80 死人
食事会はつつがなく終わり、各々部屋に案内される。
「ふぅ、食い過ぎた……。」
腹を摩り天井を見上げる。
意味もなく、そうしているうちに体が徐々に重くなり微睡始める。
「あー、眠い。って、それもそうか。あんだけ食ったしなぁ。」
意味のない自問自答。
ただ気を紛らわしているにすぎないその自問自答が彼の心に余裕がある事を示す。
「はぁ、美味かったなぁ。これが宮廷料理かぁ……。って厳密には城じゃないのか。」
しばらく、ブツブツと独り言を呟く。
ほとんどは取るに足らない感想の類だ。
しばらくするうちに、その微睡も深くなってゆき最終的に、椅子に座ったまま寝ることになった。
「スー、スー。」
寝息が静かに部屋に響き渡り、しばらくして音が止む。
カチャン、
突如現れた拳銃が音を鳴らして変形、もとい分解される。
カチャン、カチャン、
また一つ、同じように分解される。
カチャ、カチャ、カチャカチャカチャカチャカチャカチャ………。
何十個もの拳銃が分解され、無数の部品になる。
そして、一定数過ぎた時にその全ての部品が一箇所に集まり組み立てられ一つの中型の銃になる。
まだ、角内は目覚めない。
どんどん、どんどん形状が精錬される。
流体的な近未来フォルムの成り損ないのような、所々錆びてソレは凶器のような雰囲気を醸し出している。
「魔法陣・簡易展開・精神臨界点」
機械音がなる。
「起動開始、|デウス・エクス・マギナ《・・・・・・・・・・・》」
ギ、ギギギ、ギギギギ。
先ほどの流暢な音声に反してその銃身からなる音は錆びきった機械の音。
ソレを無理やり動かしその銃は1人でに浮く。
ゆっくり、ゆっくり動き、ついに、
角内の胸に届く。
「接続開始」
その銃から10や20ではない。
そんな量では足りないほどのコードが溢れ出て角内の体を覆う。
まだ、角内は起きない。
否、起きられない。
もう既に、死んでいる角内は二度と起きることがない。
これは即ち角内と言う人間が起こした奇跡であり抵抗なのだ。
「記憶領域、共有」
徐々に徐々に、機械が、己を機械仕掛けの神と呼称する機械がまだ暖かい角内の肉体に残る記憶を、技術をそのあり方を吸い上げ寸分違わぬ偽物となる。
「あー、眠たい。」
あくびをして起き上がる。
体を覆うコードは既にない。
自らを機械仕掛けの神と呼称した銃の姿もない。
辺りを見渡した後角内はまた床に着いた。
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「っと、もう俺は寝るぞ、残念騎士。」
「はっ!? えっ!? ちょっ!? あんた!! 死んでるのっ!?」
「さーな? 少なくとも痛みがあって体温があって味覚があって聴覚がある。あと、記憶も欠陥がない。これを死んでいるって定義するにはあまりに生きていないか?」
「いやぁ、そんなこと言われても……。」
「少なくとも俺は生きているって思ってるぞ。」
「んー、少なくとも禁忌的な意味での蘇りなのかしら?」
「分からない。感覚的にはいつのまにか生き返っていたと言うのが正解か?」
「全く分からないわねー。んじゃ、寝るわー。」
「おい、いい加減にしろ。せっかく言ってやったんだ。お前が見張れ。」
「えー。嫌なんですけどー。」
「ぶち殺すぞ。」
「わかりましたぁー。」
涙目でそう言う姿は流石残念騎士だ。
「じゃあ、先に寝る。いざとなったら起こしてくれ。」
「うわぁーん!! イジメダァー!!」
「知らねー、やってられるか!! 俺は先に寝させてもらう!!」
と言うわけで、角内は死人というより死体です。
まぁ、死体を何と定義するかによって変わりますが……。
いやぁ、80話にして衝撃の事実。
解説を挟みます。
角内くんがどうやって死んだのかという部分ですが、毒殺です。
あのメイドさんは、敵です。(驚愕の真実)
お姫様に角内くんのスキルを告げ口しました。
ただでさえ、警戒されている状態で魔導機械なんぞという(ネタバレ厳禁)なスキルを持ってる角内くんを即座に殺しました。
と言うわけで、角内くんは死にました。
まぁ、毒殺された記憶を封印した状態で復活した角内くんを見て本気でビビってたりしていますがねぇ……。
ついでに、言うと毒殺では埒があかないと言う理由で暗殺者を送って迎撃したことで本性を理解した角内くんが逃げ出して色々あって二章冒頭付近になります。
詳しくは本編で!!




