97 やすい言葉
喰らえ。
うるさい。
喰らえ。
うるさい。
喰らい尽くせ。
うるさいって言ってるだろ。
落ち着いた声音で俺はそう言う。
鬱陶しさは感じない。
煩わしさは感じない。
あの偽物出ないのなら感じる必要はない。
それにこの空腹感は堪えられない物だ。
|当たり前のことを言われて《・・・・・・・・・・・・》なぜ起こるのか。
腹が減ったら食う。
それが、生きているのなら当たり前だろう。
「私のこと見てよぉ〜。」
「うざいしね。」
きっしょ。
今どき流行んねぇよ、それ。
流行遅れなんだよ。
今更、メンヘラとか気色悪いにも程がある。
喰らえ。
ハイハイ。
分かってますって。
「『実ガチャ』」
ボソッと呟く。
内臓が実に変わる。
体内にある物だから食う判定はいらない。
一瞬で消え、内臓は再生され、ついでに肉体も再生され、気力が湧き上がる。
味がしないか嫌だがまぁ、いいか。
所詮変わらない。
一の次が二であるように。
生きる意味を問うように。
生きるために必要な作業に満足感はいらない。
人間性を放棄して、空腹に身を委ねた今のオレには人が抱える、生物の命題としての矛盾はいらない。
確かにオレには人としての欲はある。
けど、そこに矛盾はいらない。
矛盾を認識する機能はいらない。
不都合からは目を背ける。
実に人間らしい。
これが俺の思考か
気に入った。
「と言うわけで死ね。」
お前みたいな人間は嫌いだ。
オレがではなく俺がだが。
真似るならそう言うところも真似て見たい。
最も、矛盾が発生しない程度にだが。
無意識に不屈の騎士の技量を真似していたようだ。
俺は既に吐きそうだよ。
オレには関係無いけど。
自己定義を俺は考えているみたいだが意味はない。
無駄な事に時間を費やす暇はない。
「とりあえず、死ね。」
無限再生なんて俺とキャラ被りも甚だしいんだよ。
右手に骨の外骨格が形成されて武装となり敵を貫く。
急所は外れたみたいだが大ダメージだろう。
「ようやく死ぬか? 早く死ねよ。」
「なんでよぉ〜♪ 最も私を貫いてぇ〜♪」
「うっわキッショ。」
気色悪いので挽肉になるまで潰そうとして、ふと手を止める。
背後に回し蹴り。
敵の匂いがした。
「早く片付けてくださいまし?」
「だってぇ〜♪ 彼素敵だもん〜♪」
「あなたの被虐趣味に興味はありませんわよ。殺しなさいませ。」
過去に見たスプラッタ少女と同類感を漂わせる二十代後半の女性。
あっさりと、オレの裏拳を止めた。
敵の癖に。
「もう片方は倒しましたよ?」
「は?」
俺の意識が、覚醒する。
は? は? は? は? は? は? は? は? は? は?
「えっ、もうっ!?」
「流石に殺し切ってませんが、実験素材になるでしょうし。」
「 」
質問するより先に喉が潰された。
そうか、レオが殺されたか。
「・・・・」
意志を込めてそう言うと即座に回復した体を無理矢理動かす。
喰らえ。
煩い!! 今はこいつらを殺す。
血が瞬時に沸騰した気になる。
お前ら全部殺してやる。




