73 眼を背けるな
「はじメマしテ」
声が聞こえる。
ノイズが走り、不愉快を与えさせる声が。
「ヨウこそ、コノセかイヘ」
何をいってるんだ? その感想が福幸の心に渦巻く。
「ワタしにカンシょうして、ムイシキにぎゃくたんちシタコトはほめよう。」
「黙れよ。」
絶望という海に浸りたい。
そう願う福幸にこの声は、不快感を与えてくる。
純粋な感情で構成されたただの怠惰が消えてくる声によって掻き消される。
「キサマはヒジョうにオロかだ。」
「黙れ!!」
「タシャをたすけ、カミをうらみ、セカイをキラう。キサマはワタシごのみのヒトだ。」
「黙れ!! 黙れ黙れ黙れ黙れ!! お前に何がわかるんだよ!!」
「ワカるさ、ワカルとも。ケンきのシゴキはツラかった。」
「お前に何がわかる!? 俺じゃないお前に!!」
「当然だろ? お前自身なんだから。」
不快な言葉が鮮明に聞き取れる。
聞き取れてしまう。
聞きたくない、けど、聞こえる。
分かりたくない、けど理解してしまう。
「もう消えろ!! 消えろよ!!」
醜さではない。
誠実さ故に、心に刺さる。
「分かるさ、ああ分かるとも。苦労したな? この世界に来て……、いや前の世界でも誰からも愛されず不幸で病的なまでに嫌われて。けどもう大丈夫。」
目の前のヒトはこう告げる。
「ねぇ? ご主人様? ここにはワタシとアナタしかいませんよ?」
性質は反転し、世界は流転する。
「消えろ消えろ消えろ消えろ!! ニセモノが!! 俺を騙すな!!」
「酷い、騙してなんか無いですよ? ワタシはアナタです。同様にアナタはワタシです。ほら分かるでしょ?」
コマチのような話し方をして、そう語りかけるその存在は妖艶に、福幸を撫でる。
何もない荒野の中二人は立つ。
「いい加減にしろ!! 黙れ!! 俺のそばに近寄るな!! 不愉快だ!! 気持ち悪い!! クソがっ!! 黙れ!! この悪魔が!!」
さぁ、曝け出せ。
その醜さを。
さぁ、嘲笑しろ。
その愚かさを。
世界は、再度反転する。
ネタバレ注意。
軽く、2章の現状をまとめます。
まず、主人公は謎の監獄などと呼ばれているダンジョンに捕らえられています。
その中でレオと出会いましたが、福幸のあまりの愚かさに呆れて捨てます。
福幸はソレに気づき色々抑えきれず発狂した後、条件を満たしたことによって暴食スキルが暴走してます。
また、精神世界では福幸は暴食スキルの本質であるとある悪魔と相対しています。
悪魔なので福幸をまどわしていますが詳しい解説は本編更新次第ですね。
次に角内について
彼は転移組の戦力的リーダーとして福幸を欲しています。
角内のスキルも優秀なのですが一人しか居ない点と普通に親友だったので助け出そうとしています。
その他。
コマチはまだ元に戻っていません。
強欲は大聖堂に向かってます。
残念騎士は、福幸を探しています。
リリカ(色欲)は、現在砦町で休んでいます。
ストーリー的にはこんなところです。
次回から後半戦。
お読みいただきありがとうございます。




