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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
39/86

11、我が家のルール? <Side 愛良>




ロゼと一緒に暮らすようになってから10日が過ぎた。


ロゼはすごく自然にあたしたちの生活に溶け込んできた。それに、ロゼは絶対に和馬お兄ちゃんとあたしのラブラブな時間を邪魔したりもしなかった。



だから、あたしにとって、ロゼとの生活は居心地がいいものだった。



・・・毎日文句ばっか言ってる和馬お兄ちゃんはどうだか知らないけど。






11、我が家のルール?   <Side 愛良>








しとしとしと。


6月は梅雨の時期だから仕方ないにしても、毎日毎日雨ばっかりで嫌になっちゃう。


もうすぐ6月だって終わるのに。


そういえば、ずっと雨のせいか、怪盗夜叉も最近活躍してない。


久しぶりに明日予告があったのは、天気予報が晴れを示してるからじゃないかな。



「やっぱり、雨の日はやる気起きないもんね~」


教室の窓からぼんやりと外を眺めながら、あたしはつぶやいた。


今は、授業も終わって教室の掃除当番として掃除の最中。でも、今日はなんとなくやる気になれなくて、ぼんやりと窓の外を眺めた。


思えば、きっと運命に導かれたんだと思う!!



だって、ぼんやりと外を眺めたあたしの視線の先には、信じられない光景があったんだもん。



「・・・あれ?愛良ちゃん?」


しずちゃんがいつまでも外を見たままのあたしに不思議そうに話しかけてくる。あたしは目を見開いたまま、しずちゃんを手招いて窓の外を指さした。


「ねぇねぇ、あそこにいる人、あたしの幻とかじゃないよね?」


「え、なに言って・・・・・・あれ?あそこにいるのって和馬さん?」


「だよね、和馬お兄ちゃんだよね?!校門まで迎えに来てくれるなんてどうしたんだろ?!」


「なにかあったのかな?!」


「きっと放課後デートするためだよ!!ってことでしずちゃん、あとはよろしく!!」


「ちょっと、愛良ちゃん?!」



ダッシュで教室を飛び出たあたしの背中に、箒を押しつけられたしずちゃんが叫んでいたけど、あたしは振り向きもせずに校門に向かった。



ごめん、しずちゃん。この埋め合わせは絶対するから。





慌てて傘をさしながら、校門でじっと立ったままの状態でいる和馬お兄ちゃんに、あたしは駆け寄った。


「どうしたの、和馬お兄ちゃん?!」


「学校、終わったか?」


「・・・うん?終わったけど?」


「俺もちょうど授業が終わって帰るとこだったんだ」


なんだかお兄ちゃんらしくなく、煮え切らない言い方であたしに言う。


その間もずっと、しとしとと激しくはないけど、うっとおしい雨は降ってる。


「・・・もしかして、放課後デートに誘ってる?」


「ばーか」


にやっとあたしが笑って問いかければ、お兄ちゃんは自分の傘をあたしの傘にぶつけてきた。そのせいで、ちょっとだけ顔が雨に濡れた。


「買い物。付き合うよ。朝、飯を食おうとしたら米がなかったし」


「あ、そうかも、お米がもうないかも」




夕飯はみんなで食べるけど、朝食と昼食は各自で用意して食べること。


ロゼも一緒に暮らすようになって、そういうルールがあの家の中でできあがった。それでも、あたしが冷蔵庫の中の在庫チェックすることに変わりないんだけど。



ここのところ、ずっと雨だったから、お米を買いに行けなかった。厳密にいえば、いつもお米買うときは和馬お兄ちゃんと一緒に行くから、お兄ちゃんに言い忘れてたっていうのもあるけど。



「ほら、行くぞ」


すたすたとお兄ちゃんが歩き出す。こういうとき、手をつないだりしてくれたらうれしいのになぁ、なんて思いながら、あたしは付いていく。


「ねぇねぇ、それでもなんで、わざわざ迎えにきてくれたの?」


「・・・・・・家で、おまえが帰るのを待ってたら、ロゼもいるだろ?そしたら、買い物にもあいつがついてくるだろ?」


うんざり、といった表情で、お兄ちゃんはつぶやく。


別に、あたしから見る限り、和馬お兄ちゃんとロゼの関係はそんなに悪いようには見えない。ロゼはあたしに話しかけてくれるのと同じくらい、お兄ちゃんにも話しかけている。ま、それがからかっているように見えるかどうかは別問題で。


