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16 相応しき場所へ

 妖精王、妖精、回復魔法の使えない薬師。

 まるで共通点の無い三人の旅が始まった。


 宿場町を抜け、次に目指す街に向かう街道の上にて。


「さて、次の目的地はどこかな?」

「うーん……」

「ダンジョンの最奥か? 世界の果てか? どこへでも行けるぞ?」

「うーん……」

「お、おちついてください」

「余は……俺はとても気分がいい。愛する者と旅が出来るのだからな」

 アルベルドは大きく両手を広げたが、アルバはそんな妖精王をなだめようとした。


「えっと、じゃあ……」

「おや、どこへ行くのか決まったのかい?」

 一方、そんな二人のやりとりを気にせず次の目的地を考えていたマールは……。


「王都ルビーロザリアへ向かいます」

「ほお……」

 アルベルドとアルバを見てそう告げた。


「……で、そこはどこなのだ?」

「この国で一番大きな都ですよ! 王様前にも行ったじゃないですかー!」

「ああー、貴族に紛れてパーティ参加したあれかー!」

 王都ルビーロザリアは、この世界でも指折りの大国の都だ。

 かつての行商をしていた一人の冒険者が、当時は誰も踏破出来なかったダンジョンを攻略し、そこに眠る財宝を元手に興したのが発祥とされている。

 それから代を重ねていき、名君やそれを支える有能な官僚に恵まれた結果、多くの富が集まる国となったのだ。


「ごめんなさい、そういう場所じゃなくて……」

「ん? 違うのか?」

 当然、多くの富豪や貴族や著名な芸術家も集まり、絢爛豪華な催しも少なくはない。

 アルベルドもこっそり人間のふりをして参加していた記憶から、マールもまたそういう場所へ向かうのだと疑っていなかった。



 だが、しかし……。

 ルビーロザリアへ到着した一行が見た風景は……。


「ここです」

「な、なんなのだここは……」

 木や藁で作られた小屋は風化が激しく、満足に雨風をしのげない事が目に見えて分かる。

 大人は下を向いて座ったまま動かず、枯れ木のように痩せた子供は目的地も無く彷徨っている。

 本来なら恋や歌を楽しむ年代の少女も、僅かな金銭を得るために自らを売ろうと、小屋の前で呼び込みを繰り返している。

 それらの様子に加え、時折鼻をつく臭いや顔の前を不必要に飛ぶ鬱陶しい羽虫の存在が、ここがどういう場所なのかを物語っていた……。


「貧民街ですね」

「パーティは? 豪華な食事は? 華やかな音楽や踊り子達は?」

「いませんよ。ここは日々を生きていくだけで精一杯な人が集まってるんですから」

 幻滅するアルベルドに、アルバは冷静にそう説明した。


「全く、俺とマールに相応しくない場所だ」

「ううん、そんな事は無い。ここは治療院に行けるだけのお金も無い人達ばかりなの」

 王都ルビーロザリアには当然治療院はある。

 だが治療院も無料ではないので、困窮している人は利用出来ずに怪我や病気で苦しんでいたのを、マールは冒険者時代に見てきた。


「それで? この住人を助けると?」

「うん」

 マールは強い決意に満ちた瞳で、一つ頷いた。


「ふむ……。まあ好きにやってみるといい。余も出来る限り力を貸そう」

「えへへ、ありがとうございます」

 アルベルドは少し怪訝そうな顔をしつつもマールの手伝いを約束する。

 マールの表情が、告白された時とは違って明るくなった。


「だがな……」

「何でしょう?」

「いや、何でもない。好きなようにやるがいい」

 アルベルドはこの時、何かをマールに告げようとしたが結局言葉を飲みこみ口を閉じてしまう。

 そんな彼の様子に少し疑問を持ちつつ、マールは貧民街の中へと入っていった。

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