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15 今は恋より夢のために

 翌朝。


「ふわぁ~、よく寝た~」

「おはよう。アルバ」

 窓の縁で寝ていたアルバは大きく口をあけて両手をめいっぱい伸ばしている。

 マールはそんな様子を横目でみつつ、旅支度をカバンの中身を整理しつつ挨拶をした。


「お、もう起きてたのか! おいらより早起きなんてなー」

「ふふ、食堂でご飯あるから、食べに行こう」

「おう!」

 小鳥のさえずりを背景に、マールとアルバは部屋から出て行き別の部屋にある食堂へと向かった。



 食堂にて。


 決められた席へ座ると、その様子を見た店員が奥の厨房から料理を持ってきた。

 朝食なのでパンやチーズ、野菜のサラダに飲み物はミルクと簡素ではあるが、今まで野宿をしてきて野草がメインだったマールにとってはごちそうだ。


 マールはパンやチーズを小さくちぎって口へと頬張り、咀嚼しつつアルバの方を何度も見つめていた。

 時折、アルバとマールは目が合うが、あった瞬間にマールは目線を外してしまう。


「どうしたんだ? さっきからおいらを見て」

 そんなマールの様子が気になったアルバは、体ほどの大きさのあるパンを抱えながら怪訝そうな顔で問いかけた。


「ねえアルバ」

「なんだ?」

「妖精王様って知ってる?」

「アルベルド様の事か? おいらの主人だ。それがどうしたんだ?」

「うん、私昨日あったの」

 アルバにたいしてマールは、咀嚼した食べ物を飲みこむとあっけらかんと答える。


「お、おい本気かよ。おいら全然気づかなかったぞ」

「しかも告白されちゃった」

「告白……って、求婚か!」

「そ、そうだね」

 マールは正直なところ、まだ状況がよく分かっていなかった。

 突然妖精王が現れ、自分の事が好きだと告げられ、妃に迎えたいと言ってきた。

 予想出来なかった現実が、突拍子もなくやってきた事で、半ば思考停止状態に陥っていたのだ。


 アルバはマールと違って、求婚の話を聞いた瞬間持っていたパンを落としてしまうと、直後に両手をばたばたとさせながら興奮した。

 気に入った人間が、まさか自身の主人と結ばれるなんて、想像もしていなかったからだ。


「マールすげえな……、いつの間にアルベルド様を射止めたんだ?」

「うーん……」

「それで、どうするんだ?」

「断っちゃった」

「だよなー。マールのような人間とアルベルド様が結ばれるのならおいらも嬉しいけども、マールは旅を続けたいんだろ?」

「うん」

「だったら、続けるしかないだろ?」

「あれ、説得しないの? あなたの王様なのに?」

「王様はすげえと思うけど、別に滅私奉公しろってわけでもないからなー」

「そうなんだね……」

 妖精王への求婚は予想外で、お互いに驚きや戸惑いはあった。

 しかし、求婚に対しての返答は二人とも想定の範囲内だったのか、求婚の話題と比べると淡々と話が進んでしまった。


「全く……、少しは応援してくれてもいいんだがな」

「あなたは!」

 そんな中、マールとアルバが再び食事をとろうとした時。

 二人の前にある男性が話しかけてきた。


「妖精王!」

「アルベルド様! どうしてここに…‥?」

「旅についていこうと思ってね。言ったじゃないか、必ず振り向かせるって」

 その男性とは妖精王だった。

 マールは、まさか本当に実行してくるとは思っていなかったのか、開いた口を塞がずただ呆然としていた。


「どうしたんですかその格好は!」

「ん? 人間の冒険者がしそうな格好を選んだのだが?」

 普段は金縁で飾られたロングコート、しわや汚れの無い白いシャツを着て、黒いスラックスを穿いているのだが、何故か今は少しくたびれた革の鎧とリストバンド、薄汚れたシャツとパンツを身につけている。

 あまりにも落差の激しい格好に、アルバは面食らってしまった。


「そういうわけだ。余もついていく」

「う、うん」

「どうした? あぁ、自身の呼び名が余はおかしいな。これからは俺でいこう」

「う、うーん……」

 いや、そういう問題ではない。

 そうマールは思いつつ、半ば強引に妖精王と旅を共にする事となった……。

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