98 レオ・オ・ツォーン
少し時は巻き戻る。
「まったく、あいつはぁ〜!! まぁ,無限再生する敵なんて僕は無理だけど。」
そう言いつつ、雑魚どもを粉砕するレオ。
その額には焦りで汗が出始めている。
「数で覆え!! 奴の弱点は多人数だ!!」
「僕の弱点も解析済みとか、ホント嫌になるね。」
気楽に言うが、その表情に余裕はない。
処理速度が落ち始めている多人数線と言う現状において憤怒という対個人戦最強というのはあまりにも相性が悪い。
それに、敵が雑魚と称したがそれは転移したばかりの存在だけであり敵を知覚し殺しにかかるそれらは大罪、後の大罪魔をを殺すために作られた万人に与えられる規格化されたスキル。
簡単に言えば兵器なのだ。
持てば、それだけで力を得られるモノ。
大罪の足枷となるモノ。
先程まで雑魚と称したのはあくまでもそれを発動させる前に殺したから。
発動させれる状態で対応するのならば、どのような強者でも対処は易くない。
「『焼き尽くせ』」
スキルに刻まれた知識を使う。
すなわち『記録』
それを使い、1人でも多く葬り去ろうとしているが殺しきれない。
忍耐が耐え忍び、慈愛が癒し、純潔が刃を振るう。
「鬱陶しいなぁ!! もぅ!!」
拳は他者の血に染まり、その体は無数の血管と、光る魔法回路が浮き出る。
膨大な熱が重さなく敵を殴り続ける。
怒りという炎の体現。
不条理を憎むモノ。
それは即ち、『怒れる獅子』
自身の血肉を沸騰させ、焦がし、その熱を持って敵を打ち倒さんとする1人の男。
「せめてもの救いは、階位持ちが1人だけだったことかな?」
合間合間で呼吸を整え、そう呟く。
幸か不幸か、大罪魔たちが言う階位持ち、御子の中でも強い存在。
戦い方を知っているモノ。
または、簡単には死なない存在。
「ホント、よかったね……。」
「おっと、貴方の脅威度をそれほど私たちが甘く見てると?」
目の前に転移してくる。
その存在を見た瞬間、レオは顔を青ざめさせる。
「なんで、貴様が……。」
「ふふっ、教皇様に必死にお願いして12年がかりに貴方に会えるのですから。」
「どの口がっ!! 我々の悲願を潰し僕の憤怒の薪の貴様が良く言えたモノだな!!」
本性が出る。
憤怒が、笑いに潜む、化けの皮が剥がれた滅ぼされた大罪種族、『蜂』
それに刻まれた大罪は憤怒。
一瞬の激情に生涯の全てを捧げる種族。
レオはその種族と獣人種『獅子』の混血
獅子の肉体を持ち一瞬の激情に人生を捧げた哀れな大罪魔。
「貴様が!! 居なければ!! 僕の母は死なずに!!」
「そうですか? 貴方の母が死んだからまた世界の汚物が一つ消えたですよ?」
「殺す!!」
全身から憤怒のドス黒い炎を出しその全てを彼女1人を焼き殺さんとする。
「貴方の能力は私と相性が悪いとわからないのですか?」
炎は彼女に届かない。
目の前で見えない壁に阻まれる。
「私の忍耐は貴方と相性が悪すぎますね。」
「殺す。貴様を!!」
全身の血管から血が噴き出る。
血に塗れた獅子の肢体は華美な肉食獣。
「今すぐ貴様を殺す。『レオ・オ・ツォーン』の何かけて。」
両目から血を流して赤い体躯の獅子を見据えた1人の女は鞭を手に取り相対する。
「では、美しく殺して差し上げましょう。」
2人の戦いは始まった。
レオは獅子と蜂の混血種族です
そして獣王国の貴族でした。




