76 過去回想 勇者編1
「すっかり日も暮れたわね。」
「だな。警戒は交代でするぞ。」
「ハイハイ、分かってますって〜。」
そう言いつつ、焚き火の前に座る残念騎士。
「ねぇ、一つ聞いていいかしら?」
「なんだ?」
「アナタって勇者よね? なんでここにいるのかしら? できれば事情説明としてお願いしたいのだけれど……?」
「別に良いぞ? くだらない話だしな。聞きたければ聞け。」
そう言うと、顔を背けながら角内は口を開く。
「始まりは、俺たち勇者って呼ばれる存在が異世界から呼ばれたことだ。」
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「う、うぅ〜ん。」
総勢30名の人間が石で作られた大聖堂の中心で目を覚ます。
そう、彼らは福幸のクラスメイト達だ。
「こ、ここは……?」
目が覚め、冷静な判断をくだせる人間が現れたことにより一気に厳かな雰囲気を保っていた大聖堂は騒々しくなる。
「ええぃ、静まれぃ!!」
一人の老人の声が響く。
その声に、全員が驚き声が消える。
「教皇様の御前であられるぞ!!」
「まぁまぁ、女神エレアレスト様の御教えでは人に差などありません。枢機卿エレファクトも私わたくしをそこまで持ち上げなくともよいのです。」
そう言うと、キャソックに似た服の裾が地面に着かぬよう周りの者達に持たせ転移者たちに近づく。
「さて、貴方達は女神様からの神徒であるわけですが……」
そこで一旦、言葉を切り唇を舌で舐め乾きを抑える。
の動作の一つが魅惑的で男女を問わず息が詰まらせ魅了される。
「我が、世界に救済をもたらす存在でしょうか?」
「ちょっ、ちょっと待ってください!! これは一体どう言うことでしょうか!?」
クラスの中心的存在である森ノ宮龍介が、声を張ってそう質問した。
「あら、こちらに来られたばかりで混乱していらっしゃるのですか……。」
「は、はい。できれば事情説明なんかをしてくれれば有難いんですが……。」
「承知いたしました、もとよりそのつもりですしね。しかし、ここは寒いでしょう? 場所を変えましょうか。」
そう言って歩き出す教皇。
その後ろ姿は、教会の服を纏っただけの淫婦にしか見えない。
実際、女子の何名かは嫌悪感を剥き出しにしている。
「おい、早く行くぞ、角内。」
「あ、ああ。ちょっと待ってくれよ……。」
(さっきまで、俺たちは学校にいたよな? なんでこんなところにいる?)
当たり前の疑問。
それが、誰も感じていない。
今いることに混乱はしても角内みたいに混迷はしていない。
何故何故なぜナゼ?
それで頭を埋め尽くされる。
訳がわからない、わかるはずもない。
あたりを見渡してこの感覚を、不気味さを感じている人間がいないか。探し求め……、1人のクラスメイトがジッとこちらを見ていることに気がついた。
(彼女の名前は……、確か……)
「志保さん?」
「 」
何かを無表情ながら伝えてこようとしているのだけはわかる。
その真意を探ろうとし近寄り……。
「貴様、教皇様の話が聞けないのか?」
「あっ、いや、そんなことは無いです。はい。」
あっ、と言う間に意気消沈する。
視線をそっと志保の方へ向けてみてももうこちらを見ていない。
それどころか先程の不気味な雰囲気も消え去り仲の良い友人と談笑しているでは無いか。
「気のせい……か?」
純粋な疑問を漏らし、慌てて角内は教皇を追いかけるクラスメイトの背を追いかけた。
と言うわけで過去回想です。
水増しじゃ無いんだからね!!




