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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
8/86

4、正しい連休の過ごし方 <Side 愛良>(前編)



東京駅から新幹線が出発する。


あたしは新幹線の窓にべったりと張り付いて、その景色を眺めていた。だって、新幹線ってあまり乗ったことないし。



「愛良ちゃん、京都はどこに行くか決めた?」



里奈お姉さんが京都のガイドブックを片手に尋ねてくる。


お姉さんもあたしに負けず劣らずに、うきうきしてる。そういえば、京都に行きたいって言ってたのは里奈お姉さんだって、和馬お兄ちゃんが言ってたっけ。



「う~んとね、金色のお寺を見たいかなぁ~。あとね、清水寺!!」


「ふふ、京都観光の王道ね。じゃぁ、和馬に案内してもらってね」


「え?!里奈お姉さんたちは?!」



新幹線の中で昼食を食べることになっていたから、あたしたちはそれぞれの駅弁を広げながら話をしている。


あたしは思わず手を止めて、お姉さんを仰ぎ見た。


里奈お姉さんはにこっと優しく笑ってあたしに言った。




「京都に着いたらね、あたしと宗次、愛良ちゃんと和馬で別行動をとることになっているの」


「ん?俺と宗次で行動するんだろ?」


お弁当を頬張りながら、お兄ちゃんがそんなことを言ってくる。


「俺と宗次で行動するから、里奈は愛良と京都観光すればいいんじゃないか?」



もう一度そんなことを繰り返して言いなおした和馬お兄ちゃんを、あたしは信じられない思いで見返した。






4、正しい連休の過ごし方◎   <Side 愛良>(前編)








今日は、ゴールデンウィークの初日。


いつもは家でのんびりすることも多い連休だけど、今年は和馬お兄ちゃんたちが京都に旅行に行くっていうので、一緒に連れてきてもらえることになった!!


初日に京都の観光をして、次の日は大阪のテーマパーク!!


朝から晩までびっしりと遊んで、次の日の朝に東京に帰る、というスケジュール。



この話を和馬お兄ちゃんから聞いた次の日、あたしはすぐにしずちゃんに報告した。


しずちゃんもびっくりしてたけど、すぐにうらやましがってた。


だって、あたしのクラスで、大阪のテーマパークに行ったことある子なんて、ほんの少しだけ。


そこへ和馬お兄ちゃんと一緒に行って遊べるんだもん。


あたしは二重にうれしくて有頂天になって、旅行の準備をした。






そして今、その京都に向かう新幹線の中で、お兄ちゃんがとんでもないことを言った。


「お兄ちゃん、あたしと一緒に観光しないの?!」


この世の絶望だ、とでも言いたそうなあたしの表情に、里奈お姉さんがくすくす笑いながら首を横に振った。


「そんなことないわ。和馬は愛良ちゃんと一緒に観光するのよ」


「里奈お姉さんは一緒じゃないの?」


「私が行きたいところと、愛良ちゃんが行きたいところは少し違うからね」


「あたしは別に、里奈お姉さんが行きたい所でいいよ?」


京都はよくわからないし。


せっかくなら、みんなで行動したほうが楽しい気がするし。


「愛良ちゃんは優しいわね。でも、私は宗次と京都のデートを楽しみたいから、ふたりでいてもいいかな?」


「あ、そっか。そうだよね!!うん、じゃぁ、あたしも和馬お兄ちゃんとデートする!!」


「こら、里奈!!勝手にそんなこと決めて・・・・・・」


「いいじゃない?私と宗次に任せてよ」


和馬お兄ちゃんが血相を変えてなにか言いかけたけど、里奈お姉さんがそれを遮った。


任せる?なにを?




「大丈夫、危ないことなんてないんだし。本当に、宗次と嵐山とか色々観光もしてみたいしね」


「そうだぞ~!!明日はゆっくりデートなんてできないんだから、今日くらいゆっくりデートさせろ~」


宗次お兄さんまで和馬お兄ちゃんに抗議をはじめて、お兄ちゃんは困った顔をして頭を掻いた。


「・・・俺の問題なのに、ふたりに任せっぱなしなのも・・・」


「今更なに水臭いこと言ってるんだよ。それに、俺たちだってもう『当事者』だぜ?」


にやっと宗次お兄さんが笑えば、和馬お兄ちゃんも安心したように笑った。


こんなとき、このふたりは、本当に親友なんだなぁって思う。


「・・・わかった。じゃぁ、宗次と里奈に任せるよ」


「OK、任された」




結局なにを任したのかさっぱりわからなかったけど、あたしは和馬お兄ちゃんと京都デートができることだけはわかった。



新幹線での昼食も終わると、里奈お姉さんと宗次お兄さんは、あたしと和馬お兄ちゃんの生活が気になるみたいで、色々聞いてきた。


なかでも、最近は一緒にご飯を食べるようになってきたことへの変化が気になるみたい。


あたしはすっごくうれしいけどね!!