お兄ちゃんも面倒くさそうにしながらも、それには応じてる。


だから、なんでそんなに和馬お兄ちゃんがロゼのことを話すときにうんざりした表情を浮かべたのか、あたしにはわからない。



「和馬お兄ちゃん、ロゼのこと嫌いなの?」


「・・・・・・は?」


きょとん、とした顔で、お兄ちゃんがあたしに問い返してきた。あ、かわいい顔。


「嫌いっていうか・・・・・・そもそも好き嫌いという部類じゃないというか・・・」


「・・・そうなの?」


よくわかんないけど。


「言うなら、苦手、だな。あいつってつかみどころないし」


「あ~それはわかるかも」



ロゼは本当に謎な人。


10日間一緒に暮らしてるけど、あたしたちがいないときに何をしているのかさっぱりわからない。


そうかと思ったら、ふらっと出かけて2,3時間したら帰ってくる時もある。


一晩中家をあけてたときもある。


あのときはさすがに心配になって和馬お兄ちゃんに相談したけど、お兄ちゃんはあっさりと「どうせ仕事か何かだよ」と取り合ってくれなかった。



それで、次の日にロゼに聞いてみれば、


「仕事だったのよ。私の仕事、夜の方が多いから」


とにっこり笑って返された。



・・・和馬お兄ちゃんといい、ロゼといい、なんでみんな夜に仕事するんだろ・・・お給料いいのかな?



そういえば、ロゼは絶対に自分に与えられた部屋以外には入らない。


ロゼの部屋は二階のあたしの部屋の隣。


あたしの知る限り、ロゼは和馬お兄ちゃんの部屋にもあたしの部屋にも勝手に入ってくるようなことはしない。用があって扉を叩いてきても、部屋には入ってこない。


たぶん、和馬お兄ちゃんにもそうなんだと思う。



でも、ロゼはあたしを自分の部屋には招き入れてくれる。


引っ越してきたばかりだから仕方ないにしても、必要最低限しかない、ロゼの部屋。


殺風景なその部屋が、なんだか少し、寂しかった。






「ロゼと、うまくやってるか?」


心配そうに、和馬お兄ちゃんがあたしの顔を覗き込んできた。


「え?」


「突然ロゼと暮らすこと決めたからな。突然のことにおまえも驚いたかと思って」


「うん、大丈夫!!ロゼとは仲良しだよ!!」


「・・・ならいいけど。あまり、ふたりきりでいるなよ」


「なんで?」


「・・・・・・なんでも」


多くを語らないお兄ちゃんに、あたしは諦めて肩をすくめて頷いた。




その後も何気ない会話しながら、買い物をすませていく。


お兄ちゃんが荷物を全部持ってくれるから、あたしはいっぱい買い物ができてうれしいな!!


・・・でもなんか、これってホントに主婦みたい。


ってことは、奥さんってことよね?!じゃぁ、和馬お兄ちゃんの奥さんってことならいいか!!




「ひとりで百面相してるなよ」


いきなりなにかで頭を小突かれた。ひどい。


「なに、それ?」


「ん?お菓子。こういうの、愛良が好きそうかなと思ってお菓子コーナーから持ってきたけど」


お兄ちゃんが手に持っているのは、筒状のケースにスナック菓子が入ってるお菓子。


あたしは、スナック系のお菓子が大好き!!


対してお兄ちゃんはチョコ系のお菓子が好きなんだよね。別にあたしもチョコ系のお菓子だって好きだけど、時々ポテチとか食べたくなって、ひとりで食べてる時もある。


そういうの、お兄ちゃん見ててくれたんだ~!!


