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88 剣の記憶

「さて、問題はあの御子共がどこから出るかなんだよ。」

「あー、こんな広い場所なら出てきても気づかないな。」

「いや、出る場所は三つに絞れてるよ?」

「えっ? なんで?」

「はぁ、転移魔術なんていう大魔術を使おうとしたら特定のビーコンが必要になるに決まってるじゃないか。」

「あー、確かに。」

 

 剣姫から教わった知識を思い出しながらそういう。

 そして、ふと疑問が湧き出る。

 

「ひとつ聞いていいか?」

「なんだい?」

「その座標アンカー無しで転移魔術を発生させて対象を狙った場所に転移させるのってどれぐらい難しい?」

「は? 不可能に決まってるじゃないか。」

「……、そうか。」

 

(ローズさん、やばいな。いや、分かってたけど。)

 

 再度、彼女のヤバさを把握して1人で勝手に震える福幸。

 

「どうしたんだい?」

「いや、やばい知り合いを思い出してな。」

「ふーん。」

 

 そういうと、レオは興味なさそうに顔を背ける。

 話題がなくなり会話が止まる2人。

 黙々と道を歩く。

 歩く、歩く、歩き続ける。

 

「なぁ、一つ聞いていいか?」

「なんだい?」

「この空間はダンジョンなんだろ? モンスターは湧かないのか?」

「あー、その疑問はね……。うーん、解答しずらいなぁ。けど、まぁモンスター自体は結構な頻度で湧いてるよ? ほら、あそことか。」

 

 そう言って指し示した先にはゴブリンの上位種のような存在が十体ほどいた。

 

「ゴブリン……?」

「ゴブリンソードマンかな?」

「そうなのか。初めて会った。あれより強い魔物とは五万とであったけど純粋な上位種は初めてだ。」

「ん? 変異種とでもあったのかな?」

「いや、それよりタチが悪い。今の俺でも単独じゃ勝てない。」

「君の素の実力ってどれぐらいなの?」

「オークとタイマンははれる。」

「うーん、弱いね。」

「知ってるから言わないでくれよ……。はぁ。」

 

 若干、意気消沈しながらククリナイフと不屈の魔剣を手に取る。

 

「さて、俺が右五体をやるから左五体頼む。」

「分かった。じゃ、いっくよー。」

 

 そういうと、彼の体が赤く染まり土煙をあげて高速移動した。

 

「俺も行くか。」

 

 福幸もそういうと不屈の騎士の記憶に接続する。

 彼の収めた無数の武術が頭に流れ込み知識的な経験を得る。

 

「こう、か。」

 

 一閃。

 

 それだけで、福幸の立っている位置から魔力の刃が魔剣を通して発生して前方に飛んでいった。

 

「さすが、不屈の騎士だ。けど、ローズさんには届かないんだろうなぁ。」

 

 泣き言を言いつつもその動きは、借り物の技量のそこを知ろうとするように1人舞っているように見える。

 

「これで五匹目、と。」

「ちょっとー!! セコくない!? その遠距離攻撃!!」

「使えるかの確認だ。許せ。」

「ゆーるーさーなーいー!!」

 

 くだらない問答をしつつ記憶と体の誤差を把握しようとする。

 

(不屈の騎士の記憶ほど火力が出てないな。やっぱり俺の肉体じゃあの人の記憶をそのまま使いこなすのは不可能っぽい。俺が想定していた記憶の動きとラグがありすぎる。)

 

 軽く、魔剣を振る。

 不屈の騎士の記憶を用いて。

 剣が動きに呼応するかのように激情を訴える。

 

 こんな物ではない

 

 福幸にはそう言われているようにしか感じなかった。

 

「これに関しては誤差を詰めるか。あの人の人生の集大成を俺が簡単に扱えるなんて最初から思ってないしな。」

 

 ボソリ、と負け惜しみをいう。

 これだけ強くなっても、これだけ技を覚えても、借り物でしかないことを知らしめさせられた福幸はそう言うしかできなかった。

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