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僕は「いってらっしゃい」と言いたい  作者: 雲母あお
君には「いってらっしゃい」と言わない

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36/42

玲央のもとへ!

ピンポーン ピンポーン ピンポーン


「はい。」

「圭太さんいますか?」

「圭太?」

「はい!僕、中原零理って言います。」

「あら、前にも来た子ね。ちょっと待っていて。」


少しして、圭太が玄関から出てきた。

「こんな時間にどうした?」

ジャージに白いTシャツ、その上に半袖のシャツを羽織りながら慌てて零理のところへ走ってくる。


「ごめん!圭太さん。お願いがあるの!」

大きく肩を揺らし、息を切らしながら、零理は大きな声を出した。

『永遠の仲良し公園』から、全力で走ってきて、息がとても苦しい。


「大丈夫か?」

「は…はい…。はぁ、はぁ。」

零理は、圭太が家にいてくれて、すぐに外に出てきてくれて、少しホッとした。


「零理、お願いって?」

ただ事ではない様子の零理に、心配そうに話しかける。


「うん!お願い!!このあいだ調べてもらった病院に僕を連れて行って!!今すぐに!!早く!!」

零理は、圭太の腕をとり、必死に訴えかける。


「ええ!!これから!?これから行ったら、着くのは面会時間ギリギリだし、中に入れないかもしれないよ。明日じゃだめなのかい?」


圭太は、突然家に押しかけてきて、病院へ連れて行けと言う零理に、驚きとともに正直困ってた。なんとか、落ち着かせて家まで送り届けようと、明日にしようと提案してみる。病院に連れて行かないわけじゃない。ただ今日は諦めてもらおうと、なだめようとした。


しかし、零理は、食い下がって、思い切り首を振った。

「だめなの!今、行かないとだめなの!!」


「一体何があったんだ?なんで、今行かないとだめなんだ?」

「今行かないと、玲央が、玲央が死んじゃう!!死んじゃうんだよー!!」

零理は、圭太にしがみつき泣きじゃくった。


「お願い!僕、圭太さん以外に頼れる大人がいないから。僕1人で、教えてもらった病院にどうやって行けばいいのかわからない!お願い!!圭太さん!!僕を病院に連れて行ってー!!」

必死の表情で訴えかける零理を見て、圭太は、思った。


俺も、中学生……、社会の中ではまだ子供………なんだよ?


でもさ。

こんなに頼られては仕方がない。

これに応えなきゃ男じゃないよな?

そうだろう?優斗?


「よっしゃー、わかった。ちょっと待ってろ!!」

携帯を取り出し、電話をかけ始めた。

「圭太さん?」

いきなり電話をかけだして、驚いて声をかけた。圭太は、しーっと口に人差し指を当てると、

「あ、もしもし、面会時間を教えていただけませんか。はい、はい、はいわかりました。19時30分までに伺えば、面会できるんですね。小杉といいます。これから面会に伺いますのでよろしくお願いします。はい、ありがとうございます。よろしくお願いします。」