「ふたりでいるときってどんな話をするの?」


宗次お兄さんが和馬お兄ちゃんをからかっている間に、里奈お姉さんが聞いてくる。


「う~んとね、学校の話、とかかな」


「学校、楽しい?愛良ちゃんは友達が多そうね」


「楽しいけど、でも、男子とかはまだまだガキね」


「あら、愛良ちゃんはおとなね。男子のどんなところがガキ、なのかしら?」


くすくす、と里奈お姉さんは笑いながらあたしに尋ねてくる。


あたしもくすり、と笑ってから、それに答えた。


「怪盗夜叉ごっことかしているときとか、本当にガキだよ」


「そ、そうなんだ・・・」


なぜか、里奈お姉さんの笑顔が引き攣った。宗次お兄さんと和馬お兄ちゃんもふざけるのをぴたりとやめて、なぜかあたしの方を向く。


「か、怪盗夜叉ごっこなんてあるのか・・・?」


宗次お兄さんが笑いをこらえながら、和馬お兄ちゃんとあたしを交互に見比べる。お兄ちゃんはなにかを悟ったかのような、諦めた表情を浮かべて、肩をすくめた。


「あるらしいぜ。怪盗夜叉は小学生のアイドルなわけだ。・・・愛良も好きなんだろ?」


「あたしも怪盗夜叉は好きだけど、でもそれだけじゃないもん。あたしは、弟子にしてもらうんだもん!!」


「で、弟子?!」



宗次お兄さんがびっくりしたようにあたしを見返した。


そんなに変なこと言ってるかなぁ・・・。



「うん、怪盗夜叉の弟子にしてもらうの」


「こいつ、初めて会ったときからずっとそう言ってるんだ」


和馬お兄ちゃんが呆れたように宗次お兄さんに耳打ちしてる。聞こえてるぞ。



「弟子って・・・・・・おいおい・・・」


「愛良ちゃんは、なんで怪盗夜叉の弟子になりたいの?」


「う~んとね・・・」


里奈お姉さんが優しく聞いてくるけど、それにこたえていいのか、あたしは迷ってしまう。


だって、これはあたしの固い決意。


これを最初に告げるのは、怪盗夜叉でありたいと思っていたから。


怪盗夜叉に弟子にしてくださいってお願いするときに、あたしの決意を言うために。


あたしが迷っている間に、里奈お姉さんはさらにあたしに優しく言葉をかけてくる。


「ねぇ、愛良ちゃん。怪盗夜叉が颯爽としていて格好いいのはわかるわ。憧れている人も多いでしょうね。・・・でもね、怪盗夜叉も、所詮は泥棒。犯罪者なのよ」




里奈お姉さんの言葉がひどく重く暗くなる。


なぜか、宗次お兄さんもさっきのような明るい表情ではなくなって、強張っている。


和馬お兄ちゃんも、少し悲しそうにあたしと里奈お姉さんを見ている。



「怪盗夜叉の弟子になったら、愛良ちゃんは犯罪者の弟子になるのよ?嫌でしょう?」


「でも、もう怪盗夜叉にしか頼めないんだもん!!」


本気であたしが夜叉の弟子になることを止めようとしている里奈お姉さんたちに、あたしは本気でそれに抵抗する。



「頼む?なにをだ?」


和馬お兄ちゃんが、じっとあたしを見つめてくる。


宗次お兄さんもなぜか思いつめたような目で、あたしを見ている。



どうして、3人とも、そんな表情をするんだろう。



「・・・取り返したいから」


3人の様子がいつもと違うから、つい、あたしは言ってしまった。


「<エーゲ海のエメラルド>を取り返したいから、怪盗夜叉の弟子になるの」


「・・・<エーゲ海のエメラルド>?」


「うん。パパとママが大事にしていた、絵」


これから楽しい京都旅行への新幹線の中なのに、なぜかあたしたちのまわりだけ、空気が重くなっている。




そして、あたしが<エーゲ海のエメラルド>と言ったら、すぐに宗次お兄さんと里奈お姉さんが顔を見合わせた。


なにか、知っているのかな?


