声に出して
「あいつがもういないって認めたくなくて、ここに近寄ることができなかったんだけど。」
圭太は、一度言葉を切り、大きく息を吸ってはいた。
「ここで、その永遠に仲良しの親友が死んだんだ。」
圭太は、絞り出すように言葉を紡いだ。
「死んじゃったの?」
「うん。死んじゃったんだ。猛スピードで電信柱に激突して。馬鹿だろう?俺の親友は。」
ははは…。
圭太は、。乾いた笑いを浮かべた。
「自分で死んじゃったの?」
「そう!よそ見運転だって。あいつ何見てたんだか。きっと美女にでも目を奪われていたんだろうよ。馬鹿なんだよ。昔から。」
「よそ見してたんだね。」
「目撃した人がそう言っていたそうだよ。」
「そうなんだ。」
それから、圭太はまた黙って手を合わせ、電信柱に向かって何かを祈っていた。
しばらくして、目を開けると、
「零理君、時間大丈夫?付き合わせてごめん。零理君のお陰でここにこれた。ありがとう。零理君のお陰で俺1人でも、もうこの場所にいられると思う。まだまだこいつと話したいことがあるから1人にしてくれる?勝手でごめんね。」
申し訳なさそうに言いながらも、何かを決心した顔をしていた。
「ううん。圭太さん、ここまで連れてきてくれてありがとう。僕の家すぐそこなんだ。」
「そうか。それなら安心だ。」
「また遊んでくれるの嘘じゃない?」
「嘘じゃないよ。」
「じゃあさ、交換して!」
零理は、携帯電話を圭太の前に出して、連絡先の交換をお願いした。
「いいよ!」
圭太は快諾した。
「それじゃ、圭太さんまたね!」
「うん、またね零理君。」
歩き出した零理が、ふと足を止めた。
「どうしたの?」
圭太が尋ねる。
「あのね。圭太さん。心の声は、生きている人にも伝わらないよ。死んだ人にはもっとだよ。声に出さないと誰にも聞こえないんだよ。」
零理は、それだけ言うと、また歩き出した。




