み込んでいた。




