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浪人生の現実  作者: 平末さくら


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天国への入り口

 エレベーターの扉が開き、吉野は二人の女性とともに廊下へと足を踏み出した。心臓がバクバクする。まさかこんな展開があるなんて……!


「ちょっと喉乾いちゃったね」


 ショートカットの女性が呟くと、ロングヘアの女性が頷いた。


「うん、何か飲み物買っていこうか」


「じゃあ、あっちの自販機コーナー寄ろうよ」


 女性たちに誘導され、吉野は足を向けた。


(これ、本当に夢みたいだ……)


 さっきまで惨めな気持ちで帰ろうとしていたのに、今はまるで主人公のような気分だった。逆転ホームランもいいところだ。


 しかし、次の瞬間、彼の目は驚きで見開かれた。


「あっ……?」


 自販機の前に立っていたのは、柏田だった。


「えっ、吉野!?」


 柏田がジュースのボタンを押そうとしていた手を止め、こちらを見たまま固まっている。その視線は、明らかに吉野の隣にいる二人の女性に向けられていた。


「誰? そちらの人たちは」


 驚愕の表情を浮かべる柏田に、吉野はゆっくりと笑みを浮かべた。


「いやあ、ちょっとね……。こういう流れになってさ」


 言葉を濁しつつも、得意げな顔を隠せない。吉野は柏田の驚く様子が気持ちよかった。


(今までお前ばっかりいい思いしてたけどな……。今度は俺の番だ!)


 柏田はジュースを取り出すのも忘れ、二人の女性をまじまじと見つめた。


「まじかよ……。吉野、すげえな……」


 吉野の優越感は最高潮に達した。


 しかし、その瞬間だった。


「あの……。イケメンですね」


 ショートの女性が、突然柏田に向かって微笑んだ。


「え?」


「うん、すごくタイプかも」


 ロングヘアの女性も柏田に興味を示し始める。


 吉野の胸に、嫌な予感が走った。


「いやいや、こいつは部屋で女が待ってるんだ。ジュースを買いに来ただろ?」


 焦って言葉を挟むが、女性たちはクスクスと笑う。


「うーんと……。実はね、私たち二人で愛し合うところを男の人に見てもらうのが好きなんです」


「だから、せっかくならカッコいい人に見てもらいたいなって……」


「よかったら、どうですか?」


「えっ、俺?」


 柏田が驚く。


「そう。お願いします」


 女性たちが揃って頭を下げる。


「へえ……。なるほど……」


 柏田は状況をすぐに理解したのか、口元を緩めて肩をすくめた。


「まあ、そういうことなら……。断る理由はないな」


 そして、柏田は軽く吉野の肩を叩いた。


「悪いな、吉野。そういうことらしい」


「えっ……」


 女性たちは柏田の腕を取り、そのまま笑いながら廊下を歩いていく。


 吉野は、信じられない気持ちでその光景を見つめることしかできなかった。


(そんなのって……。そんなのって、アリかよ!?)


 柏田は振り返りもせずに彼女たちと部屋の中へ消えていった。


 吉野は、ただその背中を見送ることしかできなかった。

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