電話を終えると、携帯を握り締めたまま、零理に笑顔でこういった。

「よし!今から病院行こう。車で行けば、まだ間に合う!すぐに、病院に行こう!」

「え!?いいの!?」

「ああ、ちょっとそこで待ってろよ。」

「わかった!」

零理はとても嬉しそうな顔をした。


圭太は、慌てて家に戻ると、大きな声で、母親を呼んだ。

「母さん、悪い。車出してくれない?」

「どうしたの?あの子、送っていくの?」

「いや。あいつの友達が入院している病院に、あいつを連れて行きたいんだ。」

「病院?」

「ああ、父さんが入院してた病院……。」

辛い記憶……

母さんは、黙り込んだ。

「ごめん。やっぱいいや。俺チャリの後ろに乗せてく……。」

辛いよな。俺も辛いし。でも、仕方ない。優斗の『弟』の頼みだし。



ふと、数日前の記憶が蘇る。

「零理、いつも思っていたんだけどさ。」

「なんですか?」

「なんで優斗にだけ『お兄ちゃん』をつけるんだ?俺のこともお兄ちゃんって呼んでくれよ。」

「ごめんなさい。圭太さんのこともお兄ちゃんみたいって思っているんだけど、僕のお兄ちゃんは、優斗お兄ちゃんだけなんです。」

申し訳なさそうに謝る零理に、それ以上言えなかった。



「優斗のやつ、いつの間に、あんな弟作ってたんだよ。」

玄関で、靴を履いていると、カチャカチャと金属がぶつかる音がした。

振り返ると、車の鍵と、それにつけたキーホルダーがぶつかって音を立てていた。


「戸締り、ガス、電気OK!行くわよ!」

母親が、車の鍵を持って立っていたのだ。


「え!?母さん大丈夫?」

「大丈夫じゃない。けど、送ってく。何かあったんでしょ?」

任せなさい!と、圭太の母親は、得意げに笑った。

「ありがとう。母さん。」


圭太は、玄関の鍵を閉めると、零理のところに走った。

「零理!母さんが車出してくれるから、すぐに着くぞ!今からでも十分間に合う!」

「え!?本当?圭太さんのお母さんが?」

駐車場からエンジンが鳴った。

「急ぐんだろう?さあ、乗った乗った!」

「ありがとうございます!!」

圭太と2人、圭太のお母さんが運転する車の後部座席に乗り込むと、病院へと出発した。




圭太の家から車で、20分くらい走ったところ。

大きな病院の駐車場にいた。


「母さんは、ここで待っていてくれ。」

「一緒に行くわよ。子供だけでなんとかならないこともあるかもしれないでしょう?」

圭太の母親を見ると、顔色が悪かった。家を出た時は、そうではなかったが、病院の駐車場についた圭太の母親は、なんだかとても辛そうに見えた。

「母さん、無理しないで。俺もここの面会の手続き分かってるから。俺が連れていくから大丈夫。母さんは、車で待ってて。」

「でも……。」

心配そうな声。


零理は、そのやりとりを見て、とても迷惑をかけてしまったと、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

「ここまで連れてきてくれてありがとうございました。迷惑かけちゃってごめんなさい。ここからは、僕1人で大丈夫です!」

「1人って、何言っているんだ!?それに病室も分からないだろう?」

「大丈夫!僕わかるんです!!ここまでくれば大丈夫です!病院まで連れてきてくれて、本当にありがとうございました!」

零理は、言い終わるか終わらないかのタイミングで、シートベルトを外し、車のドアを開けて飛び出した。病院へ向かって全力で走り出していた。


まるで、行き先がはっきりとわかっているような足取りで……


「おいっ零理!!待てって!!」

呼び止める圭太の声は、零理には届いていたと思うが、零理は振り返らず走っていった。




零理は、救急の受付の扉から、病院に入った。

なんとしても、玲央の元へ行かなければならない。


「ちょっと、君?小学生?何かご用かい?どこか具合でも悪いのかい?」

入り口を入ってすぐに警備員さんに声を掛けられた。

どうしよう。もう見つかっちゃった。

零理は、階段を目で探す。


ダッシュすれば、このおじさん巻けるかな。

零理が考えていると、


「すみません。まだ、面会時間過ぎていませんよね?ギリギリに申し訳ありませんが、先ほどお電話しました小杉です。面会をさせていただけないでしょうか。」

振り向くと、圭太が零理の後ろに立っていた。


「圭太さん……」

圭太は、零理の肩にそっと手を置くと、

「大丈夫。」

そう、一言だけ言うと、再び警備員さんに向かって話した。


「入谷玲央くんと同級生で、友達なんです。今日どうしても会いたいって聞かなくて。面会したいのですが。」

「ああ、先ほどのお電話の。面会ですね。入谷さんは3階の307号室になります。お手続きをお願いします。」

圭太が、手続きをしようとすると、


「先に行きなさい。私は、手続きが終わったらここで待っているから。」

圭太の母親も、受付に来てくれた。


「わかった。ほら、零理行こう。」

「はい。ありがとうございます。」

零理は、圭太と手をつなぎ、玲央の病室へと向かった。


待っていて、玲央!僕が必ず連れ戻すから!

ぎゅっと拳に力を入れて、決意する零理だった。




3階のフロアについた。

病室の番号を見ながら、圭太と2人で廊下を歩く。

「玲央君が入院している病室は、一番奥の突き当たりの個室みたいだな。」

「うん。」


玲央の気配が強く感じられる。

もうすぐだ。


カラカラカラ

307号室の引き戸をそっと開けた。


電気が付いていない、薄暗い部屋。

窓が一つ、その横にベッドが一つ。

窓の外の外灯が、ひっそりと部屋を照らしている。


その部屋の中、ベッドの上に、一人ぼっちの小さな体が、静かに横たわっている。

玲央だ。

玲央の体だ。


「玲央、来たよ。」


零理は、圭太からゆっくり離れると、玲央の体に近づいていった。


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