92 死ぬのは……
「チッ、まだ死なないか。」
声と反し、手に用意されたサブ・マガジンを適当に乱射する。
角内の背後には10口のサブマガジン系列の銃が浮並びさらにその背後には5基のロケットランチャー系列の武器が交互に弾頭を発射している。
また、次々と現れる銃が分解され角内の周囲を部品となって覆い始める。
「おいっ!! 我の能力を以てしても残り5秒しか止めれん!! チッ、一時解除するか?」
「とんでもない。この程度なら、想定済みだ。」
瞬間、浮遊していた無数の部品が一瞬で角内を覆い装甲となる。
ガギンッッッ!!
「タイミングは完璧、みたいだな。」
「……」
白色の斧が武装で覆われた角内の腕と組み合い、目前に存在している。
そう、百メートル以上を一瞬で詰めたのだ。
「近接戦は、苦手なんだがなぁ。いざ、参るか。」
瞬間、互いの体が互いの間合いの外に弾き出されるように動く。
「『ネイル、ガンッ』!!」
腕につけられた機能がそのキーワードによって発動され、右腕の掌の方から無数の釘が放たれる。
まず、避けるのは容易ではないだろう。
しかし、白い教会服に身を包んだ青年は斧を軽く振り全て弾くと、無言で魔法を発動する。
「魔術かっ!!」
角内はそう言うと足に付いているブースターを発動し後ろに飛び退く。
一息のつく間も無く、髪先に光の矢が掠める。
タラリ、冷や汗をかきつつ死角から閃光弾を発射同時に、目をゴーグルで覆う。
パァン。
「目に染みるぜ。」
悪態をつきつつ目の前にいるはずの敵に拳を叩きつける。
「予想済みだ……。」
ボソリ、と。
右横から聞こえる。
驚愕するよりも早く、左に避けようとし斧で殴り飛ばされる。
「カッ、ハッ!!」
「簡単な仕事だったな……。」
ザッザッザッ。
ゆっくり、歩いてくる音が聞こえる。
未だ、角内の呼吸をすることが出来ない。
少なくとも、骨が砕けているのは確定している。
立ち上がることも暫くは無理だろう。
「死ね。次は女神様の下に生まれれば良いな。」
そう言って斧を振り下ろす。
「ちょっと待ったぁー!!」
残念騎士が叫ぶ。
「貴方は……、ウィンスター様ではないですか? なぜここに?」
「い、いえ、こいつらに脅されてしまってね。」
「ふむ、では私の仕事を邪魔する必要はないのでは?」
「いえ、実はあるのよ。ねぇ? 一つ聞いていいかしら?」
「はぁ? なんでしょうか?」
「貴方達、教会は|勇者達を召喚したわよね《・・・・・・・・・・・》?」
「ほう? 彼の能力で予想しましたか。で? それがどうかいたしましたか?」
「予想通り、ね。彼を殺さないでくれるかしら? 証拠としてはこれほどの物はないでしょう?」
「そうですか……、では貴方も殺しますか。」
直後、角内を襲うはずの斧が残念騎士の首を狙い残念騎士はギリギリで防ぐ。
「あら? その程度?」
「ご令嬢が、このような汚い剣の使い方をするとは……。」
「ハッ!! 剣に正道も邪道もある物ですか!! 勝てば官軍負ければ死しかないものよ!!」
「随分、厄介な価値観に染まった物ですね。」
「そうかしら?」
股を狙うように脚を振り上げた瞬間脚を踏み押さえつけられる。
「本当に下品な動きですね……。」
「チッ、本当に厄介ね。」
そう言いながら、足に仕込んでいたナイフを上に発射する。
「おっと。」
そう言いながら、背後に後退する様子を見てニヤリと嗤うと。
「チェックメイト」
と、角内が言った。




