63 舞台は移りゆく。
体がいまだに痛い。
福幸那人がそう思ったのは暗い微睡から目が覚めた時だった。
「そうか。俺、見放されたのか。」
無意識に呟く口。
目には無色ながらも何かしら輝くものがある。
「見放されたんだな……。」
自分の行いを振り返る。
我儘を言い困らせただけの自分の行いを。
「ハハッ、バカじゃねぇの? 俺。」
笑うしかできない。
絶望に酔いしれ、自らを馬鹿にして笑うことしか。
「バカじゃねぇの!! アッハッハ、本当に!! バカじゃねぇの!!」
ドゴンッ!! ガッ!!
自らを殴りつけ、笑うように自分を蔑んでいる福幸は、彼はもう。
壊れているのだ。
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打って変わりこちらは福幸を飛ばした二人組の話。
「キャハハ、あの少年ばっかじゃ無いの?」
「そんなこともないと思いますよ。実際、後十分有れば負けていたのは私たちかもしれません」
「そうねぇー、けど、それが間違いじゃないっていうのが腹立つわねぇ〜。」
「そのようなことより、彼は最後に覚醒したような動きを行いました。そちらの方が気になります。」
「現身での覚醒……、エクストラスキルでも得たのでしょうか? いえ、しかし……」
「大罪を持ってる大罪魔ごときがエクストラを覚醒ってありえないわよ〜。」
「教皇が嘘をついている可能性は?」
「女神様直々の御話よ〜。下手に疑うのなら……。首を掻っ切られたい?」
「ご遠慮被りますね、それは。しかし、本当に厄介なことになりましたね。」
「そうねぇ〜。っと、それよりあの勇者っていう名前の奴隷はどんな様子?」
「流石のギフトの御力です。特に目を見張るのは無限銃創ですね。あれは私たちの脅威となりかねる。」
「あー、あれね。私もひやっと来たわよ? アレとは下手に敵対すべきじゃないわね。」
「安全圏から不可避の速度で無制限に鉛玉を一方的に撃たれては我々御子でも対処しかねるところがありますね。」
「アレに対応できるのは、美徳なら忍耐か人徳だけじゃない?」
「一応、私のモノでも対応は可能ですが相対した時確実に勝つには実力不足でしょう。」
「まー、私の人徳なら相性差で押し切れるかな? 程度だしねぇ〜。微妙っちゃ微妙よ。」
「ですね。それで、この馬車はどこに向っているのでしょうか?」
「ん? 聞いてないの? この国の学園都市? 的な場所。」
ゴガンッ!!
馬車が不自然に止まる。
「み、御子様っ!!」
「どうした? 御者?」
そう問いかけた直後、無数の弾丸が彼女らに襲いかかる。
二人は一瞬の判断の後、御者と壁を盾にしてそれらを避ける。
「よぉ、お久しぶり。だな?」
「貴様は、勇者か。なぜ我々協力者に仇をなそうとする? 場合によっては貴様を始末せねばならん。」
「おー、怖い怖い。」
「あら〜? さっきの攻撃はきみぃ〜? ヘェ〜」
お互いに剣呑な雰囲気を隠そうともせず相対する。
「最後に問います。貴方は我々と敵対するつもりですか?」
「ああ、当然だ。お前らのやってきた事は目に余る。お前たち御子もその産物の一つだろ?」
「何のことやら? わかりかねますね。」
「演技は下手なようだな? それを言っている時点で答えてるようなもんだ。」
パァンッ!!
少年のAK -74が火を吹く。
「無駄よぉ〜?」
そう言った直後、撃たれたAK -74の弾丸は不自然な軌道で御子二人を避けていく。
「近接特化の勤勉にラック値操作の人徳かよ。しかもレーダー機能付きとは恐れ入った。」
「臆することもないくせによく言ったものだ。」
「くっだらなぁい。私が勝つのは確定なのにねぇ〜?」
「よく言ってくれるなぁ!!」
そういうと彼はAKをさらに増やす。
「無駄ですね。せめて大罪魔並みの強さを発揮してほしいところです。」
「チッ、逃げるか。」
「逃しはしないよぉ〜?」
一瞬にして撤退を決断した彼は即座に二人から逃げ出し、二人は逃げ出した少年を追いかける。
こうして舞台は移りゆく。
そう、王立学園へと。
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小説更新だドン!!




