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9 救い人

 数奇な出来事が起きた教会を後に、マールとアルバは旅を続けた。


 周囲は草木が生い茂る街道にて。


「マール」

「なあに?」

「どこへ向かうんだ?」

 妖精アルバは、少し退屈そうに両手を頭に乗せて羽根をばたつかせながらマールに問いかけた。


「んー、ここを歩いた先に集落があるんだけども、そこへ行ってみようと思って」

 マールはそんなアルバに、微笑みながらそう答えた。


「何かあるのか! 面白いものとか!」

「んーんー、何も無いよ」

「ならどうして行くんだ?」

「そこは人も少なくてダンジョンもないから冒険者も来なさそうだし、回復魔法の普及も遅れているかなって思うの」

 回復魔法の使い手が居る場所へ行っても、自分は役に立てない事を思い知ったマールは、それ以外の場所を目指そうとしていたのだ。

 冒険者をやっていた頃、そういう場所をいくつか知っており、今からそこを回っていく予定だった。


「なるほど! そこへ行こう!」

「うん!」

 アルバはマールの周りをくるくる飛びながらそう言うと、マールも手を広げてスキップをした。



 それからしばらく歩いて行き。

 やがて日も落ちかけてきた頃に、目的の集落へ到着する。


 集落の場所は街道から少し外れた場所にあり、基本的に人の出入りは少ない。

 中は木製の建物が建ち並び、牛や鶏が買われていてとてものどかな雰囲気がする……はずだった。


「あれ? 誰も居ないぞ?」

「うーん……」

 家畜がのんびりと餌を食べたり、水を飲んだりしている様子は変わりなかった。

 だが、肝心の人の気配はまるで無く、家の扉は固く閉ざされたままだ。


「なあマール。いくら人が少ないって言っても、居ない事はないよな? 牛や鶏いるし」

「うん、家畜も居るから多分家の中に居るだけだと思うけども……」

 マールは首をかしげると、集落の入り口近くにあった家の前へ行き……。


「あの、すみません」

 扉をノックして、中に誰か居ないか確認した。


「…………」

 しかし、何の反応もない。


「すみません、どなたかいらっしゃいますかー?」

 マールは再びノックをした。


「……げほっ、げほっ」

 家の中から、咳をする音が聞こえてきた。


「お? 中に誰か居るみたいだな」

「うんうん」

 アルバとマールは、顔を合わせながらそう言い合い、人が出てくるのを待った。


「…………」

 しかし、しばらく待っても誰も出てこない。

 マールはそれでも扉をノックしようとした時……。


「げほっ、げほっ、一体なんだい……」

 扉がゆっくり開くと、咳をしながら顔色の悪い老婆が家の中から出てきた。


「あのっ、私は冒険者で、回復魔法は使えないのですが怪我や病気で困ってる人を――」

 マールはそんな老婆の様子を見逃さなかった。

 ここでなら、きっと何か役に立てると思い、自らの素性を話して打ち解けようと試みたが……。


「はぁ! 冒険者だって! この村から出ていきな!」

 老婆は息苦しそうにしながらも、声を荒げてそう言い放って扉を固く閉ざしてしまった。


「な、なんなんだよあの老婆! 話くらい聞いてもいいじゃないか!」

 善意で人々を助けようとしているマールに対して、あんまりな態度をとった老婆に対し、アルバはぎゅっと拳を握って怒りを露わにした。


「うーん……、あのお婆さん、私が冒険者って言ったら表情が変わった」

「冒険者って、嫌われ者なのか?」

「そんな事はないと思うけども……」

 冒険者と言っても、盗賊まがいの行為を繰り返している者も居なくはない。

 だからといって、冒険者全てが嫌われるかと言われるとそうではない。

 故にマールは、老婆の対応に怒りや苛立ちよりも、疑問を強く感じていた。


「他の家も見てみよう」

「そうだなー」

 その疑問を解消するべく、マールは他の家も尋ねる事にした。

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