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66 強欲

「さて、那人を救うって決めても結構厄介な問題が山積みなんだよなぁ……。」

 

 一人でそう呟きながら、森を歩く角内。

 

「えっと? あいつが閉じ込められた監獄が聖堂の下にある特異型ダンジョンなんだよな?」

 

 ブツブツと独り言を言いながら手元にある地図を見つつ歩く。

 その姿だけ見れば不審者に違いない。

 

「全く、酷いったらありゃぁしねぇなぁ。とりま、情報整理といくか。っと、その前に水飲むか。」

 

 カチャカチャ、ポンッ。ゴクッゴクッ。

 

「ぷはぁ!! うめぇ!! 冷えてる水はやっぱ最高だな。っと。今わかってる情報を整理するか。まず、那人は大聖堂地下の通称聖域と呼ばれているダンジョンに強制転移を決められてるんだよな? で、だ。そのダンジョンから出るには三つ、鍵が必要と。」

 

 

 そこで一旦口を切り、近くから聞こえる足音に耳を集中させる。

 顔は、やらかした!! と言う表情でいつでも戦いに入れる様に手にはAKを持つ。

 

 ザッザッザッ、

 

 ギギャッ!! ギギッ!!

 

 何かを楽しむ様な会話をするゴブリンがそこにはいた。

 

「って、ゴブリンかよ。モード殲滅。展開、掃射。」

 

 言うが早いか彼の背後に無数の銃が展開され目の前のゴブリンを殺し尽くす。

 

「ったく、ビビらせんなよ。はぁ。」

 

 そういうと、銃を消滅させまた独り言に戻る。

 

「正攻法で鍵を手に入れるには教会に10年以上従事し……、いや、考えても意味ないな。コレは。俺がしたい邪法は、ダンジョンの壁が薄いところを最大リソースで爆破すること。これなら異空間であれ確実に穴は開けられる。デメリットは、確実に教会にバレること、か。他に最善手はねぇ……、よなぁ。」

 

 彼たち勇者にはもうそれだけの時間はない。

 転移二ヶ月目にして戦闘に駆り出されているのだ。

 下手をすればあと一月もしない内に全員死にかねない状況でもあるのだ。

 

「タイムリミットは10日。それまでに助け出す……、か。難易度が高すぎやしないかねぇ?」

「クハハハハ、その程度で嘆いておるのか? 貴様は。」

「ん? お前は……」

 

 黄金の鎧を纏い黄金の武器を手にした人物が角内の目の前に現れる。

 が、不思議とその武器や鎧はくたびれている様に感じる。

 角内もそう思ったのか目の前に現れた青年を問いただす。

 

「強欲、何のようだ? 見たところ随分と草臥れた鎧を着ているな。古物趣味にでも目覚めたか?」

「戯けっ!! 我に相応しいのは古今東西を問わず閑麗無垢な宝物のみよ!!」

「じゃあなんで、やけに草臥れた格好をしている。」

「答える義理なんぞないわ!! そんなことより貴様、今10日以内に聖域から暴食の小僧を助けたいと宣っておったな。」

「いつから聞いてんだよ、それに文句あんのか?」

「ハッ!! 貴様ごときに腹を立てる我では無いわ!! そんなことより我の質問に答えよ!! 事実か、と問うておるのだ。」

「事実だよ。それで? 何を言いたい。」

「業腹ながら手助けをしてやろうと言っている。」

「は!? 我儘で自己中のお前がっ!?」

 

 天地がひっくり返ってもあり得ないと言う顔をする角内。

 その顔を見ながら不機嫌そうに強欲と言われた男は言葉を返す。

 

「暴食の小僧を助けるのには我にもメリットがある。それだけの話よ。」

「そ、そうか。お前が味方に着いたら百人力だ。」

「味方ではない!! あくまで協力!! してやると言っているのだ。」

「お、おう。(やけに協力を全面に出すな。)」

「それに、我も憤怒のレオとやらに用事がある。あそこの守りは中々に強靭でな。我一人では突破は限りなく難しい。」

「そうか……。まあ、信用はできないがよろしく頼む。」

「ハッ!! 我が信用するは我が財宝のみよ!! だが、まぁ手を貸すには値するだろう。光栄に思うがいい。」

 

 こうしてチグハグなコンビが結成された。

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