95 暴走
飛んでくる手足を食らう。
血に塗れたその姿は悪鬼羅刹のよう。
「『霞裂』」
白い霞が発生する。
その霧に御子たちが触れた瞬間そこから切られる。
「ウォーターカッターの小型版だ!! 避けろ!!」
その声が響くより先に、霧が膨れ上がる。
彼を中心にして十メートルの中にいた敵は多かれ少なかれ傷を受けている。
「腹が減ったな。」
ぼつり、と。
そう呟いた瞬間彼の目は充血し目にも止まらぬ速さで1人の御子の心の臓を掴み貫く。
ーーーー
音なく、血飛沫が上がる。
それはまるで、血の花のよう。
「………。」
チラリ、と。
手に持ったソレを一瞥する。
ニヤリと、口が歪みソレを口の中に運び込む。
まだ、生暖かく鼓動しているソレを。
「美味いな、案外。」
口にした。
──みみみみみみみみみみみみみみ、みたたたたたたたたたたたたたたた、せせせせせせせせせせせせせせせせ、mgdngea@tgdjgdpltaudgoeuapliagcaherdgdadvdtjgoauegumadgatmtaud'adsdjpgb#d/tbo@dwjwgwajngmgd@d@w_mpdgm@ng
強制受諾【美徳スキル︙忍耐】を手にしました──
脳内にアナウンスが響く。
それに対し、なんの反応もせず福幸は御子たちの方へと向く。
「ありがとな、美味いご馳走を。残さず全部食べてやる。」
音がない荒野に、その言葉が響く。
口から血を滴らせた悪魔がとっても素晴らしい笑顔でそう告げた。
「喚くな!! 大罪魔の一匹二匹!! 我らが駆除してくれる!!」
勇ましく、そう告げた御子は平凡な剣を抜き去り突撃してくる。
「技術を共有、同調開始。『鬼闘術 狼藉』」
相手を一瞥した後、その技を使う。
ククリナイフを真横に一閃しただけの技。
その技が五つの斬撃となって彼を襲う。
一撃で両足首を
二撃で右手を
三撃で左手を
四撃で首を
五撃で心の臓を。
貫き、刺し、切る。
完成された一撃の模倣がククリナイフを通じて放たれる。
「いただきます。」
礼儀も何もなく、首に齧り付き肉を引きちぎる。
その姿に人間性は見出せずその動きは獣の類だ。
恐怖に顔を歪めながらも襲ってくる百足らずの敵を見定める。
暴食といえど美味いものは美味いと感じる。
食べれるものを食べようとする。
「みっけ。」
次に見定めた敵を2本の刃を持って切り裂く。
敵はまだまだ多数だ。
グヂュグジャブチバグバギバキ。
骨すら噛み砕く。
時たまに口直しと言わんばかりに手頃なものを身に変換してはソレも食べる。
その姿はまさに悪鬼羅刹。
「おー、呑まれてるね。」
そう投げかけられる。
その言葉には嘲笑と憐憫が入り混じっている。
そんなことは構いなく、溢れ出てくる御子を食べる。
食べる。
食べる。
食べ続ける。
彼の通ったところには何処かしら齧られた死体が転がっている。
「うん、美味い」
にこやかにそう言う。
そのまま、手に持った死体を放り投げる。
「次の獲物はお前か。」
「ヒヒィッッ……」
怯える姿を見て笑い、首に喰らいつく。
ガギ、バギゴギ、ゴギ、グヂュ、グジャブチバグバギバキ。
肉を垂らし血を振り回しながら佇む。
残る数はあと少し。




