日本滅亡─Lolicon Apocalypse─
皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます!
先日(2023年9月)にSNS上で催された字書きの祭典、『書き出し祭り』に出品させていただいた物語を投稿させていただきました。
サブタイトルのLolicon Apocalypseは何を意味するのか、日本滅亡ってどういうこと?
それらは本編に書かれております……
それでは、近い未来をご覧くださいませ
窓から月明かりの差し込む廃墟。
高瀬信吾は、隣で眠る幼い少年──陸を見やり、張り詰めていた神経を一瞬だけ弛める。
すやすやと眠る、ともすれば少女とも見紛う愛らしい顔を見つめていると、身体の奥底から気力が湧いてくる。あともう少し、頑張ってみようと思える。
たとえ、この世界が破綻していたとしても。
* * * * * * *
『大和魂は、ロリコン魂であります!』
時の首相・岸倍信次は、街頭演説で声高に主張した。かつての婚姻の形について熱弁し、それらを引き合いに出して『日本人は元来ロリコンなのだ』と主張する学者たちの意見を軒並み認める宣言を出したあと、国民的魔法少女ヒロインがどどめ色の触手にその若い肢体を弄ばれて、腹を膨らませながら恍惚の表情を浮かべている同人誌を掲げながら、続けて述べた。
『自分はロリコンなのだと恥じている方、隠れている方、悲観されている方! もうその必要はありません! あなた方もまた、いえあなた方こそが大和魂の体現者なのですから、恥じることなどないのです! 誇りましょう、胸を張りましょう!』
この演説は伝説となる。
日本という国を滅ぼした、破滅の引き金として。
そもそも岸倍がこの主張をした背景には、国家的な財源の不足があった。物価高騰の影響で人々は物を買わなくなり、必要なものは自給自足で賄う家庭が大半を占めるようになった。その事態を重く見た国は様々なものに課税して税収を維持していたものの、そこにも限りが見え始めた頃、ある議員が発案したのである。
「児童ポルノ所持者への課税とかできませんかね」
法規制が進んでいるとはいえ、まだ隠し持っている者も少なくはない児童ポルノ。確かに成功すればかなりの税収増を見込めそうではあるが、果たして現状隠れている児童ポルノ所持者をどう炙り出せるのか、そもそも法律に手を加えてまで課税するメリットはあるのか……考えた結果が、岸倍の演説だった。
かつて小児性愛者たちが引き合いに出しては自身を擁護していた古典作品を引き合いに出し、ひたすら肯定し、鼓舞し、課税対象をおびき寄せる──その演説は、想像以上の効果をもたらした。
更には自身がロリコンであると認めたものを対象とした物品の割引『大和割』などの優遇策を講じたことで、自信を持った課税対象者たちはここぞと名乗りを上げ、自らの秘蔵コレクションをSNS等で晒し始めた。政府の計画は見事成功したかに思われたのだが。
そんな岸倍の演説に、怒りの声をあげる国民が数多く現れたのである。
『ショタコンには人権がないってことですか?』
始まりは、都内の小学校教諭のブログからだった。
日頃どのように児童と接しているのかを赤裸々に書き、そして世界中の古典作品には少年愛と呼べるような描写も数多くあるにも関わらずそこに触れず、あたかもロリコンだけが古典に肯定されたかのように宣う岸倍への不信感を、およそ20000字にわたって書き綴ったブログは、掲載されていた自撮り写真の美脚や胸元も相まって反響を呼ぶ。
そして。
『小さい子が好きだとみんなロリコンロリコンって! 僕はアリコンなんだよ』
『ハイジコンプレックスを無視する日本、気持ち悪すぎだろ!』
『ロリコンしか知らない小児性愛にわか』
『ペドフィリアの風上にもおけない』
『日本ってお堅いのね』
『ベビコンだって立派な愛なんだが』
『てかロリコン政治利用されてて草』
『これだからチョロい弱男は』
『昔のロリコンは認知されなくても生きていけた』
『オネショタも認めろよ』
『ショタ縫い合わせはどうしたんだよ岸倍』
『小児カニバリズムの時代はいつ来るんだ』
『ビジネスロリコン政府くっさ』
『時代は胎児数珠繋ぎだろ情弱ども』
いわゆる『ロリコン』の範囲から漏れた小児性愛者たちによる怒りの声が、全国から何億と投稿されたのである。そしていよいよ児童ポルノ該当物への課税が始まったところ、岸倍支持を表明していたロリコンたちまでもが自分たちの愛を金儲けの道具にされたと怒りを露にしたのである。彼らの怒りが暴動に変わるまで、そう時間はかからなかった。
連日行われるデモに普段から国や社会への不満を募らせた人々が合流したことで過激化し、演説からひと月も経たないうちに岸倍内閣の閣僚が襲撃され、その首が国会議事堂前に曝される事件が起きた。
そこからはもう秩序など機能しようのない暴力の嵐。治安を維持するために動員された諸々の機関も意味をなさなかった──構成する人員の多くがショタコンだったからである。少年愛を蔑ろにしてロリコンばかりを肯定する岸倍の安易な演説に疑問を覚え、ひいてはそんな男を首相として戴く日本の治安や国家を守ることへの不安を募らせた彼らもまた、暴動に加わったのだ。
国家としての機能はものの数日で損なわれた。『岸倍を倒せ』『愛を取り戻せ』などのスローガンの下に多くの国民が暴動に加わったために、反対する隣人を惨殺してもそれを逮捕するものもいなかった。
積み上げられた屍の数が生存者の数を上回っても殺戮は止まらず、やがて殺したいから殺すというものまで現れる始末。衝動に任せた殺戮までもが起きてしまい、やがて国とは名ばかりの列島だけが残ることになったのである。
前書きに引き続き、遊月です。今回もお付き合いいただきありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪
さて、つい先日、某お馬さんのソーシャルゲームで推しカプの登場するストーリーイベントが開催されたのですが、そこに出てくる推したちのまぁ~青春していること! そして推しカプのまぁ『私たちの関係は近い将来必ず訪れる別れを前提とした一時的なものだけど、だからこそ一瞬一瞬を大切に歩んでいきたいの……できれば、キミと』感の芳醇なこと!! 普段は黙々とストーリーを噛み締めることの多い私ですが、思わず興奮して涙ぐんでしまいました。どういうことなのでしょう、どうすれば人類は、『常にエンジョイ勢な天真爛漫娘、しかし自身の使命や運命、価値についてとても達観しており、だからこそ限りある今を大切に楽しもうとするお姫様』×『そんなお姫様に振り回される、ロジカルにしてクールだけど何だかんだ面倒見のいいインテリヤンキー、しかしその実何度計算しても変わらない不本意な運命に必死に抗おうとしていて、挫折しかけたときは「神」に縋ろうとすらしてしまう脆さと苦しさを常に抱え続ける苦悩の天才』という組み合わせの香ばしさに抗えるのでしょうね。私には人類がこの類いの香ばしさに耐えられるビジョンが見えません。
ソーシャルゲームのストーリー、侮りがたし!
閑話休題。
本作『ちるさば!』は、元々SNS上の催し物に出すために書き始めた物語ではありましたが、何もかもがフィクションというわけではありません。少なくとも「大和魂はロリコン魂」については、私自身が日常的に自分を鼓舞するのに使っている言葉ですからね(笑)
ということで、また次回もお会いしましょう!
ではではっ!!