決意
吉野は、廊下に一人取り残された。
さっきまで隣にいた二人の女性は、柏田とともに部屋の奥へと消えていった。
バタン。
扉が閉まる音が、やけに静かな廊下に響く。
手のひらを開いたり握ったりする。そこに残っているはずのぬくもりは、もうどこにもなかった。
「はは……」
乾いた笑いが漏れる。
ついさっきまで、最高の気分だった。まさかの逆転劇に舞い上がり、「俺の時代が来た!」なんて本気で思っていた。
なのに、結局、今までと何も変わらない自分がいる。
吉野はふらふらと自販機の前へと戻った。
柏田が買いかけたまま放置したジュースが、取り出し口にぽつんと残っていた。無意識のうちにそれを手に取り、プルタブを引いた。
プシュッ。炭酸の弾ける音。ゴクリと喉を鳴らして飲む。口の中に広がるのは、やけに苦い味がするコーラだった。
(帰るか……)
飲みかけの缶を手に持ったまま、吉野はロビーへ向かうエレベーターに歩き出す。
もはや、もう何も期待していない。
エレベーターに乗り、ボタンを押す。
今度こそ、ちゃんと「下へ」向かうボタンを。
ゆっくりと降下していく箱の中で、吉野は目を閉じた。
(今年こそ、絶対、大学に受かる)
心に浮かんだのは、女と楽しい時間を過ごす空想の中の自分ではなく、ただひたすらに机に向かう現実世界の自分の姿だった。