「里奈お姉さん、<エーゲ海のエメラルド>のこと、なにか知ってる?」


「ううん、ごめんね、なにも・・・。・・・その絵ってずいぶん前の絵なのかしら?」


「わかんない・・・。ただ、パパとママが大事にしていたってことしか・・・」


「・・・<エメラルド>・・・か・・・」


和馬お兄ちゃんがぽつりとつぶやく。


ただの<エメラルド>じゃなくて<エーゲ海のエメラルド>だってば。




「・・・宗次」


「わかってる。あとで報告できるようにするから」


和馬お兄ちゃんが何かを言う前に、宗次お兄さんが真剣な顔でうなずいた。


里奈お姉さんもそんなふたりを見て、真剣な表情で小さくうなずいてる。



「でも愛良ちゃん、取り返したいって・・・誰から?」


「・・・それは怪盗夜叉にしか、教えない」


ここまで喋っちゃったことも失態なんだから。


これ以上は怪盗夜叉に言うまでは秘密なんだから。


あたしのそんな決意がわかったのか、里奈お姉さんはさっきみたいに優しく笑ってあたしの頭をなでてくれた。


「わかったわ。じゃぁ、早く夜叉に会えるといいわね」


「うん!!」




そんな話をしているうちに、新幹線のアナウンスがもうすぐ京都駅に到着することを伝えてきた。


いよいよ、あたしと和馬お兄ちゃんたちの旅が始まるんだ!!!








「じゃぁ、ホテルはこの京都駅のそばのあのホテルだから。あとで連絡するから」


改札を出ると、宗次お兄さんは慌ただしくそう言って、里奈お姉さんと一緒にどこかのバスに乗って行ってしまった。


その場に取り残されたあたしと和馬お兄ちゃんは、まずは荷物をロッカーに預けて、ガイドブックを広げた。


「で?愛良は金閣寺と清水寺に行ければいいのか?」


「どこでもいいよ!!和馬お兄ちゃんと一緒なら!!」


「・・・いや、別に俺も京都で行きたいとこなんかないし・・・」



苦笑しながらガイドブックを広げるお兄ちゃんのがんばりで、その日1日は京都市内をあちこち観光することができて、あたしは楽しかった。


あたしはまだ、お寺のよさとか歴史とかよくわからなかったし、和馬お兄ちゃんも興味がなかったみたいで、お寺は少しだけ巡って、あとはおいしいものを食べたり、人力車に乗ったりした。



時間を忘れちゃうくらい、あたしと和馬お兄ちゃんは一緒にはしゃぎながら京都観光を楽しんだ。




すっかり暗くなってきてから、和馬お兄ちゃんは初めて時計に目をやって驚いていた。


「やべ、もうこんな時間だ。そろそろホテルに行くぞ、愛良」


「は~い」


里奈お姉さんと宗次お兄さんとは今夜泊まるホテルで待ち合わせてる。

・・・そういえば、部屋割ってどうするのかなぁ・・・。



ホテルに着けば、すでに里奈お姉さんと宗次お兄さんが待ってた。


やっぱりあたしが気になった通り、ふたりはすぐに部屋割の相談を始めた。


里奈お姉さんは苦笑しながらあたしと一緒にふたりが結論を出すのをじっと待ってた。


その間に、あたしと和馬お兄ちゃんで京都のどこを観光したのか、とか聞いてくれたので、あたしは飽きることなくずっとしゃべってた。




当然といえば当然の結果で、部屋割は、里奈お姉さんと宗次お兄さん、あたしと和馬お兄ちゃんという形になった。



お兄ちゃんと同じ部屋なんて!!どうしよう~眠れないわ!!



・・・って思ったのに、夕飯を食べて、部屋について一休憩したら、なんだかすごく眠くなってきちゃった。


もう、今すぐ眠りたいくらいに。



「・・・どうした、愛良?眠いか?」


「う~・・・ん・・・」


本当はもっと和馬お兄ちゃんとおしゃべりとかしたいのに、体が重くて眠い。



「先に寝てていいぞ。ゆっくりぐっすり寝ればいい」



なぜか、お兄ちゃんはそう言って、あたしの頭を優しく撫でてくれた。あたしはその大きな手の温かさがまた気持ちよくて、とうとう重たい瞼に勝てずにそのまま眠りこんでしまった。



今日はすごく疲れたのかもしれない。


でも、和馬お兄ちゃんと一緒に京都デートができて、すっごく楽しかった。




明日の大阪のテーマパークも楽しみ!!また和馬お兄ちゃんと一緒にいられるし、そこでなら里奈お姉さんたちとも一緒にいられるのかな。



あたしは、明日への期待をいっぱいにふくらませて、眠りに着いた。






あぁ・・・ごめんなさい、長いです・・・(汗)

しかも長いくせに、旅行の中身はあまり書いてない(泣)京都とか、いっぱい書きたいのにぃ!!

やっと、愛良の探し物の名前は出ましたね。

これがどう和馬たちと絡んでいくものやらですね。

さて、次回はちょっぴり夜叉も出てきます。

愛良をあやす和馬たちが微笑ましい構図に思えます(笑)

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