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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
38/86

番外編:麗しき兄弟愛







あたしがいつものように学校から帰宅すると、すでに玄関に男物の靴が置いてあった。


ひとつは和馬お兄ちゃんとして・・・・・・あとひとつは誰の?

たぶん、宗次お兄さんか実お兄さんのものかな、と判断したあたしは、まずはリビングに行ってみる。




だって、もしもお客さんならそこにいるはずだし。

宗次お兄さんたちだったら、和馬お兄ちゃんの部屋にいるはずだし。




「和馬お兄ちゃん~ただいま!!!」

「え、あぁ、愛良、おかえり」




いないかな、と思いながらリビングに大声で声をかけながら扉を開けて入れば、そこには目を丸くした和馬お兄ちゃんがいた。いきなりあたしが大声あげたからびっくりしたのかな。



「・・・んなでかい声で入ってこなくても聞こえるからな、愛良」

「でも挨拶は元気に大きな声で!!これ、担任の先生の教えだから」



にっこり笑ってあたしは言い返す。

ふと視線を巡らせると、ため息をついている和馬お兄ちゃんの他に、あとひとりそばで立っている人がいる。

・・・っていうか、その人は・・・。




「実お兄さんが来てたのね!!いらっしゃい~」




そうやって言えば、いつもの実お兄さんなら「いつも挨拶してえらいね、愛良ちゃん」くらいの優しい言葉をかけてくれるのに、なぜか、今日の実お兄さんは呼びかけたらぴくり、と肩を震わせただけで、無表情であたしをじっと見てくる。




・・・あれ?

たしかに、顔は実お兄さんに似てるけど・・・・・・なんか、ちょっと違う・・・?




「・・・『いらっしゃい』だと?・・・おい、チビ、おまえ、ここに住んでるのか?!この男と?!いったいどんな関係で・・・」

「愛良にまで絡むなよ。不満があるのは俺に対してだけだろ?」



実お兄さんだと思ったその人は、なぜかあたしを睨みつけてくる。でも和馬お兄ちゃんがその前に立ちはだかってくれて、その人をリビングのさらに奥へ促す。




「あぁ、そうだよ、おまえには不満だらけだよ、和馬!!兄貴をたぶらかしただけじゃなく、こんなガキまで住まわせて、おまえはいったい・・・・・・」

「人聞き悪いことを連発するなよ・・・・・・。まったく、いったい俺がお前になにしたっていうんだよ、毎回毎回懲りずに同じことをくどくどと・・・・・・」

「なにしたかって?!そんなの明らかじゃないか!!おまえのせいで、兄貴は全然家に帰らなくなったし、帰ったかと思ったらいっつもいっつもおまえの話ばっかりで・・・・・・!!」




なんかよくわからないけど、実お兄さんそっくりなその人が、和馬お兄ちゃんに掴みかかってすごい剣幕で怒ってる。でも、お兄ちゃんはすごく冷めた目でその人を見返しているだけ。




「・・・っていうか、いい加減おまえこそ兄貴離れしろよ、聡」





お兄ちゃんのため息と共に出た名前が、たぶん、その怒ってる人の名前。

聡っていうんだ。やっぱり実お兄さんじゃなかったのね。



それにしてもそっくり。

別人だってわかっても、目元がちょっと聡って人のほうがきついだけで、あとはそっくりに見える。

あ、あと、雰囲気も違うかも。実お兄さんはこんなにピリピリしてないもん。





「・・・その兄貴って人を和馬お兄ちゃんにとられちゃって、寂しいの?」




成り行きを見守っていてふと思ったことを、あたしはその人に聞いてみる。

すると、聡さんがあたしを見つけると、みるみると顔を赤くしていく。


「う、うるせー!!おまえみたいなガキになにがわかる!!」

「だ~から、愛良に絡むなよ。だいたい、おまえのブラコンは度が行きすぎなんだよ」




真っ赤になった聡さんの肩を、和馬お兄ちゃんがくすくすと笑いながら叩く。すると、彼はあたしと和馬お兄ちゃんを交互に見ながらふるふると震え始めた。


「く、くそー・・・・・・!!どいつもこいつも馬鹿にしやがって!!・・・この話の決着は、今度こそつけてやるからな!!」




なんだか言い捨てるように叫ぶと、聡さんはリビングを飛び出して、家を出て行ってしまった。

まるで嵐が去ったあとみたいにしん、となったリビングに、あたしは突然の出来事についていけずにぼけっと立ち尽くしてしまった。そんなあたしに、和馬お兄ちゃんが申し訳なさそうに話しかけてきた。




「・・・悪かったな、愛良。驚かせて」

「・・・今の人って・・・・・・?」

「須藤 聡。実の1歳下の弟だよ」



えぇぇぇぇ?!実お兄さんの弟?!さっきの人が?!



「あ、あ、あんないっぱい怒るような人が、いつもにこにこしてる優しい実お兄さんの弟?!」

「・・・いや、愛良、実への見解が間違ってる・・・・・・」

引き攣った笑いを浮かべながら、和馬お兄ちゃんがあたしにそう言う。



でもそうすると、さっき聡さん・・・聡お兄さんが言ってた「兄貴」って・・・・・・。



「じゃぁ、聡お兄さんは、実お兄さんを和馬お兄ちゃんに取られちゃったから怒ってるの?」

「・・・そうみたいだな」

ひょいっと肩をすくめて、お兄ちゃんは苦笑する。

「ま、たしかに実は俺の家にいることも多いし。夜の<仕事>もつき合わせてる。医学生で忙しいっていうのにな。・・・だから、家でなかなかゆっくりできていないって聡が怒るのもわかるんだ」



ちょっと寂しそうに和馬お兄ちゃんは言う。でもそのあとすぐに、なんかちょっと複雑な表情になった。




「・・・でも、あいつのブラコンまで俺は面倒見切れねー・・・・・・」




実お兄さんがこの家に来てばっかりでさみしいっていうのはちょっとわかるかも。

あたしも和馬お兄ちゃんがなかなか帰ってこなかったらさみしいもん。

和馬お兄ちゃんや実お兄さんたちが夜のバイトに行っちゃうと、やっぱりさみしいしね。




「ねぇねぇ、じゃぁ、今度あたし、聡お兄さんと一緒に怪盗夜叉の中継をここで見ようかな」



寂しいっ子同盟ってことで!!

いい案だと思ったのに、和馬お兄ちゃんはあたしのその案を聞くと顔色を変えて即座に「だめ!!」って言ってきた。

ちぇ、つまんないの。




でも、あたしはそうして、実お兄さんの兄弟、聡お兄さんのことを知ることができた。











普段スポットがあまり当たらない実の弟、聡の登場でした。

じつは本編でも登場予定の彼。本編よりも先に出てきちゃいました(笑)

びっくりなくらいのブラコンぶりに、紫月だってびっくりです(笑)

次回からまた本編に戻ります~☆

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