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99 世界は激動する。

 憤怒、それは究極の脳筋的思考をまとめたモノ。

 簡単に言えば、『相手が攻撃するより早く殺せばいい』の体現。

 憤怒のその戦い方は自身の攻撃を耐える(・・・・・・・・・)敵を想定していない。

 

 いや、より正確に言おう。

 

 自身の攻撃を防御させない(防御できない)事を前提にしている。

 逆に言えば、防御されて仕舞えば(・・・・・・・・・)最弱となるのだ。

 

「無駄ですって。私の忍耐は貴方に敗れません。」

 

 美徳随一の防御系スキル。

 忍耐。

 それは、自身が過去に受けた攻撃を上回るモノでなければ肉体に一切の損傷を与えることができないと言う権能。

 ただそれだけの権能。

 それに憤怒は勝ることが出来ない。

 

 憤怒とは怒りの熱を力にしている。

 瞬間の熱量を。

 その熱だけの力を発揮する。

 

 そして、怒りはあらゆる怒りは時と共に冷めゆくもの。

 

「死ね死ね死ね死ね死ね!!」

 

 口で叫ぶことはできる。

 意志に憎悪を忍ばせることはできる。

 されど、

 

「全く効きませんね。貴方の攻撃。やはり、技術も向上してなければ怒りも温い。貴方の怒りとはその程度なんですよ。」

 

 |過去の怒りを越えることはできない《・・・・・・・・・・・・・・・・》。

 過去の怒りを上回ることはできない。

 人の心の上限に至った怒りを越えることはできない。

 

 想像してみよう。

 

 幸せの絶頂期。

 目的を達成した直後。

 

 それを上回るほどの興奮は、それを上回るだけのモノが必要である。

 確かにただの怒りならば越えれるといえる。

 ただの憎悪であればより大きな幸福によって越えられる。

 

 だが、憤怒という大罪を満たしうるだけの激情を抱えた怒りは二度と湧き上がらない。

 真っ当な人間が抱えた罪とされる程の膨大な熱量を誇った怒りはもう出せない。

 人は、古きを廃て新しきを得る生き物だ。

 その生き方を否定するほどの熱を誇った大罪(怒り)は、二度と復活しない。

 

 この世界に、ハッピーエンドはない。

 見えるのはバッドエンドだけだ。

 

 手から血が出始めた。

 その間忍耐は一切抵抗しない。

 ただ、それらの攻撃を耐えた(・・・)だけだ。

 

「もう,やめませんか?」

「貴様だけは生かさない、貴様だけは死ね!!」

「無駄ですって。」

 

 手を払う。

 レオに届いたその手は呆気なく、拳を退けそのtを越える力を押し返す。

 

「美しく殺す、と言いましたね? 私。否定しましょう。無様に貴方を生かします。」

 

 彼女はそう告げる。

 (怒り)は、彼女の手によって全ての力を消し去られる。

 

「忍耐、素晴らしい美徳です。ええ、耐えましょう。幾らでも。貴方の力は私にとっては弱すぎますから。」

 

 笑顔でそう微笑む。

 憤怒とは対照的に、だ。

 

「死ね、死んで詫びろ!!」

 

 激情に駆られるままに血の炎(怒り)を上げる。

 世界を焦がす炎を。

 死を体現した死への怒りを。

 あまりにも尊く、尊大で、哀れな罪を。

 

「我が名は憤怒(レオ)!!」

 

 魔術の詠唱を始める。

 怒りの怒声を含んだ熱を。

 

「死からの帰還者!! 女神に歯向かう一筋の牙!!」

 

 体が内側から裂ける。

 全身は燃えた()で覆われている。

 世界は激動する。

 

「我が名を持って、()は神と決別する!!」

 

 あくまで、彼の話だ。

 彼が望む未来の話だ。

 されど少女の姿をした少年は彼のために死んだ人の為に血涙を流してその情熱を叫ぶ。

 

「人を殺す神などいらない!! 人を欺く神などいらない!!」

 

 2本のツノが生える。

 体の()が凝固し鎧と化す(剣と化す)

 

 他者の思いを受けて生き残った少年は他者から貰い受けたその怒りで憤怒を開花させた。

 その激情には遠く及ばない。

 されど、怒りの純度は今の方が高い。

 純粋な怒りで大罪が開花した。

 あとはその怒りをぶつけるだけだ。

次回は100話記念のイフルートです。

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