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二つ折りの紙切れ

「小杉」

と、書かれた表札の前で俺と零理は立ち止まった。


『ここが圭太の、小杉圭太の家だ。』

「うん。」


久しぶりに圭太の家にきたな。

小学生の頃はお互いの家を行ったり来たりしていたのに、中学に上がってからは、部活とか塾とか色々あって、学校以外で会うのは、たまに買い物に出かけるくらいで、家を行き来することは無くなっていた。そう、圭太の父親が亡くなってからは特に…。


『久しぶりなんだ。ここに来るの。』

「うん。」

『圭太とは、幼稚園の頃から仲が良くて、家を行き来して遊んでたんだ。圭太のご両親にもとても可愛がってもらってた。』

「うん。仲良しだったんだね。」

『ああ、圭太とは親友だった。“永遠の仲良し”なんだぞ!』

俺は、誇らしげに零理に説明していた。


「永遠の仲良し?」

『ああ、そうだ!圭太と俺は、“永遠の仲良し”なんだ!』


弟になってくれた零理に、俺にはすんごい友達がいるんだぞって自慢したかった。

『いつも、お互いの家を行き来して一緒に遊んでいた。6年生になったばかりの時に、圭太の父親が病気で亡くなった。それから家を行き来しなくなったんだ。お葬式が終わってしばらくして、圭太が学校にきた時、圭太からお線香の香りがして、心がギュッてなった。そんな圭太の姿をみて、心がギュギュッて苦しくなったんだ。どうしていいか分からなかった。ただそばにいることしかできなかった。圭太はだんだんいつも通りに振る舞うようになっていた。けれど、1人になると何かをギュッと握って、寂しさを堪えているようだった。俺は声をかけることができなくて、気づかないふりをして、そんな圭太のことをただ見ていたんだ。』


「うん。」

零理は、静かに俺の話を聞いてくれている。


これは、俺の懺悔の話。

聞いていてつまらないかもしれない。

でも、誰かに……、零理に、聞いて欲しかった。


『あの日も、校舎の階段の隅で、何かをギュッと握って俯いている圭太を見かけた。そこに担任の先生が、圭太を呼びながら歩いてきた。学級委員をしていた圭太に用があったらしい。圭太は、慌てて握っていた何かを小さな巾着のようなものにしまい先生のところへ走って行った。俺は、圭太がさっきまで立ってたところに歩いて行って、それが落ちているのを見つけた。先生に呼ばれた圭太が、慌ててしまって、巾着に入れたはずが、ちゃんと入っていなくて落ちてしまったんだろうと思った。』

あの時のことを思い出すように、言葉を一度区切る。


『2つ折りの小さな紙切れを。』


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