14 少女と妖精王の決断
「今晩は月が綺麗ないい夜だ」
「えええええ!」
突然の妖精王の来訪、そしてその妖精王からの告白。
マールは首をかしげて考え、状況を理解すると再び大声をあげてしまった。
「静かに」
「あ、ごめんなさい……」
アルベルドと名乗る青年は、再び口に人差し指を当てて静寂を促すと、マールは慌てて両手で口を塞いだ。
「さてもう一度問おう、余の永遠になってくれないか?」
「うーん……」
この時マールは、彼が妖精王である事を驚いたが、疑ってはいなかった。
それは、出会ったのが僅かな時間であるにも関わらず、マールの事を知っていたからだ。
恐らくは、妖精のアルバとこっそり連絡を取っていた。
そんな事が出来るのは、同じ妖精しかありえないと考えたからだ。
マールの頭の中を、様々な考えや感情が巡っていく。
そしてしばらく下を向き、少し唸りながら考えた結果……。
「ごめんなさい。妖精王様のお気持ちに答えられないです」
マールは再びアルベルドの方を向き、そうはっきりと答えた。
「そうか……、不躾で申し訳ないが理由を聞かせて欲しい」
アルベルドは残念がるよりも、不思議そうな面持ちで優しくそう問いかけた。
「私、まだそういうのよく分からなくって」
「分からない……というと?」
「妖精王様が悪い人じゃないってのは、わかるんです」
「ああ、愛する者は必ず幸せにして見せるぞ」
「でも、私はお母さんに憧れて薬師始めて、回復魔法が流行っているこの時代でも、まだ薬を必要としている人が居るって事も分かって」
「ふむ」
「何だろう、今やるべき事は異性に恋する事じゃなくって……、あ、いやその、別にそういうのが駄目ってわけじゃないんですっ! で、でも……、なんて言ったらいいんだろ」
マールは戸惑いつつも、少し申し訳なさそうに、だがアルベルドから目線を外す事無く説明をした。
「いいよ。君の気持ちは分かった」
「うぅ、ごめんなさい。嫌な気分にさせてしまって……」
「そうじゃない、マールが気に病む事なんてないんだ」
アルベルドはそんなマールを優しく見守ると、ゆっくりとマールへ近寄り……。
「余はマールが好きだ。今もこれからもその気持ちに変わりはない」
「あ、ありがとうございます……」
白くしなやかな指で、マールの頬をそっと撫でた。
その行為にマールは、少し頬を赤らめつつも作った笑顔を見せてお礼を告げた。
「だから、マールも余が好きになれるようする。今度は魔力を使わずにね」
「えっ、ええ……」
そんなマールの年相応の反応を見たアルベルドは、マールからゆっくりと離れていく。
「では今日はこれで去るとしよう。ごきげんよう」
そして、窓の近くに立つと深々とお辞儀をして窓から飛びたってしまった。




