85 戦闘終了
「オラァッ!!」
(あの霧に当たると何かヤベェ事が起こりそうだ……。ッ!?)
四方八方からくる霧の攻撃、本体の鉤爪での近接戦をいなしながら大きく距離をとる。
初手こそ、先手を取った物だがそこから先は全て後手を取らされてしまう状況。
それに歯噛みしながらククリナイフを投げつけ不屈の魔剣を構える。
(絶対に壊れないんだよな? 信用するぜ?)
「オラァッ!!」
「緩い!!」
福幸の剣は遅く悪魔には届かない。
だが、動きを制限している霧は切れた。
「バカなッ!? 暴食の霧を切り裂いただとッ!?」
「不屈の魔剣なら切れるのか。ん? 切る? 霧を?」
ニュアンスに違和感を持ちつつ、動きを制限していた霧を消せることに気づいた福幸は反撃とばかりに前に出る。
「どうせなら思いついたネタを食いやがれ!! 『ロックアロー』重複展開!! 一斉掃射ァッ!!」
空中に大量に出現した剣や斧の形をした石の矢が一斉に悪魔を襲う。
「ナメるなぁッ!!」
次の瞬間、黒い霧に触れた矢から消失し始めた。
「ワァーオ。想像以上じゃねぇか。」
(ヤバイっ!! ヤバイぞ!! あれに触れたら俺の肉体も同様に消え去るって訳かよ。冗談じゃ無いっ!!)
現状の認識、それを改めて再度剣を構える。
「億したか? 怖いか? ならば我に人生を変われ。貴様はもう不幸に囚われる心配はないぞ?」
「知るか。」
そう言うと地面を蹴る。
一歩。
霧が襲いかかる。
対処さえわかればお手のものとばかりに切り裂き二歩目を踏み出す。
二歩。
相手との距離は約十メートル。
まだまだ遠い。
三歩。
「『ファイアーボール』!!」
火球が生成され悪魔を襲う。
それを視認せずに鉤爪で切り裂きニヤリと向き合って笑ってきた。
四歩。
とうとう悪魔が近づいてきた。
残る距離は八メートル。
五歩。
「風よ、自然と災害の証の風よ、」
詠唱を始める。
現在の福幸が出せる最大火力、一撃必殺を放つ為に。
六歩。
詠唱に気づいた悪魔が斬撃痕のような霧を飛ばしてくる。
それを冷静に回避した後、福幸は詠唱を続ける。
「天地が轟き生命が恐怖する畏怖の証の雷よ。」
願いこう訳ではない。
着実に、冷静に魔力を練り上げ最適解を思考する。
もう既に、魔力の放電現象が発生している。
魔力が雷に変換され始めているのだ。
後、一歩。
一歩あれば確実に仕留めれる。
そう思い、脚を動かす。
七歩。
魔力が、変換が臨界点に達した。
あとはこう告げるだけ。
「私に力を与え給え。【サンダー】ァッ!!」
悪魔にに蛇のようにうねりながら向かう光速の雷は悪魔に当たる直前に……。
「これだけか?」
暴食の霧に阻まれた。
八歩。
「ハァァァッ!!!」
雷の背後から現れた福幸が霧で姿を隠して剣を振り上げる。
(お前の霧の性質なんざある程度把握してんだよ!! あれは牽制にして偽装。本命は……、俺自身の特攻だ!!)
九歩。
地に足が着き、不屈の魔剣が振り下ろされる。
その動きに無駄はなく、悪魔が鉤爪を掲げて防御するより先に悪魔の脳天を捕らえた。
真っ二つに引き裂かれた悪魔の体は地面に横たわる。
「ふぅ、俺の勝ちだ。だろ? 悪魔。」
死体に話しかける。
返事はない。
「おいおい、無視するなよ。実ガチャで生死ぐらいはわかるぞ?」
「……。」
「戦闘は終わりだ。俺の勝ちだ。なあ? 暴食スキル?」




