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82 負けるな

「喰らえ」

 

(うるさいッ!!)

 

「喰らえ、」

 

(五月蝿いっ!!)

 

「喰らい尽くせ、」

 

(黙れよ!!)

 

 辺り一面の荒野の中、福幸那人は頭を抱えそこかしらから聞こえてくる声に心の中でそう答える。

 

 もう、喉は枯れており声は出ない。

 自分が生きた一生を他者にどう思われているかを見せられた福幸は叫び続けた。

 永遠と、永延と。

 

 これが始まった時から目の前に悪魔があらわれた。

 天使の羽を携え、ククリナイフと平凡な剣を振り回す悪魔が。

 そいつは常に、福幸にこう言い続ける。

 

「喰らえ、」

「変わってやる、」

「お前の絶望を全て俺が食ってやる、」

「お前の醜さを俺が受けて入れてやる、」

 

 その言葉は空腹を我慢しているようであり、必死に願い乞うような声でもある。

 そして、心の底から心配している声だ。

 そんな声が永遠と、永延と。

 頭が揺さぶられる。

 また、見させられる。

 また、見なくてはいけない。

 

 諦めたらどれほど楽だろうか?

 

 問いかけは頭を巡り続ける。

 発狂なんぞ遠の昔にした。

 日もない、木もない、大地もない、闇もない、ひたすらに、何も無い荒野と表現した何かの中心で彼は叫び続ける。

 

 黙れ、と。

 俺は間違ってない、と。

 例え側からどう思われようが俺の人生に後悔はない、と。

 苦難と地獄に囚われたような人生だがそこに俺の意志がある限り俺は後悔なんてしない、自分の人生をお前(悪魔)任せにして

 

「合格、だ。」

 

 唐突に、1人の男の声が聞こえた。

 

 顔を上げる。

 

「不屈の、騎士?」

 

 声が、出た。

 

「自ら修羅の道に落ちる必要は無い、私は少なくともそう思っている。だが、貴様がこの魔剣を持ちこの名を『不屈の騎士』を名乗るのなら修羅の道を耐え悪魔の甘言を断ち切らねばな。そういう意味では貴様は私の目に叶った。剣を貸してやろう。ん? どうした? そんな泣きそうな顔をして。」

「っッッッ……、うっ、ひっぐ、ぅぅぅぅ」

「そうかそうか、全くの見知らぬ土地で自らを蔑む声を体験したことにより追い詰められていた最中見知った人物に安心したか。」

「ひっぐ、ひっぐ、ぅぅぅぅっ」

 

 涙を堪える福幸の顔は年相応に幼く、普通の少年の顔だった。

 先程まで、自分を嫌い恨む(・・・・)全てを体験した少年だとは思えないほど普通の顔だった。

 

「貴様もわかってないだろう。詳しく、説明してやる。ついて来い。」

「」

 

 コクリ、と頷く。

 それを見た不屈の騎士、はニコリと笑い剣で|ククリナイフと普通の剣を持つ男《福幸那人》を切り裂いた。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ここなら話もしても構わんだろう?」

 

 誰かに問いかけるようにそういう不屈の騎士。

 場所は、さっきと一風変わって剣の丘の中心に2人はいた。

 

「ここ、は……」

「貴様が俺を抜いた場所であり……、フッ、俺の墓場でもあった場所だ。」

「剣姫に連れてこられた、場所、か?」

「涙も収まったな。」

「まぁ、な。それで、あそこは何だ?」

「まぁ待て、急ぐな。先に不屈の魔剣を貸すための儀式を行おうか。コイツも納得したようだしな。」

「何の話だ? 魔剣を貸すって。」

「簡単な話だ。魔剣には本来、様々な効果がついている。貴様は今までそれの何一つも使えてなかっただけだ。」

「えっ!? 何一つも!?」

「ああ、魔剣は壊れないと言う性質すらも十全に使いこなせてないのだ。効果まで使えていたと自惚れているのか?」

「いや、それより効果って何が付いているんだ?」

「あの方は……、全く……、まあいい。効果ぐらいは教えてやろう。とは言っても大したものじゃないがな。」

「早く教えてくれないか?」

「急ぐな。物事が急転するわけでもあるまい。」

「分かったよ。」

 

 渋々そういうと、福幸は地面に座る。

 

「効果は単純だ。『諦めなければ決して負けない』それだけだ。」

「は? えっ? つまり諦めなければ死なないってことかっ!?」

「バカか? 普通に死ぬぞ。まぁ、死ぬ瞬間までもがき足掻いていれば最終的に勝つがな。」

「えぇ……。使えるの? それ?」

「使えているから俺がいるではないか。少なくとも、貴様は異端審問官とやらとの戦いの最中勝つことに諦めなかった。だから、俺を呼び覚ました。違うか?」

「いや、それなら効果を使えなかったって話と矛盾するんだが?」

「しない。貴様1人で発動させたものでないのに貴様が1人で使えたなどと言うのは烏滸がましくないか? 俺はそう言うのは嫌いな質でな。」

「全く訳わかんねー。」

「ハッ!! 理解しようなんざ100000年は早い!!」

「10万ってなんだよ、10万って。」

「少しのジョークだ。」

「あー、なんか分かってきたぞ、この人のことが。」

 

 そう言って朗らかに笑う。

 少し安堵したかのように。

不屈の魔剣の能力。


諦めなければ例え保持者が死んでも保持者が望んだ勝利へ物事が動き出す(最善になるとは限らない)


作者的な解説。

不屈の騎士が福幸が能力を使ったと認めない理由。

そもそも、効果は不屈の騎士が発生させたものであり福幸が発生させたものではないのと、コマチがいなければ不屈の騎士由来の効果を発動させることも出来なかったから。


ついでに

不屈の騎士の効果がまだ発動しているってことは不屈の騎士はまだ勝利していなかったり……

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