合コンの夜
週末の夜、カジュアルなレストランで、吉野、柏田、小早川の3人は、相手の専門学校生3人と向かい合って座っていた。
「浪人してるんだ? すごいね、頑張ってるんだね!」
ショートカットの明るい子が目を輝かせながら言った。吉野は少し驚いた。今まで浪人していることに対して後ろめたさしかなかったのに、こうして尊敬の眼差しを向けられるのは悪い気がしない。
「いや、まぁ……。なんとか……」
もごもごと返事をしながらも、彼女たちの興味が自分に向いていることが新鮮だった。柏田と小早川のフォローもあり、会話は弾んでいた。彼らは大学で鍛えられたのか、女の子たちを巧みに笑わせ、時折吉野にも話を振ってくれる。そのおかげで、吉野も緊張しながらも話に参加できた。
料理とお酒が進むにつれ、店内の照明が柔らかく感じられた。テーブルの上にはカクテルのグラスが並び、笑い声が絶えなかった。こういう雰囲気は初めてだったが、悪くない。むしろ楽しい。
そして、一次会が終わるころ、柏田がさりげなく切り出した。
「このあと、どうする?」
「んー、どうしよっか?」
女の子たちが顔を見合わせる。特に反対する様子もない。すでにいい感じに打ち解けていたし、空気は自然と次の展開へと流れていった。
「せっかくだし……。みんなで行っちゃう?」
誰が言い出したのかは分からなかったが、その一言で決まった。
吉野は心臓が高鳴るのを感じた。まさか、自分がこんな展開に巻き込まれる日が来るなんて。
繁華街を歩き、ネオンの輝くラブホテル街へと向かう。エントランスの自動ドアが開くと、受付に並ぶ部屋のパネルが目に入った。どの部屋もそれぞれ雰囲気が違う。スタイリッシュなもの、和風のもの、カラフルなデザインのもの。
「じゃあ、ここでカップル決める?」
柏田がニヤリと笑う。自然な流れの中で、三組のペアができた。吉野の相手は有紗になった。
有紗は、細身でスタイルが良く、セミロングの髪が印象的な子だった。店内でも時折目が合っていた気がする。吉野はドキドキしながら、彼女と並んでエレベーターに乗った。扉が閉まり、二人きりになる。
(俺、本当にこれから……?)
現実感が追いつかないまま、エレベーターは静かに上がっていった。