87 不幸
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫、1日もあれば僕の権能で回復する……、ふぅ、薬草持ってない?」
「一応あるけど……。」
「ありがと」
そう言うと薬草を食み地面に寝転がる。
「まったく、微睡程度の覚醒のはずなのにこれだけ強いとは……、さすが暴食、桁が違うね。」
「褒められてるのか、貶してるのか……。」
「貶してるんだよ。で? 精神世界で何か掴めた物はあった?」
「一応、それで……、その……、さっきはすまんかった。」
「ハッハッハッ、さっきていつだよ。君が暴走してから3日は経ってるよ……。あー、しんどい。」
「もしかして……、三日間ずっと戦ってたのか? 俺と?」
「もちろん、この世界を無闇矢鱈に破壊される訳にはいかないからね。殺す気で行ったよ。」
「じゃぁ、何で今の俺は死んでないんだ?」
「殺せるほど、もう体力が無いんだよ。それに、理由がなくなった。」
「そう、か。」
「で? 目的はできたかい? 妄言や妄想じゃなく実体をもった目標は。」
「ああ、出来た。最終目標は女神の打倒。そこは譲らない。」
「そうか。」
「そのための力を俺は持ってると、悪魔と相対して理解した。」
「ふーん。」
「まずはその力を使いこなす。暴食の悪魔の権能を使いこなす。」
「あっそ。」
「素っ気無いな。」
「結局、自分しかわからないものを根拠に出されても……。って思う僕の心情も分かってほしいな?」
「それはすまん。」
「まぁ、けど、言いたい事は分かった。確かに僕が相対した暴食なら勝ち目はある。最低限のランクはクリアしてるね。一応だけど。」
そう言うと、彼は跳ね起きる。
「いい加減、僕もここから出たいしね。どうする? 出る?」
「いや、そんな簡単に出れるの?」
「簡単では無いけど、出れはするよ。まぁ、その前にこの空間について少々話すか。」
そう言うと、憤怒のレオは歩き出した。
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「ここはどんな空間か。その答えは単純明快。女神教が元々あったダンジョンを改変して作成した一層しか無い出入り口のない空間だ。」
「出入り口の、ない?」
「ああ、この空間には完全に出入り口がない。この空間からは女神教が作成した手段か我々大罪魔が持っているズル以外ではここは開かない。」
「そのズルは?」
「一つ目は純粋な転移魔法。だけどこれは世界でも数名しか持ってないレアなスキルだ。故にまずない手段だね。大罪魔でも1人持ってる奴がいるけどそいつは絶対僕らのためには使わないしなぁ……。だから、二つ目。」
「お前が出た方法?」
「そう、二つ目はシンプルだ。純粋に破壊する。」
「訳がわからん。」
「えっと、簡単に言うと、ダンジョンの天井を永遠と掘り続けて脱出する。」
「人間業じゃねぇ……。」
そう言いつつも、サブカルチャーの知識でやりたい事は理解している。
「分かってるようだね? まぁ、けど今回はこれは没だ。」
「何でだ? 一番簡単そうじゃ……、ああ。」
「体力消費が多すぎる。そう言う事だ。君のせいだよ全く……。と言うわけで三つ目。」
「一番気になるな。」
「あいつら御子が空間に穴を開けて渡る瞬間を狙って僕達も外に出る。」
「は? 御子?」
「あれ? 知らない? 君が戦ったあの斧使いだったり弓使いだよ。」
「あー、はいはい。あいつらか。アイツら御子って言うんだ。」
「うん、そう言う事。」
「って、ちょっと待て!! 御子がいるんなら結構やばいじゃないか!! あの強さだぞ!?」
「あー、うん。そういう意味では君は運がなかったんだよねぇ……。彼女らの強さは御子の中でも上から数えた方が早いんだよ。」
「あっ(察し)」
「ま、不幸だね。」
そう言われて、何とも言えない顔をする福幸だった。
この章短くなりそう((((;゜Д゜)))))))