「うん、好き!!」


「あんまり食べすぎないようにしろよ」


苦笑しながら、そのお菓子もお兄ちゃんはかごに入れる。


あ。チョコのお菓子も入ってる。


あたしはくすくす笑いながら、会計をすますためにレジに並んだ。








スーパーからの帰り道で、あたしとお兄ちゃんは不思議な光景を見た。


それは、電気屋さんの店頭に並んだテレビの前にいた女の子。


その子が、まるでテレビに祈るみたいに真剣に手を組んでなにかを念じてた。


「なんだ、あれ?」


お兄ちゃんもその子に気付いたみたいで、興味津津。


一体何のテレビやってるんだろうね、ってふたりで不思議になって、その子が見てるテレビの前まで歩いて行った。


「・・・あ、夜叉だ」


思わず漏れた声に、その女の子がびっくりしてあたしたちを振り返り、そのまま走って行ってしまった。


「あ、ちょっと・・・・・・!!」


その子はあたしよりも1,2歳下くらいの子。



その子が見ていたテレビは、怪盗夜叉の特番みたいな番組。


彼女は、それに向かって祈ってたの?


「・・・なにしてたんだろうね、お兄ちゃん?」


「さぁな・・・・・・。怪盗夜叉信者か?」


怪訝そうに眉を寄せるお兄ちゃんに、そういえばあたしはまだお兄ちゃんに聞いていないことがあるのを思い出した。


「ねぇねぇ」


すでに家に向かって歩き始めたお兄ちゃんの背中にあたしは話しかける。


「なんだ?」


「和馬お兄ちゃんって、怪盗夜叉とお友達なんでしょ?」


「・・・・・・・・・は?」


「だって、夜叉が言ってたもん。お兄ちゃんと夜叉が友達って」


「・・・・・・いや、友達っていうかだな・・・・・・」


困ったようにお兄ちゃんは頭を掻く。


ふぅん。あたしには知られたくないんだ~。


ふてくされた顔をしたあたしを見たお兄ちゃんは、困ったように笑った後、あたしの頬をつねった。


「そんな顔するなよ。またロゼに俺がおまえをいじめたとか言われる」


「だってほんとだもん。教えてくれないし」


「俺だって、わかんないことだらけなんだよ。愛良に言えることなんてない」


ってお兄ちゃんは背中を向けて歩き始めながらそう言い加えた。



むむ、なんか、誤魔化された気がする。


でもきっと、今これ以上和馬お兄ちゃんに質問を続けても、はぐらかされるか、しつこいって怒られるかのどっちかだわ。




絶対またタイミングを見計らって、もっと問い詰めなくっちゃ!!





そんなことを考えながら家に着くと、先に玄関を開けたお兄ちゃんが固まってた。


「お兄ちゃん?どうした・・・・・・」


あたしも、言葉が詰まる。


すっごい匂い。


別に焦げ臭いとか、異臭がするってわけじゃないんだけど・・・・・・。


「・・・なんだ、この吐きそうな匂い・・・」


お兄ちゃんが苦悶の表情を浮かべながら、手で口と鼻をふさいでる。


うん、ちょっと気持ちわかる。


とにかく、甘い匂いが充満してる。


この甘い匂い、とにかく異常なほど甘い。



「・・・・・・ロゼか・・・」


とりあえず、キッチンに行きつくまでにある、至る所の窓という窓を開けながら、あたしとお兄ちゃんはキッチンに向かった。


そして、そこには予想を裏切らずに、ロゼが鼻歌を歌いながらケーキの仕上げをしていた。



「あら、おかえりなさい、プリンシア、ナイト」


「た、ただいま、ロゼ・・・・・・」


「ロゼ!!おまえ、キッチンに入るなって言っただろ?!」


ロゼの顔を見るなり早々、お兄ちゃんはロゼを叱りつける。



じつは、ロゼはお兄ちゃんによって、キッチン進入禁止令が出ていたりする。


というのも、料理をしようと奮闘するロゼは、なぜか毎回キッチンを破壊・爆破するのだ。本人いわく、「火加減が難しい」らしいんだけど、火加減を間違えただけで、爆発したりするもんかなぁ・・・・・・。


でも今回は、爆発はしなかったみたい。


テーブルの上にはロゼの作品があったから。


・・・・・・いっぱい。


「・・・どうするの、これ?」


思わずあたしはロゼに問いかける。


「食べるのよ?プリンシアも好きなのを食べていいわよ?あ、もちろん、ナイトも」


「それでも、これは多すぎない?」


「私、ケーキが大好きなの」


ケーキが好き、とにっこりほほ笑んだ金髪美女のロゼの言葉に、あたしとお兄ちゃんは途方に暮れた。



だって、テーブルを埋め尽くすように、ケーキが置いてあるんだもん。


しかも、ホールで。


家中充満していた甘い匂いの原因はこの大量のケーキのせいだってわかったけど、これ、どうやって全部食べるんだろう?



