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65 目的

「あっぶねぇなぁ……。ハァハァ。」

「ですね。」

「これだけやって息の一つも切れねぇのかよ。やっぱ、昆虫系の種族は基礎がヤベェな。」

「侮蔑で無いので何も言いませんが余りそのような物言いはよろしくないかと。」

「あっ、すまねぇ。」


 ここは、先程の町から10キロほど離れた森の中。

 ここまで逃げれば奴らも追ってこないだろうという判断で逃げたのが功を成した。

 実際には、追ってこれはしたが傲慢との戦闘でそれどころではなくなったのが正解だが。


「しかし、奴らは街を(つぶ)すのも(いと)いませんか。」

「みたいだな。俺たちを殺すためだけに街を潰す、か。随分高く評価されているみたいで。ククッ」

「私は兎も角、貴方はそれぐらいの価値はありますよ。私がもし貴方の敵ならそのスキルは街ひとつ分を潰してでも消す価値があります。」

「謙遜はよせ。それにそうであったとしても、実際に行動するのはヤベェ奴だよ。」

「それが女神教というものです。」


 そういうと、彼女……いや、リリカは歩き出す。


「何処に向かうんだ?」

「私たちの拠点へ。貴方も来て欲しいのですが……。」

「そうか。それならば、すまないがこっから先は別行動を取らせてもらう。」

「何故?」


 訝しげな表情で彼を見るリリカ。

 そこには、敵意すらもある。


「那人……、いや、あの大罪魔を救わなくちゃならないんでな、俺の目的のためにも。」

「無理に決まっているでしょう。甘ったれた戯言は胸中に留めておいてください。」

「随分と辛辣だな。だが生憎と、ガチのマジだ。」

「死にますよ? 又は殺されたいですか?」

「無駄死にはしたくないな。まあ、俺が死ぬことでアイツが救えんならベターには持っていけるか。」

「そうですか。」


 リリカの表情は今聞いた内容を噛み締めるように、顔を歪ませる。


「それに、アイツはあの化け物に勝てるしな。実際、御子もそれを認めていたしな。おそらく、奴のギフトは俺よりチートな力なんだろう。」

「事実ですかッ!? いえ、可能性としては……、クッ、ですがそれでも行くべきではっ!! 貴方が消えれば我々の悲願はどうなるのですかッ!!」

「俺の中での優先度は今はこっちなんだ。すまんな。それに、悲願の中核を他者に任せんな。」 

「ック、そうですか。それでは、私達はある程度の助力をしましょう。貴方に死なれれば我々も困りますしね。」

「そうか、けどわざわざ助けに来なくてもいいぞ? コレは俺のわがままでもあるしな。」

「わがままに、他者を思いやる気があるのならば。それを助けぬと言うのは私の恥です。それに、貴方の目的はこの世界での貴方達異邦人の立場の確保。那人という人物を救う目的は女神教がもし貴方達を殺そうとした場合の抑止力となってもらうため。違いますか?」

「それじゃぁ、20点しかやれねぇなぁ。それに、そんな高潔な話でも無いぞ? けどまぁ、大筋はその通りだ。」

「ならば、我々も手を貸す大義名分ができます。我々は貴方の予想以上に貴方のことを買っているんですよ?」

「……、そうか。すまんな。」


 そう、そっけなく言うと、少年は彼女に背を向ける。


「そういえば貴方の名前は?」

「自己紹介してなかったけか? まあいい。俺の名前は角内 聡太。しがない軍事オタクだよ。」

「軍事オタクとやらがなにかわかりまけんが……。」 

「あー、なしなし!! やっぱ無しで!!」


 格好をつけた羞恥で慌てて否定する角内だが彼の背後にはニヤリと笑うリリカの姿が。


「では、しがない軍事オタクさん頑張ってください。」

「お前っ!! ネタにする気しか無いだろ!!」


 そう言って、慌てて振り向くもそこに彼女の姿はなかった。


「前々か思ってたけど、その消える能力はなんなの? 転移能力なの?」


 その疑問に答える人物はここには居ない。

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