「ロゼ、夕飯を食べれなくなっちゃうよ?」


「そんな心配は無用よ、プリンシア。ケーキと食事は別腹だから」


「全然自慢になってねーからな」


お兄ちゃんが鋭くツッコミを入れる。


「とにかく、ロゼ、ケーキは1日1つまで。それ以上は食べるのも作るのも禁止」


「・・・・・・この家の生活は、ルールが多くて困るわね」



和馬お兄ちゃんの新たな禁止令を聞いて、ロゼはため息をついてからも頷いた。


でも、これってルールなの??





ロゼはその後、宣言通り全てのケーキをたいらげて(!)、夕飯をあたしたちと一緒に食べてた。


テレビ番組がニュースに切り替わった時、第一報で告げられたニュースが怪盗夜叉の予告についてだったから、あたしはテレビに釘付けになった。


「ねぇねぇ、ロゼ。ロゼは怪盗夜叉を知ってる?」


「えぇ、知ってるわ」


なぜか、ロゼはお兄ちゃんを見ながら悪戯っぽく笑う。お兄ちゃんは誰とも視線を合わさずに黙々と食べてる。


「明日ね、怪盗夜叉の予告日なんだよ!!いっつもテレビで中継やるの。ロゼも一緒に観れるでしょ?」


いつもはしずちゃんと見てる、怪盗夜叉の中継。


お兄ちゃんは明日の夜もバイトだっていうのは、前に言われてたから知ってる。


だったら、ロゼと一緒に見ようかなと、と思ったんだけど・・・・・・。



「ごめんなさいね、プリンシア。明日は私、仕事があるの」



なんだ~ロゼも仕事か~。がっかりしていると、なぜか和馬お兄ちゃんがびっくりしたようにロゼを見ているのが見えた。


「どうしたのかしら、ナイト?」


「・・・いや、なんでもない・・・・・・」


「あら、聞きたいことがあるなら聞くべきよ?」


「それで答えるようなヤツじゃないだろ、おまえは・・・・・・」


「でも残念だな~。明日、ロゼもお兄ちゃんもいないなら、またしずちゃんと一緒にテレビ見ようかな」


「しずちゃん?」


あたしが残念そうにつぶやくと、ロゼが聞き返してきた。


「あたしの友達」


「プリンシアの友達!!いいわね、ぜひ今度紹介してね!!」


「うん、もちろんだよ。しずちゃんも怪盗夜叉が大好きなんだよ」


「そう、怪盗夜叉は愛されているのね」


くすくすとロゼは笑う。そして、なぜか和馬お兄ちゃんは不服そうにそれを睨みつけて、黙って食べ続けてた。



う~ん、よくわかんないけど、またロゼは和馬お兄ちゃんをからかったのかな?




夕飯の片づけをして、二階の部屋に行こうとしたら、ロゼがリビングにいないことに気付いた。部屋にいるのかな、思ってロゼの部屋を叩いても彼女からの返事はない。鍵のかかっていない扉はあっさり開いて、部屋をのぞき込んだら、そこにはロゼの姿はなかった。


まだ新聞を広げてソファーでくつろいでるお兄ちゃんに、あたしは慌てて報告した。


「お兄ちゃん!!ロゼがどこにもいないよ?!」


「・・・・・・心配するなって。どうせ仕事にでも行ったんだろ」


なぜか遠い目でつぶやくお兄ちゃん。



も~!!ロゼも仕事があるなら先に言ってほしいな!!


・・・本当に仕事なら、いいけど。



あたしはそれからしばらくも、ずっとロゼの心配をする羽目になった。


だって、ロゼは怪盗夜叉の犯行日の夜まで、ずっと帰ってこなかったから。







始まった、ロゼを含めた同居生活の日常編でした~。

愛良と和馬の放課後ほのぼのデートを実現できてよかったです(笑)

ロゼのスーパー甘党は、今後もどんどん猛威をふるっていきますので!!

まだ書けそうで書けていないのが、和馬の弱点…。

宗次くんに超苦手分野があるように、じつは和馬にもあるのですが・・・・・・ロゼが暴いてくれるのでしょうか(笑)

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